講師インタビュー:人が情報セキュリティの最大リスク? ― だからこそ人で守る ―
2025.10.03お役立ち情報株式会社アイ・ラーニング
情報セキュリティ研修企画担当、兼講師 岡本 貴之 インタビュー
「情報セキュリティ対策はシステムに任せておけば安心」――そう思っていませんか?
実際には、どれだけ堅牢なシステムを用意しても、そこに関わる“人”の行動ひとつで重大な情報漏洩やインシデントは起こり得ます。IPA『情報セキュリティ白書2024』によると、組織における情報漏洩事故のうち約7割が手順やルール違反、確認作業不足や操作ミスなど、人の関与による過失に起因するものと報告されています。
今回は、アイ・ラーニングで情報セキュリティ分野の企画と講師を担当する岡本に、「人がリスク」である一方で、「人が守り手」となるための鍵について話を聞きました。
――「人が情報セキュリティの弱点」と言われることもあります。
岡本:それは間違いありません。厳格な情報セキュリティルールがあっても、業務を遂行するにあたり、そのルールが煩瑣であったり、業務に支障をきたしてしまう可能性があると、軽視したり、ひどい場合無視してしまいます。
攻撃者も人の弱みに付け込んで、フィッシングサイトからの個人情報やクレジットカード情報を搾取したり、標的型メールやClickFixなどを利用したマルウェア感染、さらにはランサムウェアを配布して脅迫したり、内部情報を搾取したりします。
多くのインシデントは人のミスや弱みから始まります。でも裏を返せば、人が“正しい判断”と“ちょっとした注意”を身につけることで、かなりのリスクを未然に防げます。つまり、人は“弱点”であると同時に、“防波堤”にもなれるんです。
――では、どんな力を持った人材が“防波堤”になれるのでしょうか?
岡本:一言でいえば、「気づいて、伝えて、動ける人」です。
不審な挙動に違和感を覚える、パスワードの扱いを意識する、ルールの背景を理解して順守できる――こうした一人ひとりの行動が、組織全体の情報セキュリティレベルを底上げします。専門知識がなくても「気をつける文化」があれば、それは大きな力になります。
――そうした意識をどう育てていけばよいのでしょうか?
岡本:やっぱり“当事者意識”を持ってもらうことが大事ですね。
「自分には関係ない」と思っていると、知識が身についても、行動が伴いません。研修の中では、「あなたの行動が、実は攻撃者にとって入口になるかもしれない」といったリアルなケースを交えながら繰り返し伝えるようにしています。
――そのような研修には、どんな方が参加していますか?
岡本:最近では、IT部門以外からの参加が増えています。
営業、事務、人事など、社内のさまざまな部門から「情報セキュリティって何をすればいいの?」というニーズが多くなっています。特にクラウドサービス(SaaS)製品の多用や、在宅勤務によるインターネットからの社内リソースアクセスなどが当たり前になった今、どの部署の誰もが“リスクにさらされている”という感覚が強くなっていますね。
――育成担当者からの相談で多いのはどんなことですか?
岡本:セキュリティリテラシーをどのように定着させていけばよいかという声が多いです。
1回の座学やeラーニングだけでは行動が変わらない。だからこそ定期的な研修の反復と、標的型メールの模擬訓練や、インシデント対応の実践的な訓練が必要となります。
――今後、セキュリティ人材に求められるものは何でしょう?
岡本:「判断できる力」と「伝えられる力」ですね。
技術の話ではなく、たとえば上司やチームに「これは危ないかもしれません」、「いつもの事象や挙動と違います」などと伝えられるかどうか。知識があるだけではなく、“行動に変えられる力”こそが、これからのセキュリティ人材の鍵だと思います。
――最後に、育成に関わる皆さんにメッセージをお願いします。
岡本:情報セキュリティは「誰かが守ってくれるもの」ではなく、「みんなで守るもの」です。
そのスタートは、ちょっとした注意、ちょっとした声かけから。特別な技術者を育てることが最適な解決策ではありません。むしろ、「一般社員が強くなる」ことこそ、いま必要とされているセキュリティ対策です。
アイ・ラーニングのセキュリティ研修
アイ・ラーニングでは、セキュリティを“知識で終わらせず、行動に変える”ことを重視した研修プログラムを提供しています。
IT部門だけでなく、全社的なリスク感度や判断力を育てたいという企業に向けて、実践的なハンズオンやケーススタディを通じて、“人で守る”文化の定着を支援しています。
ご関心のある方は、以下から詳細をご覧ください。