ストレスマネジメントとは?その効果や具体例を解説
2024.11.11ビジネス
ストレスマネジメントとは「ストレスと上手に付き合い、対処していくこと」です。ストレスを抱えたまま放置していると、心身に悪影響を及ぼすだけでなく、仕事のパフォーマンスが低下し、離職や退職に繋がることもあります。そのため、一人ひとりが自分のストレス状態を適切に管理することが重要です。
今回は、ストレスマネジメントの定義やその効果、具体例について解説します。個人や企業で取り組める方法についてもご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
ストレスマネジメントとは
厚生労働省による情報提供サイト「e-ヘルスネット」では、ストレスマネジメントを「ストレスとの上手な付き合い方を考え、適切な対処をしていくこと」と定義しています。社会生活や日常生活を過ごしている中で、誰であってもストレスは受けてしまうものです。心身の状態に悪影響を及ぼすストレスに気付き、自分に合った方法で対処していくのがストレスマネジメントの考え方です。
ストレスマネジメントが必要とされる背景
厚生労働省による労災補償状況を見てみると、労災請求件数は年々増加傾向にあります。令和5年の調査によるとメンタルヘルス不調で1カ月以上休業した労働者や退職した労働者がいた事業所の割合は13.5%と、前年の13.3%からわずかに増加しています。ストレスは、外部からの刺激などで心身の内部に生じる反応のことです。このストレス反応が続くと心身にさまざまな悪影響を引き起こしてしまうため、早期に対処しなければなりません。
このように、メンタルヘルス不調による休業者や退職者の数が増加している傾向を受けて、近年ストレスマネジメントの必要性が高まっています。企業では全従業員が健康な状態を確保できるよう、一定の条件を満たす企業においてはストレスチェック制度や産業保健スタッフ等の選任が義務化されています。従業員が健康的に働き続けるために、一人ひとりに対してストレスマネジメントへの理解を深めていく必要があるでしょう。
ストレスマネジメントの効果

ストレスマネジメントを実施することは、従業員一人ひとりにメリットがあるだけでなく、企業全体にもメリットがあります。ここでは、その効果について解説します。
自身のメンタルヘルス状態がわかる
メンタルヘルス不調を抱えている方は、「仕事が忙しい」「周囲に相談できる人がいない」といった環境から、ストレスのサインを見逃してしまうことがあります。そこで、ストレスマネジメントを実施することで自身のメンタルヘルス状態が分かるため、早期の段階で適切に対処することが可能です。
従業員の離職・休職を防止
ストレス状態が続くと社会生活や日常生活に影響を及ぼし、最終的に休職や退職に繋がる可能性があります。企業でストレスマネジメントを実施することで、従業員が心身に悪影響となるストレスと上手に付き合いながら適切に対処できるようになります。結果として離職・休職を防止に寄与します。
職場環境の改善とコミュニケーションの円滑化
ストレス反応には「イライラする」「感傷的になる」「仕事のモチベーションが低下する」など、さまざまな症状が挙げられます。これらが続くとストレスを抱えている本人だけでなく、周囲の従業員にもマイナスな感情を与えてしまい、職場環境の悪化に繋がります。しかし、従業員一人ひとりがストレスに上手く対処できるようになればマイナスな感情が減り、職場全体の雰囲気が明るくなるでしょう。ストレスマネジメントの実施は職場環境を改善させ、コミュニケーションの円滑化や生産性向上など多くのメリットが期待できます。
個人で取り組めるストレスマネジメント
次に、個人で取り組めるストレスマネジメント方法をご紹介します。
セルフモニタリング
セルフモニタリングとは、自分で自分の状態を観察し、記録する作業のことをいいます。自身でストレス状態に気付くためには、客観的な視点で心身の状態を可視化することが重要です。日々じっくりと観察することで、見落としやすいちょっとした自身の体調の変化やストレスの原因に気付くことができます。
セルフモニタリングのポイント
セルフモニタリングを実施するときは、そのときの自分の行動や感情、思考を細かく記録することがポイントです。効果を得るためには継続して記録をつける必要があるため、自分が記録しやすい・振り返りやすいツールを使用しましょう。
コーピング
コーピングとはストレスに対する対処法のことで、ストレスの原因(ストレッサー)を解決したり、負担を軽減したりするために行う認知的または行動的努力を指します。コーピングにはさまざまな方法があるため、自分に合ったコーピングを増やしておくことでストレスを受けたときにスムーズな対処ができるようになります。
コーピングのポイント
コーピングには「問題焦点型コーピング」「情動焦点型コーピング」「ストレス解消型コーピング」の3つの種類があり、それぞれ使い分けたり組み合わせたりすることでストレスに対して対処します。
コーピングでは、まず自分のストレス対処法をリスト化した「コーピングリスト」を作成します。実際にストレスを受けたときにどの対処法が効果的だったかを検証することで、自分に合った対処法を見つけることが可能です。
企業で取り組めるストレスマネジメント

最後に、企業が取り組めるストレスマネジメント方法をご紹介します。
ストレスマネジメント研修の実施
ストレスマネジメント研修では、ストレスとの向き合い方や自分に合ったストレス対処法を学びます。ストレスマネジメント研修を実施することで、従業員一人ひとりがストレスに対する理解を深め、ストレスを受けたときに適切に自己管理できるようになります。結果として従業員のメンタルヘルス不調を予防し、早期離職・退職の防止に繋がるでしょう。
メンター制度の導入
メンター制度とは、「メンター」と呼ばれる社内の先輩社員を配置し、新入社員や若手社員に対して精神的サポートを行う制度のことです。メンター制度を導入して定期的なコミュニケーションの場を設けることで、先輩社員と後輩社員の関係性が徐々に構築されていき、メンタルヘルス不調となる前に不安や悩みを聞いて対処することができます。
メンターについて詳しくはこちらの記事でも解説しています。
メンターとは?メンティーとの違いやビジネスにおいてのメンターの役割について解説
産業保健スタッフの配置と活用
産業保健スタッフは、労働者が健康的に働くことができる支援や環境作りを目的とし、メンタルヘルスケアに取り組む専門家です。産業保健スタッフを配置することで、従業員はストレスチェックの結果に基づく面接や指導を受けたり、心身の健康状態について相談したりすることができます。従業員の中には、上司や同僚には相談しにくいという方もいるかもしれません。全従業員が安心して相談できるよう、産業保健スタッフによる支援が受けられる相談窓口の活用を促しましょう。
ストレスマネジメントで職場の健全化を
ストレスマネジメントは、従業員が自身でストレスに気付き、その後の対処法を見つけるきっかけを与えます。結果として、離職・退職の防止や生産性向上など企業全体にもたらすメリットも大きいといえるでしょう。ストレスマネジメントに取り組む際は、まずは従業員一人ひとりが理解を深めることが重要です。
アイ・ラーニングでは、自分らしく働くためのさまざまな研修を用意しています。従業員一人ひとりが健康的な状態を保つために必要な知識や、ストレスによるリスク回避を学習することができます。職場の健全化を実現するために、ぜひお役立てください。
アイ・ラーニングのビジネススキルについてはこちら
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アイ・ラーニングコラム編集部