ゼロトラストとは?必要性やメリット・デメリット、実現するためのポイントを解説

2023.09.19IT
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ゼロトラストは、テレワークやクラウドサービスの普及に伴い、その必要性や注目度が高まっているセキュリティ対策の考え方です。社外で社内ネットワークやクラウドにアクセスする従業員が多い場合は、自社におけるゼロトラストの必要性を検討してみることがおすすめです。

この記事では、ゼロトラストの基本的な考え方やメリット・デメリット、実現するためのポイントなどをご紹介します。組織のセキュリティに課題を感じている場合や、ゼロトラストの導入を検討されている場合はぜひ参考にしてください。

ゼロトラストとは

ゼロトラストとは、“何も信頼しないこと”を意味するセキュリティ対策における考え方のひとつです。従来の「社内ネットワークは安全、社外ネットワークは危険である」という境界型セキュリティの考え方を捨てて、社内外すべての通信を信用せずに検査・認証を行います。言い換えれば「社内外すべての通信を信頼するためにはどうすれば良いのか?」という課題を突き詰め、信頼を積み上げていく考え方ともいえるでしょう。

それでは「なぜ、近年ゼロトラストが必要とされているのか」「具体的にどのような考え方なのか」を見ていきましょう。

  • ゼロトラストの必要性
  • ゼロトラストにおける7つの考え方

ゼロトラストのメリット

ゼロトラストを実現すると、以下のようなメリットがあります。

  • セキュリティレベルを向上できる
  • 安心してクラウドサービスを利用できる
  • 多様な働き方を実現できる

セキュリティレベルを向上できる

ゼロトラストでは、あらゆるアクセスを都度チェックするため、複雑な攻撃や新種の脅威にも対応できるようになります。また、常に監視できる体制が整うことで、いち早く異変を察知しやすくなるメリットもあります。ゼロトラストの実践は組織全体のセキュリティをより強固なものにするため、セキュリティインシデントの未然防止にも期待できるでしょう。

安心してクラウドサービスを利用できる

あらゆるアクセスやトラフィックを毎回検証するゼロトラストであれば、クラウドサービスも安心して利用できます。

クラウドサービスへの通信状況やアクセスログを監視できるようになるため、情報漏えいなどのリスクを最小限に抑えられます。クラウドサービスの利便性を安全かつ最大限に享受できるようなります。

多様な働き方を実現できる

ゼロトラストによるセキュリティ対策の強化は、テレワークをはじめとした多様な働き方を実現しやすくします。

自宅や出先といった社外からのアクセスに対して安全性を確保できるため、場所や端末に左右されずに社内のシステムやデータを利用できるようになります。

ゼロトラストのデメリット

ゼロトラストには、以下のような留意すべきデメリットもあります。

  • 導入コスト、工数がかかる
  • ランニングコストがかかる
  • アクセスの認証処理が手間になる

導入コスト、工数がかかる

ゼロトラストの観点からセキュリティ対策を行う場合は、導入コストや工数がかかります。あらゆるアクセスを認証し、ネットワークの常時監視ができる体制を構築する必要があるためです。

セキュリティ対策を重点的に行うべき部分と、後回しでも問題ない部分などを整理し、効率よく対策を実施することでコストや工数を抑えられます。

ランニングコストがかかる

常にトラフィックやアクセスの監視・対応を行うゼロトラストでは、複数の管理システムやツールを運用する必要があるため、ランニングコストがかかります。

想定以上の出費が発生し、運用継続に支障を出さないためにも、社内の人件費や外部への委託費といったランニングコストがどれくらい発生するのか、事前に試算しておくことがおすすめです。

アクセスの認証処理が手間になる

ゼロトラストでは、あらゆるアクセスに対して都度認証を行います。多要素認証や二段階認証などの手法を用いるケースが多く、認証処理が手間だと感じる従業員も出てくるかもしれません。ゼロトラスト導入による認証処理が、業務効率や生産性にどの程度影響を与えるかも考慮しておく必要があります。

ゼロトラストを実現するためのポイント

ゼロトラストを実現するためには、次の3つのポイントを押さえる必要があります。

  • ゼロトラストの構成要素の把握
  • 運用責任者の設置
  • ゼロトラストに対する担当者の理解

ゼロトラストの構成要素の把握

ゼロトラストを構成する重要な要素は、以下のとおりです。

・ID統制
・デバイス統制、保護
・ネットワークセキュリティ
・データ漏えいの防止
・ログの収集、分析

◆ ID統制
ID統制とは、IDを適正に管理するとともに、管理の負担を軽減することです。一元管理やシングルサインオン(SSO)などの導入を検討しましょう。

◆ デバイス統制、保護
アクセス元となるデバイスについては、不正利用がされないよう一元管理するとともに、紛失やサイバー攻撃時の対応策を講じておく必要があります。これには、MDM・EPP・EDRなどの導入が有効です。

◆ ネットワークセキュリティ
ゼロトラストでは、すべての通信に対して適切なセキュリティ対策を実施する必要があります。アクセス経路に対するセキュリティ対策や、組織が認知していないデバイスやサービス利用に対する対策(シャドーIT対策)なども重要です。これらのようなネットワークセキュリティの向上には、IAPやSWG・CASBが役立ちます。

◆ データ漏えいの防止
ゼロトラストでは、データ漏えいの防止も重視しています。DLPやIRMなどのシステムを活用して機密情報や重要なデータを不正に持ち出させないようにし、万が一持ち出されても閲覧させない対策を講じることが大切です。

◆ ログの収集、分析
ゼロトラストを通じて、より良いセキュリティ対策を実現するためには、あらゆるログを収集・分析し、対策の改善を継続的に行うことが欠かせません。SIEMなどのソリューションを利用し、情報の集約・活用を行いましょう。

運営責任者の設置

ゼロトラストを効果的に運用するために、運用責任者を設置しましょう。

ゼロトラストを実現するためのソリューションは複数あり、各企業の課題やニーズに合わせて最適なものを選ぶ必要があります。そのため、運用責任者を軸に、上層部から現場の担当者まで社内の連携を強化することが欠かせません。

ゼロトラストに対する担当者の理解

ゼロトラストを実現し、実効性のあるセキュリティ対策を講じるには、ゼロトラストに対する担当者の理解がカギとなります。情シス担当などゼロトラストに関わる従業員が、導入・運用に対して煩わしさなどを感じる懸念があるからです。

そのため、導入や運用に関わる担当者に「ゼロトラストがどういったもので、なぜ重要なのか」など、ゼロトラストについて理解を深めてもらう必要があるでしょう。

まとめ

デジタル化が進むにつれ、セキュリティインシデントのリスクは高まる一方です。ひとたび情報漏えいが起これば、企業の信用失墜や損害賠償にも繋がりかねません。そのようなセキュリティインシデントを未然に防ぐためにも、ゼロトラストの考え方を取り入れた強固なセキュリティ対策は重要だといえるでしょう。

しかしゼロトラストを実現するためには、上層部はもちろん、実際に導入・運用に関わる情シスやセキュリティ担当などの知識や理解が必須です。「ゼロトラストの導入を検討しているけれど知見のある従業員が不足している」とお悩みの企業様も多いのではないでしょうか。

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