営業スタイルに変革を起こす 提案型営業研修事例:共同印刷株式会社
2023.01.01育成事例実案件に応じた個別具体的なアプローチを学べる セールス道場に挑む
共同印刷株式会社のビジネスメディア事業部は、営業職育成カリキュラムに、アイ・ラーニングの「セールス道場」を採用している。
実際の顧客をターゲットに提案型営業のノウハウを実践で学ぶこの研修は、同社の営業スタイルに変革を起こしつつある。
実案件を対象にしたセールスシナリオを策定する
共同印刷は1897(明治30)年の創業以来、総合印刷会社として、印刷技術を核に多彩な製品・サービスを開発してきた。印刷業を取り巻く環境が大きな転換期を迎えるなか、新たに打ち出したコーポレートブランドは「TOMOWEL(トモウェル)」。企画開発・営業・製造の各部門が有機的に連携したワンストップ体制、そして上流から下流まで全方位でサポートするBPOサービスなどを武器に、グループが一丸となって「共に創る力」を最大化し、未来に続く新たな事業領域を生み出そうとしている。
同社のなかで、クレジットカードの製造や証券の印刷、各種の機密印刷業務など、金融機関や官公庁に向けたセキュリティ性の高い印刷サービスを提供しているのが、ビジネスメディア事業部である。長い歴史のなかで多くの顧客と築き上げてきた信頼関係をベースに従来型の営業活動を展開する一方、今までにない新しい製品やサービスを創出し、提案型の新しい営業スタイルでアプローチする動きもある。
たとえば湯口英樹部長が率いる同事業部の事業開発部では、健康データを活かした保健指導サービスや従業員のストレスチェックに基づくリスクマネジメントなど、従来の印刷業務から大きく飛躍した新サービスを提供している。
「金融機関や官公庁のお客様に向けた従来型サービスの場合も、あるいは事業開発部が展開する新規サービスの場合も、今までのように、ただお客様の要望やリクエストに応えるだけでなく、お客様のニーズを先取りして積極的に提案し、価値を認めていただく『ソリューション提案型』の営業が求められています。そうした営業スキルをどう伸ばすかは大きな課題です」(湯口氏)
新しい営業を育てる研修カリキュラムを探すなかで同事業部が出会ったのは、アイ・ラーニングの「セールス道場」である。これは日本IBMから研修事業を業務移管されたアイ・ラーニングが、長年にわたりIBMに蓄積されてきた営業ノウハウを元に開発した、ソリューション提案型営業養成のための実践的トレーニングである。
最大の特徴は、受講者が実際に担当している顧客をターゲットに、企業戦略や事業計画に基づくセリングシナリオを策定すること。それに沿って実際に行動し、そのアクションについてマンツーマンの個別セッションによるレビュー&コーチングを受けながら、目標達成に向けたスキルやマインドを醸成する。
「今までも営業研修や管理者研修などはありましたが、セールス道場は座学だけではなく、それぞれの実案件に応じた個別具体的なアプローチを学べる点がとても魅力でした」(湯口氏)
2名1組のチーム編成でPDCAを確実に回していく
座学での授業も含まれるが、中心となるのは全6回の個別セッションである。実際に担当する顧客の経営情報を分析し、どのような内容で、誰に向けて、何を提案するかといったセリングシナリオを策定。その都度、講師から進捗に関するコーチングを受けながら、案件成立・獲得に向けて具体的に営業活動を展開していく。
セールス道場の研修期間は半年間。ビジネスメディア事業部が属する情報セキュリティ事業本部の5名の営業担当者が参加した。ただし初回は期待したほどの研修効果を得られなかったそうだ。
「各自が担当するお客様の実案件を対象に進めたのですが、前例のない研修だったためか、目標を咀嚼しきれず、どう動けばよいかも不明瞭なまま講習を終える結果となりました。そこでの2回目の研修では、受講者を2名ずつのチームに編成しました」(湯口氏)
受講者は新任の営業課長とその部下である営業担当者という2名1組で編成し、合計4名・2チームが参加した。前年の反省を活かし、1チーム2名で取り組むことで、受講者の「孤独」を解消し、提案内容やセリングシナリオについて互いに会話し、講師のアドバイスを受けて具体的なアプローチを考えていく。1人で悩まず、会話により思考が広がったのか、シナリオをベースに確実にPDCAを回せるようになり、想定以上の成果が得られたという。
「卒業認定基準に照らし、研修の最後には各々に評価点が出されます。ここでは商談成功・案件獲得が目標ではなく、あくまでそのプロセスを評価します。お客様の事業計画に即した提案内容か、適切なキーパーソンに訴求できたか、シナリオどおりに行動できたか、などのプロセスを可視化し、それに対して評価点を与えます。案件獲得が目標ではないものの、2回目の研修では2チームがともに案件獲得に成功し、文句なしの合格点でした」(湯口氏) こうした成果が経営側に評価され、合格点を得た際のボーナス支給が決まった。戦略と実践・行動で学ぶ新しい営業スタイルは、「TOMOWEL」を掲げる同社の企業戦略を確実に変えることになりそうだ。
湯口 英樹(ゆぐち ひでき)氏
共同印刷株式会社 ビジネスメディア事業部 事業開発部 部長