シンギュラリティとは?いつ起こるか?2045年問題、社会に与える影響を解説
2025.05.21IT
人々の生活は、日々進化するテクノロジーによって大きく変化しています。スマートフォンの普及、AI技術の発展、自動運転技術の実用化など、技術革新のスピードは加速し続けており、技術の進化の先にあるとされる「シンギュラリティ」という概念が近年注目を集めています。
今回の記事では、シンギュラリティとは何か、いつ起こるのか、また社会にどのような影響を与えるのかについて詳しく解説します。
シンギュラリティ(技術的特異点)とは
シンギュラリティ(技術的特異点)とは、AI(人工知能)が人間の知能を超える時点を指す概念です。AIが自己フィードバックによる改良を繰り返し、指数関数的に進化することで人間の予測や理解を超えた技術的変革をもたらす状態になると考えられています。元々「シンギュラリティ」という言葉は、数学や物理学の分野で「通常の法則が適用できなくなる特異点」を意味しています。テクノロジーの分野においては、米国の発明家であるレイ・カーツワイルは「AIと人間の知能が融合する時点」と定義しており、AIやIoT、自動化技術の実用化が開始されたことで、シンギュラリティの概念が注目を集めるようになりました。
シンギュラリティが起こると考えられている理由
シンギュラリティが現実世界で起こる可能性が高いと考えられる背景には、いくつかの根拠となる法則があります。
ムーアの法則
ムーアの法則とは、世界最大手の半導体メーカーであるインテル社の共同創業者ゴードン・ムーアが1965年に提唱した法則です。半導体集積回路上のトランジスタ数は18~24カ月ごとに倍増するという経験則で、コンピュータの処理能力が指数関数的に向上することを示しています。半世紀以上にわたってムーアの法則は半導体業界に大きな影響力を与え、今後も新たな技術革新によりコンピュータの性能は向上し続けると予測されています。
収穫加速の法則
収穫加速の法則とは、米国の発明家であるレイ・カーツワイルが提唱した法則です。これはムーアの法則をさらに拡張したもので、技術の進歩は指数関数的であるという考えに基づいています。つまり、新しい技術の登場により次の技術が生み出され、技術革新のサイクルを加速させるという考え方です。
なお、シンギュラリティはあくまで予測であり、確定した未来ではありません。不確実性を含む概念的な予測であることを理解しておく必要があります。
シンギュラリティはいつ起こるのか

ムーアの法則と収穫加速の法則に基づいて計算を行うと、シンギュラリティは2045年頃に起こると予測されています。また、2029年頃にはシンギュラリティの前段階である「プレシンギュラリティ」が到来するとされています。
プレシンギュラリティとは
プレシンギュラリティとは、シンギュラリティ到来の前兆となる時期のことを指し、AIが人間と同等レベルの知能を獲得する段階です。レイ・カーツワイルは、2029年までにAIがチューリングテストに合格し、人間並みの知能を持つと予想していました。チューリングテストは、イギリスの数学者アラン・チューリングが1950年に提唱した、機械が人間のような知能を持っていると振る舞えるかどうかを判定するためのテストです。
プレシンギュラリティ期には、AIや他のテクノロジーによる科学研究の加速や医療技術の革新など、社会に大きな変化が現れ始めると予測されています。
2045年問題とは
2045年問題とは、2045年頃のシンギュラリティの到来に伴って、生じる可能性のある影響や問題のことです。レイ・カーツワイルは、AIが進化を続けることで、2045年には10万円で購入できるコンピュータの能力が、人間の知能の100億倍になると主張しています。AIが人間の知能を超えて急速に進化することで、人類の未来に予測不能な変化がもたらされる可能性が示唆されています。
シンギュラリティにおける著名な論者の意見
シンギュラリティが本当に起こるのか、起きるとすればいつ起きるのかについては、多くの専門家が議論を重ねてきました。ここでは特に影響力のある二人の論者の意見を紹介します。
レイ・カーツワイル
先述したレイ・カーツワイルは、米国の発明家、未来学者として知られており、シンギュラリティの概念を広めた最も著名な提唱者の一人です。これまで「The Singularity is Near:ポスト・ヒューマン誕生」をはじめとする数々の著書を出版し、シンギュラリティの概念や理論を展開してきました。レイ・カーツワイルの主な主張は、以下のようにまとめられます。
- 2029年:AIがチューリングテストに合格し、人間と同様の知能を持つAIが誕生する
- 2045年:シンギュラリティが到来する
- AIと人間の知能の融合により、社会は指数関数的に向上する
- 医療技術やナノテクノロジーの発展により生命の限界を超え、老化や病気を克服できる
ヴァーナー・ヴィンジ
ヴァーナー・ヴィンジは、米国の数学者、SF作家として知られており、シンギュラリティについて「The Coming Technological Singularity」で最初に提唱した人物です。レイ・カーツワイルの楽観的な主張と違い、ヴァーナー・ヴィンジはシンギュラリティについて冷静な主張を述べています。ヴァーナー・ヴィンジの主な主張としては、以下のようにまとめられます。
- 1993年に「30年以内に人間を超えた知能が創造される」と予測している
- 人間を超えた知能の出現によって、人類の時代が終わる
- AIを人間が理解するのは困難になる
- シンギュラリティ後の世界は、文明に予測不能な変化をもたらす
シンギュラリティが社会に与える影響

シンギュラリティが到来した場合、人々の社会のあらゆる側面に影響を与えると予測されています。
業務の自動化や新しいビジネスの創出
AIの活用により、より多くの業務が自動化されたり、新しいビジネスが創出されたりする可能性があります。現在のAIは定型業務を中心に活用されていますが、シンギュラリティの到来後は、より創造的・専門的な業務への対応も可能とされます。これにより、生産性の向上やコスト削減といった効果が大いに期待できるでしょう。加えて、新技術の開発やまったく新しい分野のビジネス機会が次々と生み出されることが予想されます。
雇用の減少
AIによる自動化が進むことで、雇用が減少して失業者が増える可能性があると言われています。従来、人の手で行われていた仕事をAIが代わって対応することで、人間による労働の価値が低下し、多くの職業が喪失すると予想されています。シンギュラリティの到来後に多くの仕事が自動化されるリスクがあるとともに、スピードの速い技術革新にどのくらい適応できるかが重要視されています。
社会制度の変化
現在の社会制度は、人間が労働する環境であることを前提として制定されています。しかし、AIの活用により人間が担う仕事が減少すると、社会制度を変化させる必要が出てくるでしょう。例えば、労働時間の大幅な短縮、UBI(ユニバーサル・ベーシックインカム、すべての国民に一定額の収入を無条件で支給する制度)の導入、著作権や知的所有権の再定義などが挙げられ、より多様なライフスタイルの実現につながると考えられています。
体や健康への影響
レイ・カーツワイルが提唱しているように、シンギュラリティは医療業界に革命をもたらし、人間の体や健康へ大きく影響を及ぼす可能性があります。体内治療や神経インターフェースを利用するなどして、従来では困難とされていた病気の治療・疾病予防が可能となるとのことです。シンギュラリティの到来後は、老化の制御や寿命延長を実現できるとされている一方で、人間の健康リスクや哲学的問題も議論されています。
まとめ
シンギュラリティは、AIが人間の知能を超える時点であり、技術革新がもたらす新たな時代の幕開けを意味します。技術の発展が加速する現代において、シンギュラリティへの理解を深め、来るべき時代に向けて適切な準備と対応を進めることが重要な課題となっているのです。企業としては、この変化に対応するための戦略的な取り組みが求められます。
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アイ・ラーニングコラム編集部