ビジネスにおける課題解決に役立つ思考法の1つに「ロジカル・シンキング」が挙げられます。ロジカル・シンキングとはどのように物事をとらえ、考えることを指すのでしょうか。 この記事では、ロジカル・シンキングの定義や他のビジネス的思考法との違い、ロジカル・シンキングを身につけるメリットなどをご紹介します。
まずは、ロジカル・シンキングという言葉が定義するものが何なのかを知りましょう。ここではロジカル・シンキングの具体的な意味と構成要素、他の思考法との違いをご紹介します。
ロジカル・シンキングは日本語に訳すと「論理的思考」です。今ある現状に対し筋道の通った考え方で向き合い、矛盾の生じない結論を導く思考法を指しています。事実に基づいた合理的な結論を要するビジネスの現場において、特にロジカル・シンキングが重要視されるシーンが多いことが分かります。
ロジカル・シンキングを構成する主な要素には、以下の6つが挙げられます。
1. 言葉や数字を適切に取り扱うこと
2. 合理的な考え方
3. 筋道の通った考え方
4. バイアス(認知の偏り)に左右されない考え方
5. 因果関係の正しい把握
6. 物事を要素分解して考えられること
ロジカル・シンキングの他にもビジネスにおける思考法はいくつかあり、中でもロジカル・シンキングと混同されやすいのが「クリティカル・シンキング」です。
クリティカル・シンキングは「批判的思考」という意味で、何かについて考える際に問いかけを行いながら結論を導く思考法です。ロジカル・シンキングと決定的に異なるものではなく、類似した考え方といえるでしょう。
このためロジカル・シンキングとクリティカル・シンキングの双方を組み合わせると、より客観的な見極めが可能となります。たとえば、ある前提を据えてロジカル・シンキングで結論を出したとします。その結論に対し、「前提との整合性はあるか」などとクリティカル・シンキングで問いかける手法で、さらなる説得力を生むこともできるのです。
クリティカル・シンキングについて詳しく解説している記事はこちら クリティカル・シンキングとは?ビジネスにおける必要性と鍛え方 |
ラテラル・シンキングの意味は「水平思考」で、既成の概念や過去の事例など「よくある考え方」に縛られることなく、従来にないアイデアを導き出す考え方です。ロジカル・シンキングが論理の積み重ねによる思考を求めることに対し、ラテラル・シンキングでは拡張的で柔軟な思考が求められます。
ロジカル・シンキングを習得し実践することでどのようなスキルが得られ、ビジネスにどのようなメリットをもたらすのでしょうか。ここではロジカル・シンキングを学ぶことで向上するスキルと、それによって得られるベネフィットをご紹介します。
ロジカル・シンキングを習得することで、目の前の状況や直面した課題に対し、以下のような分析過程に基づいた考え方が身につきます。
1. 事象や課題を分類して考える
2. 原因と結果を把握し、因果関係を確かめる
3. 客観的に分析し、適した対策やとるべき行動を結論付ける
課題に対して主観に基づく対応をとったり、その場の感情に左右されたりせず、原因と結果の関係性を客観的にとらえて課題を解決する力を伸ばせます。
分析力が身につくことで問題解決能力も向上し、ビジネスの現場ではそれらを業務効率化につなげられます。
コミュニケーション能力とは相手の主張や意見を正しく理解し、それに対する自身の考えを穏便かつ適切に伝えられる力です。ロジカル・シンキングによる客観的視点が身についていると、相手の主張と自分の見解にうまく折り合いをつけることができます。
相互理解の欠如や意見と事実の齟齬を招くことなく、スムーズな会話や意思疎通を実現できるでしょう。何かを提案する際も、提案内容に納得感が生まれます。ひいては、社内外のさまざまな人間関係を円滑に保つことにもつながります。
ロジカル・シンキングは、具体的にどのような手法で鍛えられるのでしょうか。ここでは、ロジカル・シンキングを習得・実践するため役立つ4つのフレームワークをご紹介します。
MECE(ミーシー)とは「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」を略した言葉で、「もれなく、重複せず」という意味を持っています。一般的にビジネスにおいては、「網羅性を損なうことなく情報を整理する」という考え方を指します。 MECEが身についていることで、要素の重複や対象外要素(漏れ)、論点の齟齬(ずれ)をなくすことができます。分析や意思決定の確実性を担保しつつ、さらなるスピード化を目指せるフレームワークです。
「So What?」は日本語に直すと「つまり、何?」で、「Why So?」とは「なぜそうなったの?」という意味です。So What? は結論に対する問いかけ、Why So? とは原因に対する問いかけにあたります。 事象や課題に対してつねに上記2つの問いかけをしながら考えられるようになり、話し相手にも根拠と結論のスムーズな理解を促せるフレームワークです。
物事を考えるときにピラミッドを思い浮かべ、最上部の階層を「結論」とします。その上で、下の階層にさまざまな根拠を積み重ね、結論を下支えする構造を築きます。これが、ピラミッドストラクチャー(ピラミッド構造)という考え方です。「結論はいつも根拠で支えられている」という理論を、図式化したものといえます。
めざす結論をピラミッド最上部の形で明確化し、根拠と同時に可視化されることで、課題解決へスムーズに向かうためのフレームワークです。
現状の課題をツリーの形で分解し、体系的に整理するためのフレームワークです。以下の3つのツリーを構成し、解決策の洗い出しを行います。
・要素分解ツリー:課題を全体的に把握した上で、細かな要素に分解する
・原因究明ツリー:課題を生む原因が何であるかを究明する
・問題解決ツリー:課題をクリアするための対策を導き出す
このロジックツリーに役立つのが、先述した「MECE」です。ロジックツリーを書き出すときは必ずMECEを意識し、ツリーで漏れている要素や、ツリーの内容に重複がないかを意識すると良いでしょう。
数多くの情報を整理して論理的にとらえ、それを相手へ明解に伝えられることがロジカル・シンキングの基本です。変化に富み、前例のない事象も頻繁に生じるVUCA時代のビジネスにおいて、欠かせなくなりつつある思考法ともいえます。 ロジカル・シンキングを正しく理解・実践し、ビジネスへ役立てていきましょう。
VUCAについて詳しく解説している記事はこちら VUCAとは何か。VUCA時代を生き抜く企業に必要なこと |
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https://www.i-learning.jp/products/detail.php?course_code=GA825