【課題や背景】
【人材育成による改善】
プロジェクトマネジメント手法を全社の共通言語にすることが重要と認識。社員に定着化させるために、アイ・ラーニングの実績・経験に基づいた実践的な研修を10年以上にわたり実施。部門問わず約1,500名にプロジェクトマネジメント研修を実施し、企業文化の変革を推進。
顧客価値に合わせて変わる必要があった
オリンパスは、医療分野において堅調なビジネスを展開している。
しかし、プロジェクトがすべてうまくいっていたわけではないとRD
開発サポート部 課長代理の永住氏は言う。「過去は、開発者の生産
性が悪いためのロスが生じており、計画通りに進んでいないプロジェ
クトもあった。また、プロジェクトマネジメントの考え方に反し、希望
的な完了日だけを決められて、後は現場が頑張るという根性論で進
めている部分もあった」と振り返った。
特に医療事業では、高いマーケットシェアを有する内視鏡分野が故 に変化の荒波にさらされない状況が続いていたようだ。 永住氏によると「時代の流れに伴い内視鏡システムは大きくなり、 つながるものが増え、影響する範囲も広がってきたため、人の努力に 頼るやり方ではうまく進まなくなってきた」と、荒波にさらされる大き な問題へと発展する懸念を抱くようになっていたと言う。
プロジェクトマネジメント浸透の難しさ
そこで、プロジェクトマネジメントの考え方を浸透させていくことに
なったが、一筋縄ではいかなかったようだ。プロジェクトマネジメントの重要性を訴えても、なかなか認めてもらえない。さらに、現場からは「理想論だ」「実際に適用は難しい」など否定的な意見も多く、浸透させるのは困難な状況となっていた。そうした中でも現場ではとにかく手を動かせと言われ、メンバーは日々必死に業務をこなしていたが、現実的にはプロジェクトの遅れや品質問題が生じ、プロジェクトマネジメントの必要性を感じる人が徐々に増えてきていたという。
実践的なプロジェクトマネジメント研修の実施
オリンパスでは元々、プロジェクトマネジメントの研修は行っていた
が、基本的には知識だけであり、実践には活かせていなかった。
そこで、国内でプロジェクトマネジメント研修の実績・経験が豊富だ
ったアイ・ラーニングへオーダーメイドでチューニングした研修を依
頼し、より実践的で定着させることを目指した。
まずは、プロジェクトマネジメントが必要だと考えている部門から
リーダー層を対象に研修を開始した。ところが次第に、リーダーだけ
分かっていても全体で用語が理解できないと実際には浸透していか
ないことが分かり、リーダー以外のメンバーにも受講するように広げ
ていったという。
また、主に開発のリーダー層に対しては、実際の製品図面や写真を 例に使い、リアリティを出して実施。1 年目は話が合いやすいように 部署毎に6 人チームで実施したが、逆に他の部署の話も聞きたいと いう声が多く出てきたため、2 年目からは部署を超えた混合チーム で実施することになった。実施するたびに受講者や上長の受け止め 方を確認して、理解度を上げるような工夫も重ねていった。 永住氏は、「まずはプロジェクトマネジメントを推進する味方を増や したかった」と言うように、最初はなかなか定着しないことに歯痒さ を感じていたようだ。実際、最初の頃はプロジェクトマネジメント手法 の導入に対し開発現場の理解が進まないことから、受講者の数は 増えるがなかなか浸透しなかったという。
プロジェクトマネジメントの浸透
この“ プロジェクトマネジメント” という手法(PMBOK®) が徐々に
浸透していくと、「こうやればいいんだ」「これで開発がうまくいく」と
段々に実感する人が増え、年々受講者も増えていったという。
共通言語として、開発部門だけではなく、マーケティング部門や
営業部門も受講していき、現在(2018 年末)すでに約1,500 人が
リーダー層向けの研修を受講。メンバー向けも含めると、のべ3,400 人
ほどが受講している。受講の主たる開発者に限れば、プロジェクト
マネジメントがかなりの共通言語になっていることが分かる。
実に10 年以上にわたり続けてきた、プロジェクトマネジメント研修
の成果ではないだろうか。そして、これが好循環につながることも
容易に想像できる。
PM 人材強化推進担当部長の脇氏によると、「特に、現場で問題や 課題を感じている人のほうが真剣に学び、定着率も高い」と言う。 「忙しくて困っている人ほど研修を受講し、解決策を見つけ出したい と考えている」とのこと。
全国の製造部門にもPMBOK® を展開
オリンパスは、2 年前に事業運営をマトリックス化することで、プロジェクト体制が基本となった。そのため、ますますプロジェクトマネジ
メントの重要性は高まり、現在はその実践を推し進めている。開発
と製造現場に壁ができないように、今年からは全国の工場(製造現
場)にも受けてもらえるように展開するという。「今は、製品やサービ
スを最初から開発・営業・マーケ・製造が一緒のチームで企画す
ることも多く、共通言語
をさらに広げる必要が
ある」。
永住氏は最後に、 「PMBOK® を共有でき る仲間を増やすことが 一番大事」と言う。 「昔は仕事の段取りをきちんと教わることはなく、人の背中を見て学 ぶしかない時代だったが、今は研修を受けた人の割合が増えたこと で、会社として PMBOK® が標準になってきている」。特に若い人 は現実的で、根性論よりロジカルに進めることに肯定的とも。 今後様々なプロジェクトが発生する中で、継続的に育成を続けてい くことが大事と締めくくった。
デジタルトランスフォーメーションの時代において、仕事はますます プロジェクト化し、デジタル化に伴いあらゆるモノとつながる中で、 属人的なやり方や過去の成功体験だけでは通用しなくなってきて いる。その意味においても、同社がプロジェクトマネジメントを継続 的に推し進める意義は大きい。業績の伸びも、このプロジェクトマネ ジメントに下支えされていると言っても過言ではないだろう。
永住 英夫(ながずみ ひでお)氏
オリンパス株式会社
技術開発部門
技術開発統括本部
RD 開発サポート部 課長代理
医療機器開発、全社の人材育成を経て、 技術者の人材育成を担当。 主にPM の育成に力を入れている。
社名 | オリンパス株式会社 |
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所在地 | 〒163-0914 東京都新宿区西新宿2-3-1 新宿モノリス |
設立 | 1919年10月12日 |
資本金 | 1,246億円(2018年3月31日現在) |
従業員数 | 35,933人(連結、2018年3月31日現在) |
概要 | オリンパスは、1919年に顕微鏡事業で創業。その光学技術が脈々と受け継がれ、カメラや内視鏡の技術へと発展。将来の持続的な発展に向けて、世界の人々の健康・安心と心の豊かさの実現を通じて、社会への貢献に取り組んでいる。 2019年に創業100周年を迎える。 |
URL | https://www.olympus.co.jp/ |
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