タレントマネジメントとは?目的や導入のメリット・デメリットを解説
2024.12.04ビジネス
タレントマネジメントとは、従業員を適材適所へ配置して企業の戦略的目標を実現させる取り組みのことをいいます。労働人口の減少や人材定着といった企業が抱える課題を解消し、将来的な組織成長や生産性向上に有効な施策として多くの企業での導入が増えています。
今回の記事では、タレントマネジメントの目的や導入のメリット・デメリットについてご紹介します。
タレントマネジメントとは
タレントマネジメントとは、自社で働く従業員のスキルや能力を一元管理し、一人ひとりのパフォーマンスを最大化できる戦略的な人事配置などを行い、組織の成長や生産性向上を目指す取り組みのことです。ここで言う「タレント」とは能力・才能・技量のことをいい、組織の従業員全員が対象です。
この手法は1990年代にアメリカで定義され、人材育成や人材定着を実現させる手法として注目されています。近年日本においても労働人口の減少や多様化といった理由から、タレントマネジメントに取り組んでいる企業が増えています。
タレントマネジメントが注目される背景
日本でもタレントマネジメントが普及するようになった背景としては、「少子高齢化による人材不足」「働き方改革の導入」「グローバル化等の急激な変化への対応」「IT技術の進化」が挙げられます。それぞれ詳しく解説します。
少子高齢化による人材不足
日本では少子高齢化による労働人口の減少により、多くの業界で人材不足が慢性化している状況です。しかし、働き手が不足していると採用コストや人件費がかかってしまうため、優秀な人材の育成や定着が重視されます。人材流出を防ぐためにも適材適所に従業員を配置し、従業員が最大限に能力を発揮するとともに人材定着を目指すタレントマネジメントが注目されています。
働き方改革の導入
近年、働き方改革によって長時間労働の見直しが推奨されており、多様な働き方を取り入れる企業が増えています。しかし一方で、人手不足による労働環境問題が解消されないのが現状です。限られた労働力で効率的に業務をまわすためにも、タレントマネジメントによって業務効率化や生産性向上を行う必要性が高まっています。
グローバル化や急激な変化への対応
近年、グローバル化が進んでいる中で企業でも目まぐるしい変化が見られています。そのため企業は、国内外問わず世の中の急激な変化によるニーズをとらえ、スピーディーに対応することが求められています。従業員一人ひとりの能力を把握・管理し、柔軟に対応できる人材を適材適所に配置・育成することが必要です。
IT技術の進化
タレントマネジメントの注目が高まっている背景には、AIやクラウド技術の進歩も関係しています。これらのIT技術が、従業員データの分析を容易にし、より迅速で正確な人材配置やパフォーマンス管理を可能にしました。人事の分野においても参入したことでタレントマネジメントに取り組む環境が整い、従業員の能力に応じて戦略的な人事配置や育成を行えるようになったと考えられます。
タレントマネジメントの目的
タレントマネジメントは、企業の戦略的な採用と従業員の定着、人材育成を実現するために人事面でサポートすることを目的とした取り組みです。
戦略的な採用と従業員の定着
タレントマネジメントによって、企業の経営目標の実現に向けた人材の採用や、従業員の能力を把握します。隠れた才能や素質までをしっかりと発掘することで適切な人事配置を行うことができ、従業員の長期的な定着を目指します。
既存の人材育成
近年、日本では少子高齢化の加速によって多くの企業で人手不足が慢性化しています。そのため、新しい人材を採用するだけでなく、既存の人材を適切に育成していくことが必要です。タレントマネジメントを導入することで、企業に必要な人物像と従業員の能力を把握し、経営目標の実現に向けた人材育成・研修等の体制を整える目的があります。
タレントマネジメントを行うメリット

タレントマネジメントを活用すれば組織に良い効果が期待できます。ここでは、タレントマネジメントを行うメリットをご紹介します。
組織の生産性向上
タレントマネジメントを行うことで、従業員を適材適所に配置することができます。これにより従業員が最大限能力を発揮できるようになり、組織全体の生産性向上に繋がることが期待できます。
従業員の満足度やモチベーションの向上
タレントマネジメントによって適切な人事配置が行われると、従業員の満足度が高まるのも大きなメリットです。最大限パフォーマンスを発揮できる環境で働くことで、仕事に対するやりがいを感じられるようになるでしょう。さらに公正な評価を得られるとモチベーション向上に繋がり、長期的な従業員定着も期待できるでしょう。
隠れた能力の発掘
タレントマネジメントを行うことで、従業員のこれまで気付かなかった隠れた能力やポテンシャルに気付くことができます。隠れた能力や才能は従業員の将来的なキャリアパスにも関わる強みとなるため、従業員の持つ能力を最大限発揮できる環境を整えるだけでなく、企業の成長へと繋がることが期待できます。
採用コストの削減
人材不足が課題となっている企業は、従業員一人ひとりがどれだけ最大限の能力を発揮できるかが重要となります。新たな人材を採用するとなると採用コストがかかり、ミスマッチによって退職されてしまうケースも少なくありません。タレントマネジメントによって優秀な人材を発掘し、従業員のパフォーマンスを最大化させる人事配置ができると採用コストを大幅に削減することができます。
顧客満足度の向上
タレントマネジメントを取り組みは、顧客からの満足度にも良い影響を与えます。従業員一人ひとりのタレントの質が上がって仕事に反映されられると顧客との信頼関係を継続でき、結果として顧客満足度の向上に繋がることが期待できます。
タレントマネジメントのデメリット
タレントマネジメントを行うことでさまざまなメリットを得られる一方で、以下のようなデメリットもあります。
浸透しにくい・理解を得られないこともある
組織でタレントマネジメントに取り組む際は、従業員の理解を得ることが必要です。従業員自身が「タレントマネジメントがどのような目的で実施される取り組みか」を理解していなければ、良い効果を得にくいでしょう。突然、人事異動を言い渡されると従業員は不信感を抱いてしまうため、事前に必ず従業員へ周知し、理解を得ておきましょう。
データの収集に時間がかかる
タレントマネジメントを適切に運用するには正確なデータが必要です。場合によっては社内アンケートや面談を行うため、従業員一人ひとりのデータを収集するのに時間がかかるという点もデメリットとなります。また、実施後すぐに成果が見られるわけではないため、長期的な施策となるでしょう。
導入コストが発生する
タレントマネジメントを行うためのシステムを導入する場合、初期費用や運用コストが発生します。タレントマネジメントシステムは、種類や機能によって価格が変わるため、導入する際は自社のニーズや導入目的に合ったシステムを選びましょう。
タレントマネジメントを導入する流れ

次に、タレントマネジメントを導入する流れとポイントについて解説します。
目的を明確にする
タレントマネジメントを導入する際は、まず組織全体の現状を把握しましょう。そのうえで、タレントマネジメントによってどのような課題を解決したいか、どんなタレントを持った従業員が必要かなど導入目的を明確にすることが大事です。
タレントデータの可視化
導入目的が明確になったら、雇用形態問わず従業員全員のタレントデータを収集しましょう。従業員の基本情報やスキル・能力、経歴、勤務状況、キャリアパスなど様々な項目をデータベース化し、可視化します。
タレントマネジメント施策の計画・実施
タレントデータを活用しながら、目的に対してどのように解決していくかを検討します。採用による新たな人材の獲得が必要な場合は、求める人物像を明確にして新卒採用や中途採用で人員を確保します。既存の従業員の育成を行う場合は、従業員との面談やスケジュール管理など育成計画を検討しましょう。
効果測定
タレントマネジメント施策を実施後は、定期的に効果測定しましょう。適正な評価を行って従業員へのフィードバックを行います。結果が不十分な際や従業員の能力にギャップを感じた際は、面談をする、適切な研修や教育を実施する、再度人事異動を検討するなどしてPDCAを回していくことが必要です。
タレントマネジメントを導入している企業
ここでは、タレントマネジメントを導入している企業の取り組み事例をご紹介します。
サントリーホールディングス
サントリーホールディングスでは、従業員の成長と事業・組織の成長を加速させる適材適所の配置を目指して「全社員型タレントマネジメント」に取り組んでいます。人事部門が従業員一人ひとりとの面談を行い、春季・秋季に組織全体の人事異動によって多様な成長機会を提供しています。この取り組みにより、サントリーグループにおける従業員の成長と組織の成長・発展が支えられています。
参考:https://www.suntory.co.jp/company/peopleculture/peopleculture2.html
日産自動車株式会社
タレントマネジメントの成功事例として多く挙げられる企業の一つが、日本の大手多国籍自動車メーカーである日産自動車株式会社です。社内スカウトマンを導入し、従業員の中から優秀な人材の選定、リーダー育成用のプログラムへの参加を促す取り組みを行っています。従業員の能力に合わせて多くの経験を提供することにより、組織の成長へと繋げています。
参考:https://www.niad.ac.jp/n_kenkyukai/data/no13_290310_shiryou01.pdf
ソニー株式会社
ソニー株式会社では社内の人材育成に注力しており、将来の経営をリードする人材を育成する「ソニーユニバーシティ」に取り組んでいます。グローバル向けと国内向けでそれぞれ3つのコースが用意され、現役の役員や責任者からの意見を取り入れてプログラム内容を設計しています。手厚い育成制度を提供し続けることで、個々の成長を組織全体の成長へと導いています。
参考:https://jinzainews.net/26798120/
まとめ
今回は、タレントマネジメントの目的や導入のメリット・デメリットについてご紹介しました。今後、タレントマネジメントを導入する企業が増えていくことが予想されますが、タレントマネジメントにおいては従業員のキャリア形成のためのサポートが重要とされます。
アイ・ラーニングでは、ビジネススキルをはじめ人材育成に関する研修を行っています。タレントマネジメントに取り組むために必要な知識・スキルを身につけることができます。タレントマネジメントによって組織の成長や生産性向上を目指す場合は、ぜひお役立てください。
ビジネススキル研修
https://www.i-learning.jp/service/human.html
アイ・ラーニングコラム編集部