アジャイルコラム:アジャイル開発はビジネス成功に有効か? 〜シックスハット法で多面的に考える
2025.04.17アジャイル , お役立ち情報日々様々な変化が起こり、またその変化のスピードが増々速くなっている昨今、先を読むのが難しくなっています。デジタル・テクノロジーの進化が企業の競争環境を大きく変え、柔軟かつ俊敏な対応が求められています。
さて、この「変化に適応する」ために有効なアプローチとされているのが『アジャイル』です。
しかし、アジャイルは本当にビジネスの成功に貢献するのでしょうか?
今回は、『シックスハット法』というわかり易い議論のフレームワークで、あらためてアジャイルの有効性を多面的に考察してみます。
シックスハット法とは?
シックスハット法 とは、ブレイン・ストーミングやアイデア出しで使われる思考法で、エドワード・デ・ボノが提唱し、異なる視点から物事を考えるためのフレームワークです。一般的な議論では、ポジティブ・ネガティブな意見が交錯し、まとまりのない議論になりがちですが、シックスハット法では1つの視点に集中することで、より深い議論を可能にします。
この手法では、以下の6つの「帽子」を使い、それぞれの視点に沿って議論を進めます。各帽子には特定の思考スタイルがあり、これを切り替えながら考えることで、バランスの取れた意思決定が可能になります。
シックスハット法で考えるアジャイル開発の有効性
では、シックスハット法を用いて、アジャイルのビジネス成功における有効性を議論してみましょう。シックスハット法は、異なる視点から物事を考えるための手法ですので、6つの「帽子」それぞれを使って考えます。面白いですね☺
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白い帽子は、事実や客観的なデータに基づいて議論を進める視点です。感情や推測を排除し、証拠に基づいた考察を行います。
- アジャイル開発は、短期間の反復的な開発サイクルを特徴とし、迅速なフィードバックと柔軟な対応が可能です。
- 多くの企業がアジャイルを採用し、成功事例が増えています。
赤い帽子は、感情や直感を重視した視点です。データでは測れない、チームメンバーや関係者の感覚や心理状態を考慮します。
- アジャイル開発は、チームメンバーのモチベーションを高め、コミュニケーションを促進します。
- 変化に迅速に対応できるため、ストレスが軽減されるという意見もあります。
黒い帽子は、リスクや欠点を指摘し、慎重な意思決定を促す視点です。最悪のシナリオを想定し、事前に対策を検討します。
- アジャイル開発は、適切に運用しないと混乱を招く可能性があります。
- 頻繁な変更や調整が必要なため、アジャイルのマインドやカルチャーがある程度定着していないと、進み方が不安定になるリスクがあります。
黄色い帽子は、可能性やメリットに焦点を当て、前向きに考える視点です。成功のシナリオを想定し、どのようなメリットがあるのかを整理します。
- アジャイル開発は、迅速な市場投入と顧客満足度の向上に寄与します。
- 柔軟な対応が可能なため、競争力を高めることができます。
緑の帽子は、新しいアイデアや創造的な解決策を探る視点です。革新的なアプローチや、従来とは異なる視点からの考察を促します。
- アジャイル開発は、イノベーションを促進し、新しいアイデアやソリューションを生み出す環境を提供します。
- チームメンバーが積極的に意見を出し合い、創造的な解決策を見つけることができます。
青い帽子は、議論全体を整理し、バランスを取りながら進行を管理する視点です。意思決定のプロセスを整え、議論の方向性を定めます。
- アジャイル開発のプロセスは、定期的なミーティングやレビューを通じて進捗を管理し、改善を繰り返します。
- プロジェクトの透明性が高まり、全体の進行状況が可視化され把握しやすくなります。
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いかがでしょうか?シックスハット法を用いることで、アジャイル開発の有効性を多角的に検討できました。
環境変化が激しい時代において、アジャイルは柔軟な対応力を提供して、ビジネス成功の可能性を高める手法の一つと言えると思います。
あなたの組織では、アジャイルをどのように活用したいですか?
ぜひ、シックスハット法を使って議論してみてください!

阿部 仁美 / 株式会社アイ・ラーニング
研修企画開発プロデューサー(専門分野:アジャイル&プロジェクトマネジメント)
Registered Scrum Master (RSM)®、Project Management Professional (PMP)®
日本アイ・ビー・エム株式会社にて、SW新製品開発/ITシステム開発のプロジェクト・マネジャー、プロジェクト・レビュー、および日本アイ・ビー・エム社全体のプロジェクト・マネジャーの育成・認定等に30年以上従事。情報処理推進機構(IPA)にて人材育成に携わった後、楽天モバイル株式会社にてPMO:新製品開発プロセス策定/強化に取り組む。2022年より現職。DXの構造における①ベンダー企業②官③事業会社の3つの視点の業務を経験。