DX時代のプロジェクトマネジメント研修事例:株式会社Works Human Intelligence

2023.08.31育成事例
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人事DXのリーディングカンパニーが、複雑化・大型化するプロジェクトを成功させるスキルを習得

周藤 俊昭(左)
Human Resources & General Affairs Div. 人事 Dept.
Learning & Organization Development Grp. Grp Mgr
金融、IT、メーカーの人事を経て2020年にWHIへ入社。現在はWHIにおける人材・組織開発の責任者として各種施策の企画設計、展開に携わる。

上村 太郎(右)
Human Resources & General Affairs Div. 人事 Dept.
Learning & Organization Development Grp.
Career & Professional Development Team Leader
新卒入社後、約10年間エンジニア、マネージャーを経て人事部に異動。現在はキャリア開発、専門職教育等に携わる。

――まず、Works Human Intelligence社についてお聞かせください。

上村氏:弊社は「はたらく」を楽しく、というミッションの下に「COMPANY(カンパニー)」という大手法人向け統合人事システムを通じて、人事業務ソリューションを提供しています。

このシステムによって日本企業の人事業務を効率化するだけではなく、その先にある「本来人事がやるべきことにフォーカスできるように」「人材開発などの『攻めの人事』に転じられるように」といったことを目的としてさまざまなご支援をさせていただいております。

「COMPANY」という製品は、当社の前身である株式会社ワークスアプリケーションズの設立当初から多くのお客様に使っていただいておりまして、今では約1,200社の企業様にご利用いただいております。

――ワークスアプリケーションズ様の設立が1996年ということですので、27年もの間にわたり多くの企業様に愛用されている製品なのですね。では、今回取材にご協力いただいている周藤様、上村様の所属されている部署での役割やミッションをお教えください。

周藤氏:私は、Works Human Intelligence(以下WHIと表記)の人事部の中の、人材育成と組織開発を扱っている部署を担当しています。

現在3つのチームを持っていまして、1つは上村がチームリーダーをしている、キャリア開発と専門力開発を扱っているチームです。もう1つはオンボーディング&インナーブランディングというチームで、新卒・中途問わず新しくご入社された方向けに特化した教育・育成と、社内広報や社内イベントを核としたインナーブランディングを通して、社員のエンゲージメントを高める施策を行っています。

その他、階層別リーダーシップ研修やマネジメント力強化施策、自社のエンゲージメントサーベイなどの人材・組織開発に関する企画・設計、デリバリーなどはもう1つのチームが行なっております。

研修実施前の課題

――今回、研修の実施・検討に至った背景をお教えください。

周藤氏:今回アイ・ラーニングへお願いをしたプロジェクトマネジメント研修(以下PM研修と表記)は、「職種別専門教育」の一環として実施をしました。

2022年7月にWHIのMission・Visionを実現するための教育・研修体系をローンチしました。その体系の中に「キャリアデザイン」「リーダーシップ」「ビジネスコア」「組織マネジメント」「職種別専門領域」という5つの柱があります。

1つ目の柱「キャリアデザイン」は、社員一人ひとりに自分のキャリアにオーナーシップを持ってもらいたいという考えに基づいています。個々人が自分のキャリアについて責任を持って考えるために、会社がそういった場や機会を提供するよう努めています。そして、会社のValueを体現する「リーダーシップ」、ビジネスパーソンとして必要な汎用的なビジネススキルを学ぶための「ビジネスコア」、いわゆるマネージャー教育にあたる「組織マネジメント」、5つ目が「職種別専門領域」で、弊社の中にある代表的な職種に対して専門的なトレーニングを提供しましょうというものです。

上村氏:弊社のビジネスモデルは、自社製品を作って売って導入して保守してという形ですので、職種としては「開発」「営業」「コンサルタント」の3つに組織が分かれています。その中でも特にコンサルタントの専門性をいかに伸ばすかという点にフォーカスし、今回のPM研修の実施に至りました。

一般的にコンサルタントと聞くと、対応する業務の幅が広く「何でもやる」といったイメージがあるかと思いますしかし、人事業務支援システムの導入や保守をサポートするという業務の性質上、一般的なコンサルタントと比較すると、自然とプロジェクトの規模は大きくなり、期間も半年から1年程度の長期にわたります。

多様なステークホルダーの方々を取りまとめながら大規模なプロジェクトをスムーズに進めていくためには、やはりプロジェクトマネジメントスキルが必要不可欠です。

これまでもコンサルタントの皆さんは、ご自身の業務経験の中でプロジェクトマネジメントスキルを習得したり、独学で学ばれたりしてスキルを身につけてはいました。ただ近年、会社の規模が急拡大してきたこともあり教育に手が回りきっておらず、スキル習得を個々人に委ねている状態になっていました。

また、これまで以上に企業規模が大きく従業員数の多い企業様、あるいは国や自治体にシステムを導入することも増えている関係で、プロジェクトの難易度も年々上がってきています。それにより、これまでの個人に頼ったやり方で対応するというのが限界を迎えつつありました。
そこで、より会社全体の利益を上げていくためにチームとして組織力を高めて、プロジェクトマネジメントのスキルを共通言語化することが重要だと考えました。また、現場からも共通言語化し標準化されたスキルを使って、全体の利益に繋がるような動きをしていきたいという声をいただいていました。

もともと、我々人事としても、書籍購入支援やeラーニング導入などの自学自習を支援する体制を整えてはいました。とはいえ専門能力が高まれば高まるほど、一般的な学習方法ではまかないきれなくなってきます。

現場のニーズと、人事が実施したいことが合致する部分が見えてきましたので、まずはコンサルのプロジェクトマネジメントをモデルケースとして、現場との対話を通じて専門能力を磨いていく機会を増やしていこうという背景があり、今回の研修実施に至りました。

研修の選定理由

――企業向けの研修というとさまざまな選択肢があったかと思いますが、その中で最終的にアイ・ラーニングを選んだ理由や選定ポイントをお教えください。

上村氏:今回研修サービスを探すにあたって特に重視した点が、プロジェクトマネジメントの体系的な知識があるかどうかと、ベースとなる一般的なプロジェクトマネジメントの考え方にしっかりと準拠して研修を提供してくださるかどうかです。

これは、受講者が身につけたスキルが社内だけでなく、転職したり起業したりする場合においても役立つものを提供していきたいという思いと、一般的なプロジェクトマネジメントの考え方を身につけることでお客様とも同じプロトコルで会話できることを目指すというのが背景としてありました。

また、座学で詰め込むというよりはインプットし、それを即時にワークを通じてアウトプットするといった双方向の研修である点が、弊社の社員にすごく合っているなと思っていました。ただ聞いているだけですと、どうしても眠くなってしまうので(笑)。

もう1点決め手となったのが、お試しで研修を受講することができたことでした。

選定の後半のフェーズで、アイ・ラーニングさんにお願いしようとなったときに担当営業の方から『お試しで見ていただくこともできますよ』とご提案をいただきました。これがすごく良くて。

実際に、コンサルタント部門の教育担当の方、なおかつ実際に研修を受講する社員と同じくらいの技能を持った方がトライアル受講した結果「研修内容がすごく良かったです」という感想が上がってきました。それを聞いて安心することができたので、そこが最後の決め手になったと言えるかもしれないですね。

周藤氏:私のように、プロジェクトマネジメントに対する深い専門知識がない人間が探すという観点でいくと、アイ・ラーニングさんは研修が体系化されているだけでなく、研修の体系図がWebサイトに載っていたので他社と比べて一番分かりやすかったです。プロジェクトマネジメントを専門とする人間ではない一教育担当者からすると、他社さんのWebサイトは全体像やプログラム間の関係性、ゴールイメージなどを明確に思い描けませんでした。

プロジェクトマネジメントと一口に言っても基礎・中級・上級などさまざま段階に分かれていますよね。その中で「私たちが求めているプロジェクトマネジメントはどれにあたるのか」ということを考えるにあたり、体系図で研修を一覧することで「中級程度が良さそうだ」「この研修は必要ないかもしれない」など、関係者で同じ体系図を見ながら議論ができ、判断もしやすくなりました。

あとは、研修の受講方法が多様という点も大きかったです。

コロナ禍からの流れでテレワークをしている社員がいるほか、コンサルタントは複数のプロジェクトに入っているので、オフラインの研修だけだと予定を合わせることが難しい面があります。

こういった背景から、オフラインでの受講だけでなく、オンラインでの動画研修やeラーニングが選択できるというのは大きなメリットでした。他社さんの場合はオンライン研修やeラーニングが用意されていないことがあり、「それだと導入はできないな」と思いましたね。

研修の実施効果

――研修の実施効果はいかがだったでしょうか。

上村氏:最初12名くらいで研修を実施した際に、当時社内で高難易度プロジェクトに入っていたメンバー達に受けてもらったのですが、そこでの反応が非常に良かったんです。「この内容はすぐにプロジェクトに使える」であったり、あるいは「今まで自分がやってきたことが言語化された」などの声があがりました。

弊社のコンサルタントは主にシステム導入とカスタマーサクセスを司る2部門に分かれていまして、当初は導入部門だけで展開を検討していたのですが、今期からはカスタマーサクセスにも導入し、両部門で展開しています。

――研修を主体的に受けるということが大きなポイントだと思っているのですが、そのあたりは実際に受けた方がおすすめして、徐々にメンバーに浸透していったのでしょうか。

上村氏:そうですね。初めは限られた社員を対象に実施していたのですが、受講希望者を募ったところ応募が殺到したと聞いています

「プロジェクト」は至るところにあります。営業でも、エンジニアでも、我々人事の仕事の中にも。ゆくゆくは挙手制で、コンサルタントに限らず研修を受けたい人全員が受けられるようにしたいと考えています。

――主体的に大勢の希望者が挙手するというのは素晴らしいですね。

上村氏:そこは2つ要因があるかなと思っています。

1つ目は、シンプルに「研修の中身が素晴らしい」ということですね。最初に受けた人たちが周りの人に「これすごい良かったよ」とか「自分はこういう気づきがあったよ」とか共有していたようです。社内のコミュニケーションツールでは部署をまたいで個人間で頻繁にやり取りが行われていたりするので、そういうところで「PM研修やってるらしいよ」「自分も機会があったら受けてみたい」というように研修がじわじわと浸透したという点が1つ目です。

もう1つはPM研修に限らず、去年から作っている研修体系の中で「キャリア自律」というメッセージを会社として打ち出している点です。自分の将来のありたい姿、コンサルタントとしてどうなっていきたいか、というのを半期に一度キャリアインタビューという形で上司と部下でやり取りをしています。そういった中で、自分でキャリアについて考えなくてはいけないとか、絵空事ではなくそうなるために実際にどんなスキルが必要なのかとか、そういうことを考える機会が以前よりも増えている面もあり、研修希望者が増えているのかなと思います。

――受講者の方からの意見について、可能な範囲で共有いただけますでしょうか。

上村氏:声としてはさまざまあるのですが、まずは「考え方が理解できた」「今までの自分の業務のやり方を振り返ってみたい」という意見ですね。

あとは「経営的な視点を持つことが出来るようになった」という意見があって。要はプロジェクトコントロールしていくことで、プロジェクトにかかるコストがどのように圧縮されていくのかに目を向けて、自分の日頃のコンサルティングができるようになるのでは、という意見もありました。

――研修を受けた前と後で「視点」が変わるのはすごいですね!

上村氏:我々もその点には驚きました。

ひとつ興味深かったのが、我々のチームの中に研修の効果測定ができる技術を持った人がいまして、その人がPM研修の効果測定をした際に「PM研修のどの研修においても(アンケート結果の)数値が高すぎるので天井効果を発揮していないか心配です」と言われたのが印象的でした(笑)。

今後の展望

――今回実施された研修以外に、ご興味のある研修などがありましたらお聞かせください。

周藤氏:コンサルタント向けの研修としては、今回はプロジェクトマネジメントの基本的な考え方に沿ったものでしたので、今後はより弊社のビジネスに合わせた「実際の業務にフォーカスしたもの」をやっていきたいなと思っています。

もちろんアイ・ラーニングさんに提供いただける部分だけでなく我々も一緒に作らないといけない部分もあると思うので、一緒に内容を考えていって自社に合った研修をやる…といったことができればいいな、と。アイ・ラーニングさんが元々持たれている専門性と我々のビジネスのコンテキストとを合わせることで「今の業務に最も必要なこと」が提供できると思いますので、そういった取り組みができると良いと思っています。

HR Techのリーディングカンパニーとして

――近年WHI様が提供している「COMPANY」のような人事業務システムを利用する会社も増え、HR Techという言葉が定着してきたかと思います。人事でもDXという文脈が広がり、それに伴いプロジェクトに対する要望も複雑化、高度化していると思うのですが、お客様からそういったご相談をいただくことも増えていますでしょうか。

上村氏:人事的なトレンドというのは変遷していて、「DX」や「人的資本経営」など、人事に求められる内容が複雑化しています。答えのない問題や問題自体が難しくなっていく中で「COMPANY」への期待値は上がっていると感じています。四半世紀以上にわたって人事業務システム「COMPANY」を1,200社のお客様へ提供してきた中で得てきた、人事業務に関する知見やノウハウの提供が求められています。HR Techのリーディングカンパニーとしてそういったご要望に応えるべく、社内でシンクタンクのような機関を作り、コラムでの配信や「こういうところが難しい」などテーマに即した分科会などを通じて情報発信をしています。我々人事も社内でのCOMPANY利用を通じて得た知見を共有するなど、そうした動きを後押ししていきます。

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