心理的安全性とは?組織に必要な理由と高める方法をご紹介

2024.05.27ビジネス
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心理的安全

心理的安全性とは、自分の意見や考えを誰に対しても安心して発言できる状態のことです。心理的安全性が高いチームは、社員の生産性向上だけでなく、組織全体の活性化や業績向上など多くのメリットに繋がるため、近年注目を集めています。

本記事では、心理的安全性の必要性やメリットを踏まえた上で、組織やチームの心理的安全性を高める方法をご紹介します。

組織における心理的安全性とは

心理的安全性とは、ハーバード大学で組織行動学を研究するエドモンドソン氏が1999年に提唱した概念で、「罰や屈辱のリスクを負わずに発言できるという信念」と定義されています。対人関係の中でリスクのある行動(質問する、間違いを指摘するなど)をしてもこのチームは安全という共通認識を持ち、メンバー誰しもが安心して自分の意見、考えを発言できる状態のことです。

心理的安全性が注目される背景

心理的安全性が注目された背景には、2012年から4年間にわたりGoogle社が行った「プロジェクト・アリストテレス」という研究によって知られるようになりました。この研究結果から、Google社は「心理的安全性はチームの効果性に影響する最も重要な因子である」と発表し、注目を集めました。

組織における心理的安全性を高めるメリット

チーム

では、組織で心理的安全性を高めるとどのようなメリットが得られるのでしょうか。

アイデアが生まれやすい

「意見やアイデアを言っても受け入れてもらえない」という状況は、メンバーの多様なアイデアを最大限活用できず、組織全体の生産性の低下に繋がります。「どんなアイデアも受け入れてもらえる」、つまり心理的安全性の高い職場であれば、メンバーからさまざまなアイデアが出てくるため、そこからさらに新たなアイデアや創造的な発想が生まれやすくなるのです。

社員一人ひとりの生産性が上がる

組織の心理的安全性が高いと、「自分の能力が尊重されている」と感じられるようになります。この安心感から仕事に対する意欲や責任感が高まり、個々のパフォーマンスが向上します。結果としてチームの生産性が上がり、組織の成長に繋がるでしょう。

チームのコミュニケーションが活性化する

組織やチームが積極的に発言できる環境であれば、安心感を持って活発なコミュニケーションをとることができます。メンバー間で円滑なコミュニケーションができるチームは、業務を進める上で欠かせない情報共有や早期の課題発見、対処などをスムーズに行うことができ、チーム全体の活気に繋がります。

速やかな報連相が行われる

報告、連絡、相談はチームや組織全体の目標を達成するためにも欠かせないことです。心理的安全性が高い職場では、どのような場面でも不安を感じることなく発言できるため、速やかな報連相が実現されます。報連相がしっかりと行われていれば業務やプロジェクトが効率的に進むだけでなく、トラブルが発生しても早期に対処することができます。

社員の定着率が上がる

Google社によると、心理的安全性の高いチームは離職率が低いという結果が報告されています。積極的に発言をしてもリスクがないという安心感は、離職の理由に多い「人間関係」という悩みが生まれにくいです。誰しもが自由に発言できる立場にあるため、自分の能力を発揮しやすく、悩んだときに気軽に相談できる環境作りが定着率の向上に繋がると考えられるでしょう。

心理的安全性が低くなる原因

エドモンドソン氏によると、心理的安全性の低下には4つの要因があるとされています。ここでは、4つの心理的安全性を損なう要因と特徴行動について解説します。

1.無知だと思われる不安

業務上で分からない問題が発生したとき、チームのメンバーに聞きたくても「こんなことも分からないのか、と思われるのではないか」と不安になってしまいます。そのため、質問したいことや確認したいことがあっても聞けなくなってしまうのです。

2.無能だと思われる不安

業務でミスや失敗した際、チームのメンバーにミスを責められないか不安になってしまいます。そのため、何か問題があっても報告せずに隠したり、他のメンバーに責任転嫁するようになったりしまうのです。

3.邪魔をしていると思われる不安

会議やミーティング、もしくは業務中に発言したり質問したりすることで相手の邪魔になる可能性を考え、不安になってしまいます。自分の発言によって議論が長引いてしまったり、他の人の作業が中断してしまったりするのを恐れ、だんだん自発的に発言をしなくなっていきます。

4.ネガティブだと思われる不安

業務やプロジェクトにおいて、改善提案や反対意見をしたくても相手への批判や否定と受け取られてしまうことに不安になってしまいます。そのため、現状をより良くしたいがための発言であっても、否定的な意味が含まれていると何も言えなくなってしまうのです。

心理的安全性が低い職場で起こる問題

心理的安全性が低い職場では、チームや組織にさまざまなリスクをもたらします。

社員のモチベーションの低下

心理的安全性の低い職場だと、社員は自発的に仕事に取り組むのではなく「与えられた仕事をただこなすだけ」になりがちです。意見やアイデアを出しても聞いてもらえないと感じれば仕事に対する価値を見出せず、モチベーションが低下してチームや組織全体の生産性の低下へと繋がるでしょう。

仕事のパフォーマンスが下がる

「チーム内で自由に発言できない」「周囲の邪魔になるかもしれない」といった不安は、社員の自発的な行動を制限させてしまい、個々の持つ本来の能力を活かしきれません。しっかりと意見交換や情報共有がなされなければ仕事のパフォーマンスが下がり、大きなミスやトラブルに繋がりかねません。

トラブルの対応が遅れる

心理的安全性が低い職場では、メンバー同士の活発なコミュニケーションが行われず、ミスや失敗をしたときに報告しにくい状態です。質問や確認事項があっても気軽に聞くことができず、その結果として問題発見からトラブル対応までに遅れが生じてしまいます。

社員のメンタルの不調が起こる

心理的安全性が低い職場では、相手にどう思われるか分からないという不安からストレスや孤独感を感じやすく、仕事に対するモチベーションも低下します。誰にも相談できないまま心身の不調を起こし、離職に繋がる可能性もあるでしょう。

組織やチームの心理的安全性を高める方法

笑顔で談笑する男女

ここからは、組織やチームの心理的安全性を高める方法をご紹介します。

心理的安全性を体験できる仕組みをつくる

心理的安全性を高めるには、安心して発言できるという環境や仕組み作りが必要です。業務中だけでなく業務外でも、相槌を打つ、目を見て聞く、質問をする、理解していることを表情や態度で示す、仕事への取り組みに感謝の気持ちを伝えるなど心理的安全性を体験することで、組織やチームの中での発言に不安がなくなるでしょう。

多様な価値観を受け入れる

社員一人ひとりの価値観を受け入れることも、心理的安全性を高める方法の一つです。多様な価値観が認められればさまざまな個性を持つメンバーが集まり、議論が深まりやすくなります。メンバーの考えに耳を傾ける、積極的に意見やフィードバックを求めることで安心して個々の個性を存分に発揮することができ、創造力を高められるでしょう。

発言することに共通した価値観を持つ

個々が自発的に発言できるようにするためには、チーム全体で共通の価値観を持ち、年齢や役職に関係なく意見を出し合える環境を作ることが大事です。議論の場は「業績アップのため」「顧客満足度の高い商品やサービスを作るため」といった価値観をしっかりと全体に共有しましょう。

対話の機会を設ける

心理的安全性を高めて誰もが発言しやすい環境を作るには、日頃から社員同士の対話の機会を設けることが大切です。1on1や雑談会などで対話できる時間を増やすことで、部下から上司へ意見を言ったり相談しやすくなったりします。業務時間外での対話の回数も増えると、よりお互いの信頼関係の構築に役立つでしょう。

評価制度を見直す

「評価を下げたくない」「みんなの足を引っ張りたくない」という思いから、積極的な発言を控えたり、新しい挑戦の機会を逃したりすることもあります。評価制度を見直し、適正な内容にすることで社員の心理的安全性を高めて満足度向上に繋がります。

称賛し合う制度をつくる

社員の仕事の成果や貢献に対して、日頃から「ありがとう」と感謝を伝え合うことが大切です。何か発言したり改善提案を発見したりする社員に、まず称賛することでさらに自発的な発言に繋がります。これを繰り返すことで、チーム全体が活性化し、心理的安全性の高い雰囲気作りができるでしょう。

上司が部下の心理的安全性を高めるためにできること

組織やチームの中で、上司が部下の心理的安全性を高めるためには以下のマネジメント法が挙げられます。

  • 1on1
  • ピアボーナス
  • OKR
  • 上司へのフィードバック
  • 雑談

「1on1」や「上司へのフィードバック」など対話の機会を増やすことで、上下関係にとらわれず話しやすい雰囲気を作ることができます。また、組織やチームの目標を設定し管理する「OKR」、社員同士がお互いに仕事の成果を称賛し讃え合う「ピアボーナス」といった取り組みを導入している企業も多いです。中には「雑談会」を設定する企業もあり、気軽に話せる関係を築くのに重要とされています。

組織の心理的安全性を高めるときの注意

心理的安全性は、単に社員同士の仲が良い組織を作るということではありません。新入社員や不安を抱えるメンバーに対して誰も怒らない、優しく接するといった「ぬるま湯」のような組織とは違うことを認識しましょう。
心理的安全性を高めるということは、組織やチームのメンバーが主体的な意識を持って仕事に取り組み、同じ目標に向かってお互いを尊重し高め合える雰囲気作りが重要です。そのためにも上の立場の社員は、メンバーへの指導や助言をする役割を担います。

まとめ

組織やチームの中で上の立場に立つ社員は、「部下と何を話せばいいか分からない」と悩むことも多いかもしれません。しかし、心理的安全性が高い職場は企業と社員の両方に大きなメリットをもたらすため、心理的に安全な環境作りに取り組む必要性は高いといえます。まずはコミュニケーションの仕方を変えたり、1on1や雑談会を取り入れたりするなど簡単にできることから変えるだけでも信頼関係の構築に繋がり、心理的安全性が高い職場へ変化していくでしょう。

アイ・ラーニングでは、組織の心理的安全性を高めたいと考えている方に向けて、信頼関係づくりに役立つコミュニケーション方法や対人関係能力など、さまざまな研修を用意しています。社員全体の心理的安全性を高めたいという場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

アイ・ラーニングコラム編集部

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