データサイエンティストとは?仕事内容と必要なスキルを解説

2025.02.20IT
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データサイエンティストとは?仕事内容と必要なスキルを解説

私たちの生活に浸透したスマートフォンの急速な普及や情報処理技術の発達から、個人や企業が蓄積して扱えるデータが増え、大規模なデータ活用が可能になりました。膨大なデータのリアルタイム処理も可能になり、データ活用の重要性は高まり続けています。
こうした背景から、新たな価値を生み出す 「データサイエンティスト」が求められています。本記事では、データサイエンティストとはどのような人材なのか、背景や今後の展望もふまえてご紹介します。

データサイエンティストとは

データサイエンティストとは

データサイエンスが活用される業界は幅広く、あらゆる業種や職種の方に重要な素養になっています。アナログからデジタルへ移行したように、ITとは縁がないように思える業種の方もデータを活用する世界になってきています。
昨今、職業の需要が高まるデータサイエンティストとは、そしてデータサイエンスとはそもそも一体何かを解説します。

データサイエンティスト・データサイエンスとは何か

データサイエンティスト・データサイエンスとは何か

まずデータサイエンスとは、アルゴリズムや統計など情報科学理論を活用してデータを分析、有益な知見を見いだすことを指します。そしてデータサイエンティストとは、データサイエンティスト協会によると「データサイエンス力、データエンジニアリング力をベースにデータから価値を創出し、ビジネス課題に答えを出すプロフェッショナル」と定義されています。 一般の方には聞き慣れない言葉が並びますが、実はデータサイエンスは私たちの生活にすでに深く根づいています。

代表的な例は、ネット通販で現れるレコメンド機能です。膨大な消費者データを分析し、『商品Aを買った人は商品Bも購入する傾向がある』といったパターンを導き出す技術です。 他にも自動運転のセンシングやスポーツのリアルタイムでの映像解析など、データサイエンスが持つ力を利用拡大して現在の私たちの生活は成り立っています。

誕生の背景と発展

誕生の背景

データサイエンスという言葉が一般に注目されたのは2010年代以降ですが、その発端は50年以上前です。統計解析を業務に活かす方は一定数存在し、リサーチャーと呼ばれてきました。
特に2000年代以降のデータ活用の手法は大きく発展し、現在では多くの分野で人材不足が懸念されています。誕生の背景を振り返ると、2000年代以降だけでも以下が挙げられます。

  • Windows、SaaS(Software-as-a-Service)が普及して個人のパソコン所有が一般的に。生活にインターネットが浸透し、行き交うデータ量が増加。
  • 2002年 データとデータベースの管理に関する論文を掲載する「データサイエンスジャーナル」が創刊される。
  • 2006年 オートエンコーダを利用したディープラーニングにより人工知能が飛躍的進化。
  • 2008年 Googleなどで「データサイエンティスト」を自称する人々が現れ、そのスキルや仕事内容が議論される。
  • 2010年 インターネット上のデータ転送量が大幅に増加したことから「ビッグデータ」という用語が提唱される。
  • 2012年 画像認識の精度を競う大会でディープラーニングを採用したチームが目覚ましい成果をあげて優勝。GoogleもYouTube画像から猫を認識することに成功したと 発表するなど、現在まで続く第三次人工知能ブームに発展。
  • 2019 年 日本で「AI戦略 2019 ~人・産業・地域・政府全てに AI ~」が発表され、すべての国民が「数理・データサイエンス・AI」を学ぶことが目標として掲げられる。
  • ~ 現在 Big Techと呼ばれるアメリカのIT企業が購買データや消費者のプロフィールを分析することで売り上げを伸ばすようになる。またディープラーニング技術による実用的なAIが登場。

他にも2004年にFacebook、2005年にYouTube、2006年にTwitterがサービス開始、2007年にはiPhoneが発売され、現在の生活に必要不可欠なものの誕生と同時にデータ量が増大しました。
扱うデータ量が急激に増加する中で、新たなビジネス課題が発生してデータ活用の技術が必要とされるようになりました。ニーズの多様化などにより焦点がぼやけることが多くなったビジネス課題に、直結する解決方法が欲しいという市場のニーズにデータ活用がつながりました 。そこから生み出された職業が、データサイエンティストであるといえます。

データサイエンティストの需要

データサイエンティストの需要

AI (Artificial Intelligence:人工知能)が特定の領域において人間を超え始めていて、さらにその先にはAI時代の到来が予想されています。根幹技術であるディープラーニングだけでなく、それを扱うデータサイエンティストに対する注目はさらに高まっています。
2012年以降はデータサイエンス学部を設立する大学が日本でも現れ、修士・博士号が取得できる大学院も増加しており、データサイエンスを学ぶ重要性や人材の価値が認められていることがわかります。これらの背景からデータサイエンティストは今後大きな需要が見込まれているといえるでしょう。

一方で、将来的にデータサイエンティストの仕事がAIに取って代わられる可能性が指摘されることもあります。 確かにスーパーコンピュータや量子コンピュータによる計算処理の速度や精度が高まることで、高度な識別や予測が求められる領域については 、AIに代替されていくと考えられます。しかし、根本的にデータを使って社会をどう変えていくか、どこに価値を見いだすかは人間が話し合い、デザインして実行していくことになります。AIは、その過程において計算処理や予測をサポートする役割を果たします。 データサイエンティストは単なる解析だけでなく、得たデータを用いてどのように課題を解決していくかに価値があります。現場と一体になって、データに基づいた改善提案を行い、成果を生み出せる人材に対する需要は、今後もなくなることはなく拡大し続けていくといえます。

データアナリストとの違い

データアナリストとの違い

データサイエンティストとデータアナリストとの違いについては、共通する仕事もありますが、データアナリストがデータの収集と分析を専門としているのに対して、データサイエンティストは、統計学、コンピュータサイエンスに基づいて、企業が抱える課題の解決までを目指す仕事です。データアナリストと比べて担当する領域が広い点が、両者の大きな違いです。
データサイエンティストはデータ活用の前提として、課題の洗い出しと優先順位付け、課題設定および達成目標の明確化、仮説立案を行います。以前は事業企画部門やコンサルが担う仕事でしたが、ビッグデータ活用による経営戦略が一般的になり、データサイエンティストの担当領域に加わった経緯があります。
このようにデータアナリストは主にデータの「収集」「分析」に特化しているのに対して、データサイエンティストはデータの「課題抽出」「収集と分析」「仮説構築」「アルゴリズムや予測モデルの実装」といった広い守備範囲を担うという違いがあります。

データエンジニアとの違い

データエンジニアは、膨大なデータを分析・活用するために、大規模で複雑なデータを整理して管理し、有効活用できるように情報システムの構築や運用を行う職種です。また実際のデータの収集や整理を担います。
対してデータサイエンティストは、収集・整理したデータや情報基盤を活用して分析を行います。データエンジニアは、データサイエンティストの前工程を担当しているといえばわかりやすいでしょう。なおシステムエンジニアの中にも、データエンジニアと同じようにデータ収集に関する業務や情報基盤の開発にあたる者もいます。

データサイエンティストの仕事内容

データサイエンティストの仕事内容

データサイエンティストの実際の業務は多岐にわたりますが、まとめると一般的に4つのフェーズに分かれていて、流れは以下のようになります。

データサイエンティストの仕事の流れ

データサイエンティストの仕事の流れ

大量の蓄積データを分析、解析結果を「活用」することがデータサイエンティストの主な仕事内容です。ビッグデータ分析というところにフォーカスされがちですが、あくまでも現場判断に従ってビジネスへの貢献を図ることが主眼となります。
データサイエンティストの仕事の流れは、大きくわけて4つあります。

1.分析企画→分析プロジェクトの立ち上げ→組み込み後の業務設計

業務プロセスの変革につながると見込まれる分析テーマを決定し、分析プロジェクトを立ち上げます。この時点で、データの分析結果を業務に組み込むための「業務設計」、データモデルやデータフローなどを設計する「アーキテクチャ設計」、データ活用のための「環境整備」を行います。

2.アプローチ設計とデータ収集→構造化データ処理/非構造化データ処理

データ分析の進め方を検討する「アプローチ設計」を行い、このアプローチ設計に基づいてデータを収集するフェーズです。収集したデータが構造化データである場合、非構造化データである場合によってフローが分岐します。構造化データの場合にはそのまま処理に進みます。画像や映像のような非構造化データの場合には、目的に合わせて処理方法を決定する「方針検討」が必要です。画像・映像等の処理方法が決まった後に、それぞれのデータ処理に進みます。

3.データ解析データ可視化→評価

処理されたデータをもとに、データの性質や関係性の把握、グルーピングなどを行ってデータを解析します。データの関係性をチャートにするなど「データ可視化」も行いますが、データ解析とデータ可視化は相互に行き来しながらタスクを進める必要があります。
データ解析と可視化が終了した後に行うのが、「モデル評価」と「分析評価」です。それぞれの評価が不可であった場合には、前フェーズまで戻ってもう一度作業に取り組むことになります。「モデル評価」の結果が不可となる場合には、2の「アプローチ設計」「データ収集」へ。「分析評価」の結果が不可となる場合には、1の「業務設計」から再度進めます。

4.業務への組み込み→業務評価と改善

分析結果を業務で活用するためにシステムを構築し、運用します。また運用しながら業務の成果を評価して、必要があれば業務の改善を行います。このフェーズでも、評価が思わしくなかった場合には前フェーズへ戻ることになります。業務への組み込み結果が良くなかった場合には、2の「アプローチ設計」「データ収集」まで。データ分析結果を活用することによる業務改善の効果が薄かった場合には、1の「業務設計」まで戻ります。

データサイエンティストに必要なスキル

データサイエンティストに必要なスキル

1.データサイエンススキル

—基礎数学,データの理解・検証,機械学習技法 など

2.データエンジニアリングスキル

—環境構築,プログラミング,IT セキュリティ,データ加工 など

3.ビジネススキル

—論理的思考,課題の定義,活動マネジメント など

これまでのデータサイエンティストの歴史や他の職種との比較でも述べてきたように、統計解析専門職を発展させる形で、機械学習分野のスキルや実際のビジネスの現場で活動をマネジメントしていく力がデータサイエンティストに求められています。

未経験からデータサイエンティストになる方法

未経験からデータサイエンティストになる方法はいくつかあります。いずれも基礎知識やある程度の経験を備えるための方法です。

大学や講座で学ぶ

データサイエンスを掲げる大学で学ぶ、あるいは学び直すことが方法のひとつです。
「データサイエンス学部」の他に、統計学や数学、情報工学を専攻している人がデータサイエンティストになるケースがあります。なお、これらの学部以外の理系学部、文系学部の大学卒業者がデータサイエンティストになる例もあります。
他に一般公開されている講座を受けるのも手です。おおむね大学よりも安価でデータサイエンスを学べるでしょう。

近い業種から転職する

データエンジニアやデータ分析経験のあるシステムエンジニア、マーケティング職などからデータサイエンティストに転向するのも選択肢のひとつです。いずれもデータサイエンティストに活かせるスキルを得られる職種であり、転職しやすくなります。

資格を取得する

データサイエンティストの業務に活かせる資格を取得する方法もあります。資格の例としては統計検定や、データサイエンティスト検定が挙げられます。資格取得を目標にすると、自分に何のスキルが足りないかが明確になり、体系的に技術を学べます。

おわりに

ここまでデータサイエンティストについて、誕生の背景、今後の需要と仕事内容、必要なスキルについてご紹介してきました。扱う業務の範囲の広さとその専門性からますます今後も活躍が期待される分野である一方で、技術の発達でスタンダードが上がるほど、その人材の強みや色が必要になる職業ともいえます。
データサイエンティストは、専門性を磨いてビジネスの現場で活躍することでさらに社会の発展に貢献できる、やりがいのある職業といえます。

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