リテンションマネジメントとは?メリットや事例、離職を防ぐため方法を紹介
2025.12.10ビジネス
働き方の多様化や転職が一般化している現代社会において、優秀な人材を採用しても、すぐに離職してしまうケースは少なくありません。採用した人材に長く働き続けてもらうにはどうすればよいか、悩んでいる企業も多いでしょう。そこで、人材の定着を実現するための経営戦略としてリテンションマネジメントが注目されています。
本記事では、リテンションマネジメントの基本的な概念からメリット、具体的な取り組み方法、実際の企業事例まで詳しく解説します。
リテンションマネジメントとは
リテンションマネジメントとは、従業員の離職を防ぎ、長期的に働き続けられる環境を構築するための取り組みを指します。「リテンション(Retention)」は「保持」や「維持」を意味し、人材の定着を目的とした包括的な施策全般を含む概念です。給与や福利厚生の改善だけでなく、キャリア開発の機会提供、働き方の柔軟性、評価制度の透明性など、多角的なアプローチが求められます。
リテンションマネジメントは単なる離職防止策ではなく、従業員が企業に愛着や誇りを持ち、貢献したいと感じられる環境を整えることが重要です。従業員一人ひとりのニーズや価値観を理解し、組織全体で働きがいのある企業文化を醸成することが、リテンションマネジメントの本質といえるでしょう。
リテンションマネジメントが注目されている背景
リテンションマネジメントが注目される背景には、日本社会が直面する深刻な労働力不足があります。少子高齢化により労働人口が減少する中、企業間の人材獲得競争は激化しています。特に若年層の早期離職が大きな課題であり、厚生労働省の調査によると、過去1年間で若手社員が自己都合により退職した企業は40%を超えるというデータもあります。若手人材の早期離職は、採用・教育コストの損失だけでなく、企業の成長を妨げる要因となります。
さらに、働き方に対する価値観の多様化も大きく影響しています。単に給与の高さだけでなく、働きやすさや成長機会を重視する傾向が強まる中、従業員の定着を図ることが企業の競争力を左右します。こうした環境下で、採用活動の強化と並行してリテンションマネジメントに取り組む重要性が高まっています。
リテンションマネジメントに取り組むメリット

リテンションマネジメントへの取り組みは、企業に多面的なメリットをもたらします。
コストの削減
離職率の低下は、採用・教育にかかるコストの大幅な削減につながります。人材採用・教育にかかるコストは、従業員一人あたり数百万~数千万円ともいわれており、求人広告費や人材紹介会社への手数料、研修費用、担当者の人件費などが発生します。リテンションマネジメントにより人材が定着すれば、採用と教育の繰り返しを防ぎ、経営資源をより戦略的な分野に投資できます。
従業員のエンゲージメント向上
従業員が長く働き続けるための仕組みづくりは、単なる離職防止だけでなく、従業員のエンゲージメント向上にも貢献します。公平な評価制度、成長機会の提供、働きやすい環境が整備されることで、従業員は企業に対する信頼感や帰属意識を高め、より積極的に業務に取り組むようになります。結果として、仕事へのモチベーションが高まり、組織全体の生産性や定着率の向上にもつながるでしょう。
生産性やサービス品質の向上
離職率が低い組織では、経験豊富な従業員が長く在籍することで、社内に業務ノウハウが蓄積されます。これにより安定したサービス提供が可能となり、生産性や品質の向上につながります。高品質かつ安定したサービスは顧客満足度を高め、結果として企業イメージの向上や競争力強化に寄与するでしょう。
リテンションマネジメントの事前準備
リテンションマネジメントを効果的に進めるには、まず現状を正確に把握することが不可欠です。実際に働く従業員が感じている課題や不満は、上層部の認識とは異なる場合が少なくありません。従業員アンケートや定期的な面談を通じて、従業員の声にしっかりと耳を傾けましょう。
職場環境、業務内容、評価制度、人間関係、キャリアの見通しなど、多角的な項目について従業員の率直な意見を収集します。収集したデータを分析することで、組織が抱える本質的な課題や離職につながる具体的な傾向を特定することが可能です。
従業員の目線で問題を捉え、データに基づいた改善策を立案することが、リテンションマネジメント成功における重要な鍵となります。
リテンションマネジメントの取り組みポイント
リテンションマネジメントは、特定の制度だけを改善すれば良いものではありません。組織全体で多面的にアプローチし、総合的な職場環境の改善を図ることが求められます。
人事評価制度の明確化

人事評価制度の不透明さは従業員の不満や不信感を招く要因となるため、評価項目と基準を明確にし、全従業員に公開することが重要です。評価結果はフィードバック面談を通じて改善点や強みを伝えることで、評価に対する納得感が高まります。また、評価者への研修を実施し、評価スキルの向上と評価のばらつきを防ぐことも必要です。公正で透明性の高い評価制度を確立すれば、従業員のモチベーション向上と組織への信頼につながります。
給与体系・報酬制度の改善
給与に関する不満は、離職理由として最も多く挙げられる要因の一つです。給与決定の基準を明確化し、従業員の貢献に対して適切な報酬が支払われているかを定期的に見直す必要があります。市場の給与水準や人事評価制度と連動させ、成果や能力に応じた公平な昇給や賞与の仕組みを構築しましょう。さらに金銭的報酬だけでなく、成長機会や働きやすさといった非金銭的報酬の改善も、リテンションマネジメントにおいては重要な視点です。
多様な働き方の導入
若い世代を中心に、働き方の多様化は企業選びにおいて重要な基準となっています。テレワーク、フレックスタイム制、時短勤務などの柔軟な働き方は、従業員のワークライフバランスを向上させます。特に場所を選ばない働き方は、従業員のライフステージの変化による離職を防ぐ効果が期待できます。ただし、制度を導入するだけでなく、利用しやすい職場文化の醸成や経営層による推進も不可欠です。
従業員のヘルスケア・メンタルケア
従業員の心身の健康は、生産性や定着率に直結する重要な要素です。過重労働や職場のストレスによる健康不調は、パフォーマンス低下だけでなく、休職や離職の原因にもなります。
健康診断の実施、産業医やカウンセラーの配置、メンタルヘルスチェックの導入など、従業員の健康状態の変化に早期に気づける体制を構築することが重要です。従業員の健康を支える環境を整えることで、従業員は安心して働くことができ、長期的な定着につながります。
キャリアアップやスキルアップのための環境づくり
従業員一人ひとりが自身のキャリアを描けるよう、キャリアパスを明示することが重要です。定期的なキャリア面談を実施して目標や適性を把握し、組織内での成長ルートや昇進・担当領域の拡大などの可能性を示します。これにより、従業員は自身のキャリアを主体的に設計でき、キャリアアップによる離職防止にもつながります。また、社内研修プログラムの充実、資格取得支援制度、外部研修への参加など、スキルアップの機会を提供することも効果的です。従業員が組織内で成長し続けられる環境を整えることで、長期的な定着が促進されます。
リテンションマネジメントの事例
ここからは、実際にリテンションマネジメントで成果を上げている企業の事例をご紹介します。
サイボウズ
サイボウズ株式会社は、かつて離職率28%という状況にありましたが、積極的な働き方改革により離職率を4%前後まで改善することに成功しました。取り組みの特徴としては、「100人いれば100通りの働き方」をコンセプトに、働き方の多様性を徹底的に追求した点です。従業員のライフスタイルに合わせて柔軟に対応できるよう、勤務時間や場所を自由に選択できる制度を導入しました。
従業員の多様な価値観を認め、個々の事情に寄り添う姿勢により高い定着率を実現しています。
参考:https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/m001471.html
クックパッド株式会社
クックパッド株式会社は、自社キッチンで新鮮な食材を使って賄いを作れる取り組みを実施し、社内コミュニケーションの活性化を図るなど、従業員の主体的な活動を支援しています。さらに、技術力の向上を支援する制度も充実しており、社内勉強会の開催やカンファレンス参加支援などが積極的に行われています。従業員の主体性を尊重し、やりがいを感じながら成長し続けられる環境を提供することで、リテンションマネジメントの成功へとつなげています。
リテンションマネジメントは企業の未来をつくる
人材不足が深刻化する現代において、リテンションマネジメントは企業の持続的成長を支える重要な経営戦略といえます。しかし、リテンションマネジメントは、導入してすぐに効果が現れるものではありません。中長期的な視点で継続的に取り組み、組織文化として浸透させることで成果が現れます。まずは社内でスキルと知識を蓄積できる体制を整えることで、「定着」への大きな一歩となります。
アイ・ラーニングでは、リテンションマネジメントに大切な、コミュニケーションスキルやエンゲージメントスキル、キャリア開発、マネジメントスキルなど、さまざまな研修を用意しています。リテンションマネジメントを強化し、従業員が「この企業で成長したい」と感じる環境を構築したいという場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
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アイ・ラーニングコラム編集部

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