VUCAとは何か。VUCA時代を生き抜く企業に必要なこと
2025.02.20ビジネス
現代は、気候変動による異常気象や大規模災害、AI技術の急速な進化、さらには社会・経済の不確実性の高まりにより、先の変化を予測しにくい時代となっています。
このように今後の予想がしにくい状況をVUCA(ブーカ)という言葉で表すことがあります。
そこで今回は、VUCAという言葉の意味を解説するとともに、企業がVUCA時代を生き抜くために必要なことをご紹介します。
VUCA(ブーカ)とは

VUCAとは、Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguityの頭文字を取った造語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことを意味します。
この、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)は、時代の特性を表しています。
VUCAは、元々アメリカで使われていた軍事用語です。1990年代にアメリカとロシアの冷戦が終結し、核兵器ありきだった戦略が不透明な戦略へと変わったことを表している言葉でした。その後、2010年代に変化が激しい世界情勢を表す言葉としてビジネスでも利用されるようになったのです。
では、Volatility・Uncertainty・Complexity・Ambiguity、この4つの語が表す意味について見ていきましょう。
変動性(Volatility)

変動性は、現代においてテクノロジーの進化や、それに伴ってさまざまな価値観や社会の仕組み、顧客ニーズなどが変化していくことを指します。短期間で市場の状況が変わることもあるでしょう。
このようにめまぐるしくさまざまなことが変化していくため、先の見通しを立てることができず、将来の予測が難しくなっていると考えられ、不安要素となります。
不確実性(Uncertainty)

この言葉は、自然環境や政治・国家、制度などの不確実さを示しています。
地球の温暖化に伴う気候変動、また新型コロナウイルスのような未知の疾病など、唐突に訪れる問題を予測することは困難です。日本では、終身雇用制度や年功序列などの日本型雇用が変化しつつあり、成果主義での評価が一般的になってきています。
これらのさまざまな不確実な事象から、企業や個人でも将来の予測をすることが困難だといわれています。
複雑性(Complexity)

経済がグローバル化したことにより、ビジネスは複雑化しています。日本と海外では、習慣や常識、ルールなどが異なります。そのため、日本では成功事例のあるビジネスでも海外では通用しなかったり、逆に海外で成功したビジネスが日本では通用しなかったりすることがあります。
このようにグローバルなビジネス環境では、その国の法律や文化、常識などさまざまな要因が絡み合って、ビジネスを複雑化しています。
曖昧性(Ambiguity)
変動性(Volatility)・不確実性(Uncertainty)・複雑性(Complexity)が複雑に組み合わさることで、因果関係が不明で、前例のない出来事が増えてきます。これは、過去の実績や成功例に基づいたやり方では通用しない、曖昧性の高い世界へと突入していることを示しています。
VUCAが注目されている理由
VUCAがビジネスの環境において注目されるようになったのは、2016年に開催された世界経済フォーラム(ダボス会議)で「VUCAワールド」という言葉が用いられたことがきっかけです。現代社会では、グローバル化の進展やAI・テクノロジーの急速な進化、社会的な変動による不安定性、気候変動、感染症拡大など予測困難な事態や変化が頻繁に発生しています。これらの要因により、企業には不確実な未来に適応するための人材採用・育成や戦略が求められています。従来の考え方や戦略では対応できないことが増えており、不確実なビジネスや社会の中で柔軟に対応するためにVUCAが重要視されていると考えられます。
VUCA時代を生き抜くためには
激しい変化が起こり、これまでの常識が覆されるとするVUCA時代。ビジネスでは、この時代をどのように生き抜くべきなのでしょうか。
課題の発見と解決力

社会または組織において顕在化していない本質的な課題を見つけて、問題の解決策をいち早く提案して、実行できる能力が必要です。変化の多いVUCA時代においては、本質的な課題もこれまでの事例とは異なる場合があります。そのため、成功事例のパターンにとらわれずに、ものごとの本質を見抜く力も同時に必要とされます。
自力で生きる能力を身につける
VUCA時代では、組織にとらわれず、自分で生きていく覚悟と能力が必要とされています。というのも、従来の日本は、年功序列・終身雇用・新卒一括採用などが特徴の「メンバーシップ型雇用」が主流でした。 しかし、VUCA時代の到来に伴い、メンバーシップ型の雇用では新しい時代の働き方を取り入れることが困難でした。テレワークをするにあたり、一人ひとりの役割が曖昧で誰がどの作業を自宅で行えば良いのか分からないという課題が出てきてしまったのです。 そこで、欧米系の企業で用いられている、仕事の範囲を明確することで専門性を高める雇用方法である「ジョブ型雇用」にシフトし始めてきています。
今後は、身分と給与が企業によって保証されるとは言い切れないため、組織(会社)に属していても、他からも求められる人材になるためのスキルが必要となるのです。
VUCA時代に効果的なOODAループとは
OODAループとは、「Observe(観察)」「Orient(状況判断)」「Decide(意思決定)」「Act(実行)」の頭文字をとった言葉です。意思決定と行動に関する理論で、VUCA時代に対応するために適した思考法といわれています。OODAループもVUCA同様に軍事用語として用いられており、予測不能な戦地でも的確な意思決定を行って迅速な行動をとることが重要であるという考えから誕生しました。この考えは、VUCA時代と呼ばれる現代でも効果的な意思決定を行うために欠かせない理論であるといえるでしょう。
PDCAサイクルとの違い
PDCAサイクルとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Act(改善)」の頭文字をとったフレームワークです。OODAループと混同しやすいですが、OODAループは競争下での適応を重点に置き、迅速な意思決定や行動をとるための理論です。一方で、PDCAサイクルはプロセスを重視し、長期的なサイクルで計画や評価、実行を繰り返して改善を図ることを目的とした理論となっています。
VUCAに対応できる企業・組織になるには
VUCA時代に、柔軟に対応できる企業・組織を作る必要があります。VUCA時代に対応できる企業・組織のあり方をご紹介します。
ビジョンを明確にする

VUCA時代は、将来を予測することが困難ながらも、変化していく環境へと適用しなければなりません。そのため、ビジョンを持っていないと一貫した対応ができず、都度、一時的にしのぐ状態になってしまいます。個人と企業での出すべき成果をビジョンとして設定しましょう。
チャレンジし続ける
社会が急激に変化していくことで、これまでの経験や価値観、常識では通用しなくなってしまうことがあります。今後は、ニューノーマルな生活や常識を取り入れられるような、新しいことに肯定的にチャレンジする姿勢が必要となるでしょう。
多様な人材採用・育成を行う
VUCA時代では、ただ知識やスキルがあるだけでなく、ビジネス環境の変化に対応できる適応力を重視した人材採用が欠かせません。VUCA時代の採用・育成の在り方は、企業の持続的な成長にかかわる重要な要素となっています。
そのためにも従来の働き方に囚われず、リモートワークやフレックスタイム制など多様な働き方を導入して、人材採用・育成の機会を損なわない体制づくりが必要となるでしょう。
情報収集・学習を常に実施する

ビジネスが置かれている環境も急激に変化する可能性があります。そのため、常に情報収集をして、どのような変化が起こっているのか、把握することが必要です。
しかし、インターネット上ではさまざまな人が情報を発信しています。専門家ではない人がそれらしい情報を発信していることもあるので、情報のソースをうまく見極めなければなりません。
さらに、集めた情報から将来の予測を立てることが必要ですが、予測が絶対ということはありませんし、正しいものだと約束できるものではありません。変化する時代に合わせて予測も変化させていく必要があります。
情報から課題を解決するためのアイデアが生まれたら、実行していくことが大切です。
VUCA時代に必要な人材とは
VUCA時代は、想定外の事象が起こることが多々あると考えられます。そのため、想定外のことであっても柔軟に対応でき、迅速に行動に移せる人材が必要です。
新たなリーダーシップ能力を持った人材
VUCA時代に柔軟に適応していくためには、想定外を想定する意識と組織の適合性の向上、意識の共有化と権限委譲が必要です。リーダーシップ能力のある人材は、不確実性のある状況下でもチームを導いて、組織全体の方向性を定める重要な役割を担います。組織だけではなく個人としても適応能力を高め、周囲の適応能力も高められるリーダーシップ能力が必要とされます。
迅速で責任のある決断力を持った人材

日本企業はこれまで、意思決定や決断に時間がかかっていました。そして業務や成果を組織として全うするため、責任の所在が曖昧な部分があったのです。
しかし、VUCA時代は意思決定や決断に時間をかけてはいられません。時間が経てば経つほど世の中が変化し、また新たなアイデア・課題の解決策を考えなければいけなくなるためです。
組織・個人での責任を明確にして、迅速に決断して行動することにより、VUCA時代のような想定外の変化にも対応できるでしょう。
情報収集能力を持った人材
想定外の事象が起きたときに状況を把握し、適切に対応するためには、有益な情報を収集する能力が必要となります。新しい技術の理解を深めたり、トレンドの情報を集めたりすることで、変化するビジネスへの適応に役立ちます。
また、現代にはインターネットやSNSにさまざまな情報が溢れています。膨大な情報量の中から適切な情報を見極められる人材が、企業にとって効果的な意思決定をとれる人材となるでしょう。
仮説構築能力を持った人材
VUCA時代において、解決策に向けた仮説を立てて行動できる人材は欠かせません。ただ仮説を立てるだけでなく、データや情報に基づいて検証することも重要です。不確実性や不安定性が絡んで将来の予測がしにくい状況でも、仮説を立て問題や課題に対して効果的にアプローチすることで、柔軟な対応ができるようになります。
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おわりに
今回は、VUCAについて解説しました。
VUCAとは未来の予測が難しくなる状況のことを指します。現代は、これから先の未来の予測が困難な状態です。このようなVUCA時代には、めまぐるしく変化していく世の中に対して、柔軟に対応していくことが求められています。
企業にとっても、VUCA時代に適応できる人材を育成することが重要な課題の一つとなるでしょう。
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