ファシリテーションとは?目的やメリット、必要なスキルを解説
2025.07.17ビジネス
多様な価値観や専門性を持つメンバーが集まる場面で、建設的な議論を促進し、全員が納得できる結論を導き出すためには、適切なファシリテーションが不可欠です。しかし、ファシリテーションという言葉を耳にしても、具体的にどのような技術や手法を指すのか、また司会や進行とはどう違うのかを明確に理解している方は多くないかもしれません。
本記事では、ファシリテーションの基本的な概念から、実践に必要なスキルまでを体系的に解説します。
ファシリテーションとは
ファシリテーションとは、会議やミーティングなどの場において、参加者同士の相互作用を促進し、グループ全体が目標達成に向けて効果的に機能するよう支援する手法のことです。ファシリテーションを行う人のことを、ファシリテーターと呼びます。具体的には、参加者が積極的に会議に参加し、多様な意見や視点を集めることで、建設的な議論を通じて最終的に合意形成を促せるようサポートします。ファシリテーションは、ビジネスシーンだけでなく、教育現場や地域活動などの幅広い分野で活用されています。
司会・進行役との違い
ファシリテーションと従来の司会や進行役には、明確な違いが存在します。司会・進行役は、会議の流れを管理し、スムーズに会議を進行させることが主な役割です。議論の内容よりも、発言者の順番調整や時間管理に重きを置いています。一方で、ファシリテーターは単に会議を進行するだけではありません。参加者が自分の考えを発言できるよう質問を投げかけたり、議論が停滞した際に新たな視点を提供したりすることで、参加者の自発性や協働性を引き出し、協働できる環境を整える役割があります。
ファシリテーションの目的
ファシリテーションの根本的な目的は、さまざまな価値観を持つ参加者が納得感を持った上で、目標達成や合意形成に向けて会議をまとめることです。現代の組織では、異なる部署、専門分野、経験を持つメンバーが連携し、複雑な課題について議論する機会が増えています。参加者それぞれが持つ知識や経験、価値観は多様であり、同じ課題に対しても異なる解釈や解決策を持つことが自然です。適切なファシリテーションが行われない場合、議論は平行線をたどったり、発言力のある人による偏った意見のみで重要な視点が見落とされたりする場合があります。
ファシリテーションは、多様性を組織の強みとして活用することで、より質の高い解決策を生み出すことを可能にします。参加者が自分の意見を安心して発言でき、他者の意見を尊重し合える環境を作ることで、創造的で実行可能な結論に到達することができます。
ファシリテーションのメリット

効果的なファシリテーションの実践により、組織や参加者にさまざまなメリットがもたらされます。
生産性向上
ファシリテーションによるメリットの一つが、生産性向上です。議論が論点からズレた際に、ファシリテーターが議論を適切に軌道修正すれば、限られた時間でも最大の成果が得られます。また、活発な意見交換を促すことも生産性向上に大きく寄与します。ファシリテーターは、発言の少ない参加者にも発言機会を提供し、多様な視点を議論に取り入れます。結果として、一部の参加者の意見に偏ることなく、より包括的で質の高い議論が実現されます。
アイデアが生まれやすくなる
ファシリテーションは、新しいアイデアの創出を促進する重要な役割を果たします。会議の参加者が失敗を恐れることなく、発言しやすい雰囲気を作ることで、革新的なアイデアが生まれやすい環境が整います。また、異なる視点や経験を持つ参加者同士の対話を促進すれば、新たな発想の糸口が得られます。
合意形成が得られやすい
ファシリテーションにより、参加者が納得した形で合意に至りやすくなります。ファシリテーターは、参加者の意見を整理し、根底にある共通の価値観や目標を見つけ出して結論へ導きます。このように参加者同士の意見を汲み取り、結論に至った理由を明確にすることで参加者の納得感を得やすく、積極的な行動と協力を期待できます。
ファシリテーターの役割
効果的なファシリテーションを実現するためにも、会議の各段階において、ファシリテーターは適切な役割を果たす必要があります。
事前準備
ファシリテーションの成功には、十分な事前準備が欠かせません。会議の目的を明確に確認し、議論すべき論点の整理や参加者への共有など、参加者全員が共通の理解を持てるよう準備します。また、タイムスケジュールの作成も重要です。参加者が疲労することなく集中して議論に参加できるよう、適切な時間配分や休憩時間を設定します。会議室の設営や必要な資料の準備も含め、参加者が快適に議論できる環境を整えます。
会議の進行
会議中のファシリテーターの役割は多岐にわたり、会議の進行は重要な要素の一つです。多様な意見が議論に反映されるよう、批判的な発言を適切にコントロールし、建設的な対話を促進します。発言の少ない参加者にも積極的に発言機会を提供し、意見交換を行いやすい雰囲気作りに努めます。また、時間管理も重要な役割です。各議題に適切な時間を配分し、議論が長引いている場合は適切に区切りをつけます。参加者の集中力を維持するため、必要に応じて休憩を挟みながら適切な時間管理を行います。
合意形成
会議の最終段階では、参加者の意見を整理し、合意形成に導く役割を担います。議論を通じて出された多様な意見を体系的に整理し、参加者全員が納得できる結論に向けて建設的な解決策を模索します。合意後は、次のアクションを明確にし、参加者全員が進め方を共有しながら、責任を分担できるようサポートします。
ファシリテーションに必要なスキル

日本ファシリテーション協会では、ファシリテーションに必要なスキルを4つのカテゴリーに分類しています。効果的なファシリテーションを実践するためには、それぞれのスキルをバランス良く身につけることが重要です。
場のデザインスキル
場のデザインスキルは、参加者が効果的に協働できる環境を設計する能力です。議論の流れを論理的に組み立て、参加者が段階的に理解を深められるよう配慮します。座席配置、必要な機材や資料の準備、適切な室温や照明の確保など、参加者が快適に議論に集中できる条件を整えます。また、心理的な環境設計は非常に重要な要素です。参加者が安心して発言できる雰囲気を作り、多様な意見が尊重される文化を醸成します。
対人関係のスキル
対人関係のスキルは、参加者との信頼関係を構築し、効果的なコミュニケーションを促進する能力です。参加者の発言を注意深く聞き、適切な質問を投げかけることで、参加者の考えをより深く引き出して建設的な対話を促進します。また、言語コミュニケーションだけでなく、非言語コミュニケーションからも参加者の意図や感情を汲み取り、理解することが重要です。これにより、参加者との信頼関係を構築し、参加者に安心感を与えるよう努めます。
構造化のスキル
構造化のスキルは、複雑な情報や議論すべき論点を整理し、理解しやすい形で提示する能力です。参加者による多様な意見やアイデアを、ツールを活用しながら視覚的に分かりやすく分類・整理することで、参加者全員が会議の全体像を把握できるようになります。また、議論の筋道を整理し、参加者全員で実行可能な解決策を導き出すよう支援します。
合意形成のスキル
合意形成のスキルは、参加者の多様な意見を調整し、全員が納得できる結論に導く能力です。参加者それぞれの立場や利害を理解し、段階的に納得感を得られるよう丁寧にプロセスを進めます。対立する利害がある場合は、小さな合意を積み重ねて、建設的な解決策を導くことが必要です。決定プロセスの透明性を確保し、参加者が結果に納得できるよう配慮することは、ファシリテーターの高い能力が求められます。
まとめ
多様な価値観を持つメンバーが参加する会議やチーム活動において、ファシリテーションは重要な役割を果たしています。ファシリテーションの技術を向上させることで、会議やチーム活動がより建設的で創造的な場となり、組織へ大きな価値をもたらすでしょう。
アイ・ラーニングでは、会議やチーム活動をより効果的に機能させたいと考えている方に向けて、ビジネススキルを包括的に習得するのに役立つさまざまな研修を用意しています。ファシリテーションを活用して、組織全体のパフォーマンス向上や成長へつなげたいという場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
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アイ・ラーニングコラム編集部