アジャイルコラム:大谷は大きなMVP、アジャイルは小さなMVP
2024.11.27アジャイル , お役立ち情報11月22日、大谷翔平選手が見事満票で3度目のMVPを獲得しましたね。日本人として、とても誇らしく嬉しいニュースでした(👏)。
さて、大谷選手のMVPが「大きな(偉大な)MVP」とすると、アジャイルは・・・「小さな“MVP“」とでも言えるでしょうか。アジャイルを少しかじった方なら、「あぁ、あぁ」とか「なるほどね」とピンときていただけるかもしれません。そうです、これはダジャレのようなものですが、同じMVPでもフルスペルと意味が大きく異なりますね。
アジャイルでは、このMVPを単位にリリースを計画し、スプリントを回し、インクリメントを重ねていきます。このサイクルの中で早期のユーザーフィードバックを得ることで、改善と作り込みを重ねるフレームワークです。MVPをどのように適切に切り出して作り込むかが成功の“カギ”ですね。だからこそ、環境をはじめ様々な変化に俊敏に適応しながら作り込んでいけるのです。
では、もう少しMVP(Minimum Viable Product)について考えてみましょう。
■実行可能なもの:
Viable(バイアブル)、それは誰にとって?そう、ユーザー(お客様)にとってです。提供側(作り手)の視点ではないのです。ペルソナで定義したユーザーにとって、実行可能なストーリーを見極めることがポイントです。ちなみに「Viable」は、医療の世界では「生存や発展が可能であること」という意味で、ある意味「生きている単位」とも言えます。
■最小:
Minimum(ミニマム)は、動く(実行や検証が可能な)単位として最も小さいことを意味します。それは誰にとってか?そう、これもユーザーにとって、何かを可能にするということです。できる限り分解して考えてみて、動かないものはダメ、つまり、仕掛かり中(半完成状態、WIP)はダメということです。先ほどのViableな「実行可能なストーリー」で選定したストーリーを、動く単位として検証できる粒度まで分解(そぎ落とす)します。ここが大きすぎると、効率を阻む原因となります。
■優先順位:
そして、このMVPを扱う上では順番が重要です。つまり、重要なものから対応するということです。どの順番でいくか、ここのコントロールがカギとなります。これを適切に行えば、リスクや欠陥をより早期に特定・発見でき、より早期に対応できます。その結果、より小さなコスト・工数で改善・修正が可能となり、インクリメントを繰り返すことで高品質を実現できます。リスクマネジメントと品質マネジメント(ウォーターフォール系の人がこだわるポイントですね(笑))の両面でメリットがあるのです。
この重要なキーワード「MVP」をきっかけとして、アジャイル(具体的な実践形態としては「スクラム」)の概要を一通り理解する(学ぶ)と、点と点が繋がり、「なぜアジャイルが有効か?」といった本質が腹落ちすることと思います。
そして、これらを身近な事例で考え、有志でディスカッションすると、楽しく&有用に学べると思います。例えば、レストランのメニュー開発やWebの新規サービス開発など、アジャイルに適した題材は想像以上に身近に存在しています。何か気になるもの、思いつくもの、業務での活用のヒントなどはありますか?
アジャイルの重要キーワードである「MVP(Minimum Viable Product)」を、今一度頭の片隅に刻んでいただけましたでしょうか。そして、ぜひ、プロジェクトで大きなほうのMVP(Most Valuable Player)を目指しましょう。
アジャイル研修
https://www.i-learning.jp/service/projectmngmnt/topics/agile.html

阿部 仁美 / 株式会社アイ・ラーニング
アジャイル&プロジェクトマネジメント研修企画開発担当、Registered Scrum Master (RSM)®、Project Management Professional (PMP)®
日本アイ・ビー・エム株式会社にて、SW新製品開発/ITシステム開発のプロジェクト・マネジャー、プロジェクト・レビュー、および日本アイ・ビーエム社全体のプロジェクト・マネジャーの育成・認定等に30年以上従事。情報処理推進機構(IPA)にて人材育成に携わった後、楽天モバイル株式会社にてPMO:新製品開発プロセス策定/強化に取り組む。2022年より現職。DXの構造における①ベンダー企業②官③事業会社の3つの視点の業務を経験。