ローコード開発とは?メリット・デメリットやビジネスへの応用例を解説
2023.09.19ITローコード開発とは、必要最低限のコーディングで、迅速にアプリケーションやシステムを開発できる開発手法のことです。ローコードをうまく活用すれば、従来の開発手法に比べて負担を軽減して効率的に開発を進められます。
当記事ではローコード開発の概要や注目されている背景、メリット・デメリットなどを解説します。ローコード開発の導入を検討されている企業様は、ぜひ当記事をご参考ください。
ローコード開発とは
ローコード開発とは、必要最低限のコーディングで開発ができる手法、またはツールのことです。ローコード開発をするためには、専用のプラットフォーム(ツール)を使用するなど、通常の開発とは異なる特徴があります。
ノーコードとの違い
ノーコード開発とローコード開発の違い | ||
---|---|---|
ノーコード開発 | ローコード開発 | |
コーディング | 不要 | 最小限ではあるが必要 |
拡張性 | 低い | ノーコードより、拡張性や自由度が高い |
ノーコード開発は、コーディング不要で専門知識がなくても開発ができる手法です。一方で、ローコード開発は最小限のコーディングや専門知識が必要です。しかし、その分ノーコード開発よりも拡張性や自由度が高いという違いがあります。
RPAとの違い
RPA(Robotic Process Automation)とは、定型業務や単純な作業などにおける既存のアプリケーションや手順を自動化するツールのことです。一方で、ローコード開発はさまざまなアプリケーションを開発する手法・ツールのことを指します。
RPAが用途を指す用語であるの対して、ローコードは開発の手法や手段を指す用語です。 RPAツールのなかには、複雑な処理を自動化するために本格的なプログラミング機能を備えるものもありますが、ノーコード/ローコードで利用できるものが少なくありません。 RPAはローコード開発が適用される分野のひとつです。
ローコード開発が注目されている背景
ローコード開発は以下のような背景から、近年注目を集めています。
- エンジニアの人材不足
- DX推進の流れ
- 市民開発者(シチズンデベロッパー)とデジタル民主化
エンジニアの人材不足
ローコード開発はプログラミングの知識が不要、または最低限の知識でアプリケーションを開発できます。そのため、ITの専門職ではない人も開発に携われます。
近年は多くの企業でデジタル化が進んでおり、慢性的なエンジニア不足の状態にあります。
経済産業省が、2030年までに40~80万人規模の不足の懸念があるという試算を公表したことがあり(経済産業省「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」など)、リスキリングをはじめ、IT人材育成のための施策が講じられたとしても需給ギャップがただちに解消することは望めません。
ローコード開発は、アプリケーション開発やシステム開発の生産性を大きく向上させることが期待されています。
エンジニアの生産性が上がることや、非IT技術者が開発を自ら行うことで、エンジニア不足問題の緩和に有用な手段といえます。
DX推進の流れ
DX(Digital Transformation)とは、デジタル技術を活用し、ビジネススキームや業務の進め方を根本から変革することです。
DX推進の阻害要因として、既存システムの維持や保守・運用にかかるコストがあげられます。
デジタル投資の大半がそれらの既存システムに割り当てられているために、新しいビジネスや価値創造に十分な投資ができていないのが、多くの企業の課題です。
迅速な開発を得意とするローコード開発であれば、ニーズを汲み取ったアプリを速やかに開発し、現場に投入できます。また、環境やニーズの変化にあっても、柔軟に改良を加えることが可能なため、DX推進を効率的に進められるでしょう。
市民開発者(シチズンデベロッパー)とデジタル民主化
DXを推進するためには、市民開発者とデジタル民主化の広がりが重要であることからも、ローコード開発が注目されています。
市民開発とは業務を熟知した現場担当者が、業務に最適なシステムなどを開発することです。また、デジタル民主化とはIT・非ITに関わらず、業務の担当部署が積極的にデジタル技術の活用をするという考え方を意味します。いずれも業務の実態に合ったDXをスムーズに進め、効果を最大化する上で欠かせない要素です。
従来のIT化やシステム開発では、ビジネスサイドの利用者と開発サイドのエンジニアとの間にコミュニケーションギャップが生じて、本来のニーズとシステムの要件を整合させることに苦労していました。エンジニアやプログラマー以外のビジネスサイドの職種が開発に参加することで、ニーズと要件のミスマッチを防ぎ、「使える」システムやアプリケーションの実現に結びつけることができます。
ローコード開発は、市民開発・デジタル民主化の促進に役立ちます。
ローコードツールの特徴
ローコードツールがどのようなものか把握し、最適なツールを選択するためには、次の3つの特徴を理解しておくことが大切です。
- マッシュアップ
- APIエコノミー
- GUIによる直感的な操作
マッシュアップ
マッシュアップとは、既存のサービスやプログラムを組み合わせて開発する手法を指します。
ローコード開発では、ツールに備わっているパーツやウィジェットの組み合わせだけでなく、外部システムとの連携ができるものがたくさんあります。
すべての機能・サービスを自前で開発しなくても、マッシュアップによって、手軽に高度な機能を実現できます。
メールやSMSサービス、データベース、オンラインストレージ、BIツールなど、さまざまなベンダーが提供する機能・サービスを簡単な手順で組み合わせることができます。
ローコード開発ツール単体で仕様を考えるのではなく、マッシュアップを基本として開発するのが、ローコード開発の特徴を生かした開発スタイルといえるでしょう。
APIエコノミー
マッシュアップの実現において重要な役割を果たすのが、APIエコノミーの存在です。
API(Application Programming Interface)とは、アプリから他のアプリなどの機能を呼び出す仕組みのことです。近年では、Webの仕組みを応用したWeb APIが普及しています。
多数のベンダーが自社サービスの多様なAPIを公開し、ある種の経済圏を形成しています。APIエコノミーとは、こうした経済圏を表す用語です。
APIのなかには無償利用できるものもありますが、呼び出し回数に応じた従量課金や定額制のサブスクモデルで提供されているものが多いようです。
幅広いニーズに対応するアプリを開発するには、こうしたAPIエコノミーの存在を意識することが重要です。
GUIによる直感的な操作
ローコードツールの大きな特徴が、GUI(Graphical User Interface)です。画面構成が画像やアイコンなどがメインでわかりやすく、マウスでクリックやドラッグをして簡単に操作できます。
用意されたパーツを直感的に組み合わせて開発を行えるので、初心者でもスムーズに使いやすいでしょう。
ツール例:Microsoft Power Apps
ローコードツールの代表例として「Microsoft Power Apps」が挙げられます。Microsoft社が提供するローコードツールで、誰でも手軽に業務用アプリを作成可能です。テンプレートが充実しているので、そこに必要な修正を加えてアプリを作ることもできます。
・公式サイト:Microsoft Power Apps
ローコード開発のメリット
ローコード開発には、以下のようなメリットがあります。
- 専門知識、スキルのハードルが低い
- ノーコード開発より自由度、柔軟性が高い
- 開発の生産性向上につながる
- アジャイル的アプローチが有効
ここでは「アジャイル的アプローチが有効」という点について説明します。
アジャイル的アプローチが有効
要件が決まればすぐに実装にとりかかることができるローコード開発であれば、アジャイル開発のアプローチを取り入れ、速やかに改善を繰り返すことができます。
アジャイル開発とは開発工程を小規模のサイクルで繰り返し、優先度の高い要件から開発していく手法です。これにより素早いリリースや、開発過程のおける仕様変更などにも柔軟に対応してくことができます。
ローコード開発であれば、必要最小限の機能を実装して試行錯誤を行い、利用者からのフィードバックを受け、さらに改良していくといったことがやりやすく、アプリの展開をスピード化できます。
これまでのやり方を機械的にデジタル化するだけでは、ビジネスモデルの変革にまでは至らないのが実情です。そこで、ビジネスモデルや業務自体を見直し、変革する意識をもってローコード開発を活用することが求められます。
ローコード開発のデメリット
ローコード開発には、以下のようなデメリットもあります。
- フルスクラッチよりも自由度が低い
- 要件や仕様によっては専門的な知識やスキルが必要
- ツールへの理解が必要
ここでは「ツールへの理解が必要」という点について説明します。
ツールの理解が必要
ローコードツールを最大限に活用するためには、使いこなすための学習が必要になります。特に機能が豊富なツールは習熟に時間が必要となるでしょう。ローコード開発は開発工数を抑えられますが、ツールを使い始める前の準備期間が必要であることを念頭に置いて、導入スケジュールを計画することが大切です。
実現したい要件を整理したら、ローコードツールや自身の知識レベルで実現できるのかどうかを見極めることが求められます。
ローコード開発のビジネス活用
では、ローコード開発はビジネスにおいてどのように活用できるのでしょうか。
ここでは具体的な活用例をご紹介します。
業務効率化アプリの開発
ローコード開発は、組織や部署の業務内容に合わせてアプリの開発を行えます。例えば営業部署であれば顧客管理アプリ、多くの従業員を抱える部署ではプロジェクト管理アプリといった業務効率化アプリなどが考えられるでしょう。現場に必要なシステムを現場チーム内で開発できるため、よりニーズに適したアプリの開発を行えます。
データベース・アプリの開発
会社や組織の中には、「宝の山」ともいわれる多種多様なデータが散在しています。こうしたデータソースを有効活用するアプリもローコードで開発できます。 商品カタログや商談・ビジネス事例、在庫・出庫管理など、データにアクセスするインターフェースとなるアプリを展開することで、蓄積されていたデータから新しい価値を生み出すことが可能になります。
ビジネス価値向上に、データ活用は欠かせません。こうしたシーンでも、ローコード開発が活躍しています。
Webサービス・アプリの開発
社内システムの開発だけではなく、外部向けのWebサービス・アプリもローコード開発で実現できます。予約受付システムの構築やECサイトの開発など、BtoB・BtoC問わず柔軟に開発することができるでしょう。
ユーザーフレンドリーで使いやすいWebアプリを誰もが簡単に開発できる環境が整っています。
まとめ
ローコードには専門知識がほぼ不要、工数を抑えて速やかに開発できるなど、多くのメリットがあります。現場担当者の意見を反映し、デジタル化を効率的に進められるため、DX推進にも役立つ手法です。
しかし、ローコード開発を導入するためにはローコードについて学習し、自社や所属部署との適正について見極めることが必要です。そのためにも、まずは社内で研修を実施し、ローコード開発の概要や進め方などについて学習することをおすすめします。
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