「カスタマーサクセス」を実現させる人材育成方法とは? ~実践企業の事例から紐解くカスタマーサクセスの最前線

2025.05.20お役立ち情報
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はじめに

カスタマーサクセスは、現代のビジネスにおいて極めて重要な役割を担っています。この記事では、カスタマーサクセスの重要性、求められるスキル、部門の設立や運営ポイント、成功のためのステップなどについて分かりやすくご紹介していきます。

カスタマーサクセスの背景と重要性

サブスクリプションサービスやSaaSといった業態に限らず、今や多くの業界でカスタマーサクセスの重要性が高まっています。顧客の成功を支援し、満足度を高める取り組みは、継続利用の促進や解約防止といった視点だけでなく、企業の成長にも直結します。そのためには、顧客の目的を正しく理解し、利用状況を把握し、組織全体で顧客志向を徹底することが欠かせません。

カスタマーサクセスは、単なる業務や部門名ではなく、企業の理念や文化として捉えることが大切です。たとえば、江戸時代の近江商人の「三方よし」の精神、「売り手よし・買い手よし・世間よし」にも通じる考えた方です。つまり、企業と顧客だけでなく、社会全体にとってよい関係を築いていくことが求められます。

カスタマーサクセスは、顧客との長期的な関係を築くための重要な概念です。企業が提供する製品やサービスが顧客にとって価値あるものと感じ続けてもらうためには、顧客の成功を支援する姿勢がが不可欠です。これにより、顧客の満足度が向上し、結果として企業の成長にもつながります。

カスタマーサクセス部門の設立

近年、カスタマーサクセス部門を設立する企業が増えており、その背景にはサブスクビジネスの増加や顧客解約による経営インパクトの大きさがあります。カスタマーサクセスには、顧客の成功を目的とし、先回りしてサポートしたり、問題を未然に防ぐ「プロアクティブ」なアプローチが求められます。一方、カスタマーサポートは顧客の問題解決を目的とし、「リアクティブ」な対応が中心です。

カスタマーサクセス部門を設立する際には、以下の2つのアプローチがあります。

  1. 横断的なカスタマーサクセスの導入: 全部門がカスタマーサクセスを重視し、顧客に対して一貫した対応を行う。
  2. 独立したカスタマーサクセス部門の設立: 専門の部門を設け、カスタマーサクセスに特化した活動を行う。

最近では、サブスクリプションビジネスの増加に伴い、カスタマーサクセス部門を独立して設立する企業が増えています。これは、顧客解約による経営インパクトが大きくなり、顧客の成功を重視する必要が高まっているためです。

カスタマーサクセスに求められるスキル

カスタマーサクセスを担当する人材には、下図のように「適応力」「共感力」「問題解決力」「創造力」の4つのスキルが求められます。

  1. 適応力: ビジネス環境の変化に対応し、顧客のニーズに合わせて柔軟に対応する能力。カスタマーサクセスは、顧客のビジネスに伴走し、変化に対応することが求められます。適応力は、新しい状況や課題に対して迅速に対応し、効果的な解決策を見つけるために重要です。
  2. 共感力: 顧客の潜在的な課題を深掘りし、対話を通じて引き出す力。共感力は、顧客のニーズや課題を理解し、適切なサポートを提供するために不可欠です。顧客との信頼関係を築くためには、共感力が重要な役割を果たします。
  3. 問題解決力: 現状を定量化し、論理的に問題を解決する能力。問題解決力は、顧客の課題を特定し、効果的な解決策を提案するために必要です。論理的な思考とデータ分析能力が求められます。
  4. 想像力: ビジネスを洞察し、潜在的な課題を解決するための仮説検証を行う力。想像力は、顧客のビジネスを深く理解し、将来的な課題を予測して対応するために重要です。創造的なアプローチと柔軟な思考が求められます。

カスタマーサクセスの実践

カスタマーサクセスの実践には、導入の成功、定着の成功、ROIの創出、効果の実現、利用範囲の拡大の5つのステップがあります。これらのステップを通じて、顧客に対して持続的な価値を提供し、長期的な関係を築くことが目指されます。

  1. 導入の成功: 顧客が新しい製品やサービスをスムーズに導入できるよう支援します。導入プロセスを円滑に進めることで、顧客の初期の満足度を高めます。
  2. 定着化の成功: 導入後、顧客が製品やサービスを効果的に活用できるようサポートします。定着を促進するためには、トレーニングやサポートが重要です。
  3. ROIの創出:
  4. 運用改善の継続: 顧客が期待する効果やROIを実現するために、継続的なサポートを提供します。顧客の成功を確認し、さらなる改善提案を行います。
  5. 利用範囲の拡大: 顧客が製品やサービスを他の部門やビジネスに拡大して活用することを支援します。拡大フェーズでは、顧客の成功事例を共有し、さらなる導入を促進します。

チーム編成とスキルマップ

カスタマーサクセスのチーム編成には、テックタッチ、ロータッチ、ハイタッチの3つのアプローチがあります。これらのアプローチに応じて、必要なスキルセットが異なります。

  1. テックタッチ: テクノロジーを活用して、多くの顧客に対して効率的にサポートを提供します。自動化されたツールやプラットフォームを活用し、顧客のニーズに迅速に対応します。
  2. ロータッチ: プログラム的なアプローチで、1人の担当者が多くの顧客をサポートします。標準化されたプロセスやテンプレートを活用し、効率的なサポートを提供します。
  3. ハイタッチ: 個別の顧客に対して深く関与し、カスタマイズされたサポートを提供します。顧客との密なコミュニケーションを通じて、具体的な課題に対応します。

共通して求められるスキルとしては、意識改革や思考法が挙げられます。カスタマーサクセスマネージャー(CSM)は、データ分析、コミュニケーションスキル、マーケティングスキル、プロジェクトマネジメントなど、多岐にわたるスキルを持つことが求められます。

パターン別人材育成の事例

カスタマーサクセスの実現には、企業ごとに異なるアプローチが必要です。ここでは、いくつかの成功事例をもとに、効果的な人材育成のパターンを紹介します。

事例1 : エンジニアの営業スキル向上

背景 : メディア系企業のエンジニアが、顧客と対面する機会が多く、顧客の要望に応えるだけでなく、潜在的な課題を見つけて提案できるスキルが求められた。

取り組み : エンジニアに対して営業スキルや交渉術のトレーニングを実施。具体的には、ソリューション提案や交渉の方法論を学ぶことで、エンジニアがプロアクティブに顧客と関わることを目指した。

成果 : トレーニングを受けたエンジニアは、顧客との関係性を深め、信頼を得ることができた。また、顧客の潜在課題を見つけて提案することで、顧客満足度が向上した。

事例2 : ユーザー起点の発想

背景 : 精密機器メーカーがDXを推進するにあたり、全社員がユーザー起点の発想を身につける必要があった。

取り組み : デザイン思考のコースを提供し、ペルソナを用いた共感のプロセスを学んだ。これにより、ユーザーのニーズや課題を深く理解し、企画に反映させるスキルを養った。

成果 : 全社員がユーザー起点の発想を持つようになり、若手社員からも斬新なアイデアが出るようになった。これにより、顧客満足度の向上に直結する成果が得られた。

事例3 : マネージメントスキルの向上

背景 : ソフトウェア開発会社が、QCD(品質、コスト、納期)管理からアジャイルな企業風土への変革を目指していた。

取り組み : 新任管理者向けの基礎研修やビジョナリーリーダーシップのトレーニングを実施。これにより、マネージャーがリーダーシップを発揮し、組織の方向性を示すスキルを養った。

成果 : マネージャー同士の連携が強化され、組織全体のパフォーマンスが向上した。また、変化に対応できる姿勢を持つことで、企業全体のDX推進が加速した。


まとめ

カスタマーサクセスは、企業の成長と持続可能なビジネスの実現に欠かせない取り組みです。適応力、共感力、問題解決力、想像力といったスキルを持つ人材を育成し、組織全体でカスタマーサクセスを推進することが重要です。こうした取り組みによって、顧客との信頼関係が深まり、長く良好な関係を築くことができ、結果として企業の成長と持続可能なビジネスを実現することができます。

※本資料は、2024年6月に開催された、「カスタマーサクセスを実現させる人材育成方法とは?」のセミナーを元に再編集したものです。

 

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https://www.i-learning.jp/sales/customer-success.html

アイ・ラーニング コラム編集部

 


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