i-Learning 株式会社アイ・ラーニング

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iLL連載コラム:ATDコンファレンスから見たラーニングの潮流


第四回:ラーニング4.0

研修の目的

前回のコラムでみたように、ラーニングの民主化は「学ぶ人」に焦点が当たります。いかに教えるかではなく、いかに一人一人が自ら学べるようになるかが課題になります。研修対象者の変遷を振り返ってみると、これまでは幹部候補からマネジメント、専門職と、特定の限られた対象者に対するものでした。それがいまや組織の全員が対象です。一人一人がそれぞれの役割を自覚し、自ら個性を発揮することで多様なチーム作りに貢献していく研修になっていきます。さらに、研修は講師と受講者の関係が固定したものではなく、社員(受講者)がお互いに、変化する環境への対応の経験を共有し合うことで、チームや組織全体にとっての学びとなります。

研修の目的が、決められた機能を同じレベルで発揮するためのスキルを身につけることや、同質の社員を量産することではなく、個人がチームの中で自分のやるべきことを納得し、他者の立場を理解しつつ自分の持ち味を発揮して、チームに貢献する人財を作ることに変わってきました。

学びのアップデート

このような学びの環境に適応していくために、パトリシア・マクラガンは「ラーニング4.0」という標語を掲げて、人生100年時代の新しい学び方について、スマート・ラーニングの提唱をしています。

パトリシア・マクラガン



パトリシア・マクラガン

マクラガンは学び方の変化をOSのアップデートになぞらえて説明しています。ラーニング1.0は生まれてから幼児の時の基本ソフトで、環境と自分との関係について学習するためのものです。試行錯誤を行うためのOSです。

学生時代にラーニング2.0へのアップデートが行われ、社会に出るための準備を行いますが、学び方は規格化されており、一律の基準に基づいた体系立った教育になります。決められたカリキュラムによる教育に対応するOSが、ラーニング2.0です。 こうして社会に出て様々な環境に対応し、理屈では割り切れない状況に遭遇しながら学んでいくためには、さらにラーニング3.0へのアップグレードが必要になります。ラーニング3.0は教室での勉強だけでなく、先輩の飲み屋での昔話や、お客様から叱られることで骨身に沁みるなど、様々な経験を自分で意識することで学びに変えるためのOSです。自分で学ぶ姿勢を作り、人から強制されなくても学び続ける習慣づくりになるのでかなりのチャレンジですね。現在ラーニング3.0のOSをフルにダウンロードできていないケースも多いと思いますが、時代はさらに次のバージョンを要請しています。 その大きな変化は次の四つのものによってであるとマクラガンは言います。

「Unstoppable You」
Patricia McLagan

・脳の働きに関する新たな知識

学習の成果を拡大するための脳の使い方の新しいテクニックや新しい方法を活用することが可能になりつつある

・主体性の尊重

心理的、精神的な人間性についての理解がより深まっていること

・世界の変化の新たな力学

世界がさらに網の目のように繋がり、複雑性が指数関数的に増大しており、それは経済、社会、仕事そして家庭でも起きていること

・情報の爆発

情報量が指数関数的に増加しており、それらが多様な形でパッケージ化されて現れることで、働き方も生き方も変わってくる

ラーニング4.0の資質

この絶え間なく変化する世界で生き残ること、さらにインテリジェント・テクノロジーの進化に従属するのではなく、それらを使いこなすために4.0へのアップグレードが必要になると主張しています。ラーニング4.0では次のような資質を高めることが求められます。

・想像力 : 未来と将来のあなたを想像する能力

・全脳と全身 : 身体を脳と同じく思考のツールとして使う能力

・自己変革 : 意味のある完全な人生にするための意識変革を行う能力

・深層学習 : データや経験、あるいは思考や行動のパターンを見抜く能力

・AWAT : Anywhere and Anytime いつでもどこでも学ぶ能力

・情報活用 : バイアスに囚われず、情報操作を見抜き活用する能力

・多様な資源 : どんな経験や学びのきっかけからも鉱脈を探し当てる能力

・チェンジ・エージェンシー : 世界の中であなたの価値を作る能力

・テクノロジーとの共存 : 持続的目標実現のためにテクノロジーを使う能力

・共有経験 : 他者のラーニング支援のために実践経験の共有を行う能力

ATDのセッションから((c) 2017. Patricia McLagan. www.learning40.com)

未来のあなたへ

まずはこれらの資質を意識しながら5年後のあなた、10年後のあなたを想像してみてください。そして来年のあなたをイメージしてみてください。

あなたは何をしていて、何を感じているのでしょうか。 何を学びどう変わっているのでしょうか。

あなたのアップグレードが必要な時かもしれません。

アイ・ラーニングラボ 片岡 久