「デザイン思考」でビジネスやライフスタイルから新たな発見や未来を見出す

2023.08.23ビジネス
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「デザイン思考」でビジネスやライフスタイルから新たな発見や未来を見出す

モノやサービスを作り出す企画やマーケティングの方のみならず、ビジネスの現場やわたしたちの日々の行動が加速度的に変化している今、現場で働く人たちの、本人もまだ気づいていない問題や課題を捉え、発見し、ユーザーに共感しながら解決策を創造するのに役立つのが「デザイン思考」です。デザイン思考とは、ユーザーに適したデザインを行うデザイナーの視点やプロセスを使って、ユーザーのためのモノやサービスを生み出す方法のことです。

デザイン思考とは

デザイン思考とは

デザイン思考とは、デザイナーの行うデザインプロセスの手法を活用して、解決策を生み出すアプローチのことです。デザインとは、製品を使う「ユーザー」のニーズに合ったものや解決策を作ることです。如何に優れたデザイナーであっても、製品を使う人や使う目的をデザインのテーマとして想定していないと、良いデザインはできません。
例えば、服飾デザイナーに「何でも良いから、服をデザインしなさい」とだけ指示を出しても、デザイナーは困ってしまいます。誰がどんな目的で、どんなシーンで着る服であるかを伝える必要があります。例えば、昼間の結婚式に参列するためのカクテルドレスで、〇〇さんが着るなどの具体的なテーマが与えられないと、〇〇さんが必要としている服のデザインはできません。
デザインは「設計する」という意味ですが、デザイン思考は、見た目や使い勝手を整える、美しい装飾を考案することだけではなく、使う人や当事者を想定した人間中心の考え方という意味もあるのです。

従来の思考法とデザイン思考はどう違う?

従来の思考法とデザイン思考はどう違う?

思考法というと、「論理的思考(ロジカルシンキング)」「批判的思考(クリティカルシンキング)」という思考法について学んだ方も多いと思います。この2つとデザイン思考では、アプローチの仕方や、問題解決のプロセスに違いがあります。
論理的思考は、情報を整理し、話の論旨を明確にする方法で、批判的思考は、現状を把握し、問題や解決策の現状打破を意図しています。一方、デザイン思考は「使う人=ユーザー」に寄り添い、観察し、共感し、その人にあった解決策を考えていく、「人間中心」のデザインプロセスといえます。

デザイン思考はなぜ必要か

デザイン思考はなぜ必要か

デザイン思考は、現代のわたしたちの新しい思考法として、今のビジネスに必要だといわれています。なぜ必要とされているのでしょうか。

一昔前は、新しいモノを作ればすぐに売れる時代でした。しかし、現代は技術の発展によりモノがあふれかえり、いろんなモノを自由に手に入れることができる時代です。その結果、単に「新しい」というだけではユーザーが購入しなくなりました。
ユーザーのニーズに合っているかどうかもありますが、世の中が便利になっている現在、モノを作れば売れた昭和の経済成長期のような消費傾向とは異なります。現在のユーザーは、目新しさでモノ選びをするのではなく、自分の感性や感情に合ったモノ選びをします。多様化の時代と言われるように、購入者やユーザーの年齢や生活パターン、思考、趣味や嗜好も千差万別です。ユーザーが単にモノを欲しがるというよりも、たくさんのモノの中から自身のニーズに合ったものを探している時代とも言えます。
また、高価なモノを買うよりも、テーマパークへ行って非日常の経験をしたり、ダンス教室に通って趣味を楽しんだりといった「コト消費」が注目を集めています。モノを持っていることだけが、幸福の証ではなくなったといえるでしょう。ツイッターやインスタグラムのようなSNSで「バズる」投稿の多くは、誰かの経験や感動に共感した人のつながりです。心の充実を求めるユーザーが増えている傾向が、ここからも見てとれます。

実際のユーザーの行動、経験、視点を受けとめて、デザインしていくのがデザイン思考です。それは、作る側や提供する側の一方的な思い込みや押し付けではない、ユーザーの側に立 ったモノや出来事の受け止め方や視点をデザインに生かす必要があるということです。

デザイン思考のプロセス

デザイン思考のプロセス

デザイン思考でまず一番大切なことは「ペルソナ」の設定です。マーケティングでも使われるこのペルソナというのは、購入対象者やユーザーのことです。
マーケティングでの「ペルソナ」は、何かモノづくりをするときに「こんな人がターゲット」という提供側の想定イメージ像で設定することが一般的です。例えば、「女子高校生が好むお菓子」を開発する際に設定するペルソナは、一般化されたイメージの女子高校生像です。 デザイン思考の場合の「ペルソナ」は、抽象的なイメージを設定するのではなく、例えば「〇〇高校2年3組の田中ゆかりさん」のように、実在の人物を特定します。実際の田中ゆかりさんが「何が好きで、コンビニでお菓子を選ぶときにはどのように選ぶか?」というようにテーマを設定します。そのペルソナに対して、以下のようなデザイン思考のプロセスでアプローチしていきます。

観察・共感

観察・共感

まずは、ペルソナとペルソナが抱える問題やニーズを見つけていきます。ペルソナの状態や行動、どのようなことを考えているのかを受けとめて、今行っていることに潜在した実際の問題やニーズを探ります。これはユーザーであるペルソナの視点に立ち、その人が何を求めているのか、どんな方法や手段で欲しいものや解決策を手に入れているのかを確認しながら、ペルソナの言動や選択に共感していくのです。
デザイン思考では、このペルソナの行動理解と共感を「カスタマージャーニーマップ」という行動を時系列にトレースする方法と、ペルソナの言動や感情を受けとめる「共感マップ」という方法を使って、具体的に明確に把握していきます。

問題定義(片付けるべきジョブ)

観察・共感から得られた情報を元に、ペルソナが求めているニーズ(片付けるべきジョブ)を見出していきます。片付けるべきジョブは、ペルソナが意識的あるいは無意識的に行っている行動や選択の根拠になるものです。
先ほどのペルソナの「コンビニでお菓子を買う女子高校生の田中ゆかりさん」なら、ゆかりさんがコンビニでお菓子を選んで買う理由です。ゆかりさんが買うお菓子の種類や数コンビニでお菓子を買う様子から、ゆかりさんの欲しいもの、やりたいことを把握します。ゆかりさんがお菓子を買う目的は、自分が食べるためだけなのか、お菓子好きの友達とのコミュニケーションや一緒に食べて過ごす時間が大事なのか、というように、行動の理由を把握していきます。

アイディアの創出

アイディアの創出

ペルソナの問題、片付けるべきジョブの定義ができたら、それを解決するアイディアを出していきます。ブレーンストーミングや色々な発想法を利用してアイディアを数多く創出するのが一般的です。ブレーンストーミングなどのアイディアのディスカッションや発表では、アイディアの大小を問わず、突飛な発想も歓迎し、思いつくものをできるだけ多く挙げてみましょう。皆のアイディアや意見に対して、オープンでポジティブな姿勢で受け止めることが大切です。

プロトタイピング(試作する)

出てきたアイディアをペルソナや共感した人たちで確認するために試作品(プロトタイプ)やストーリーの確認をしましょう。これがプロトタイピング(試作)です。可能であれば試作品をペルソナに見せたり、プロトタイプのストーリーを示したりすることによって、その解決策が問題や課題にマッチしたものかをどうかを確認しやすくなります。プロトタイピングの方法は、イラストボードや簡単なミニチュア、代替品でも良いですが、解決策の具体的なイメージが表現できるものにしましょう。

テスト

試作品をペルソナや共感者に見せて、ストーリーや解決策、その人の具体的な解決策になるかなどを確認します。感想や意見を聞いて、プロトタイピングとテストや改善を繰り返していきます。ここでは、試行錯誤しながら、より満足度の高い、ペルソナの感動を得られるようなアウトプットを目指します。

デザイン思考を活用するために

デザイン思考を活用するために

デザイン思考は多くの可能性を生み出します。デザイン思考によって見つけられた片付けるべきジョブや解決のアイディアは、新たな製品やサービスを生み出す可能性を持っています。
しかし、実際のペルソナにとっては有効な解決策になりますが、その解決策の製品やサービスが沢山売れて大ヒットするか?というと、必ずしもそうではありません。デザイン思考が導き出した解決策を市場に打ち出した時の「市場の中に」ペルソナと同じ問題や課題を持つ人がどれくらいいるか決めるのはデザイン思考ではなく、マーケティングや市場調査の領域になります。すなわち、デザイン思考でできた製品やサービス全てが、ビジネスとして多くの利益を必ずもたらすということではありません。では、デザイン思考をビジネスに上手に活用するためには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか。

新しい発想が必要

デザイン思考はユーザーの視点に立って、何が問題なのかを調査してアイディアを出していきます。この際に、すでに多くの商品によって、すでに問題解決されているものを選んだり、特定のユーザーの抱える悩みを解決することに固執してしまったりすると、ありきたりの解決策ばかりを並べてしまうことにもつながります。より潜在的な問題を探るためには、ペルソナの共感とともに幅広い視野や革新的な発想でのアプローチが必要です。

社会や個人の変化は変革へのチャンスとしてデザイン思考で捉える

デザイン思考により生み出された解決策の提供がうまくいき、多くの人の共感を呼んでヒットするのは喜ばしいことです。しかし、商品開発が成功したとしても改善し続けることや、新たなペルソナやジョブを見つけることをやめてしまっては、企業のビジネスは維持・継続しません。
ユーザーの好みやライフスタイルなどの変化を取り入れ、ニーズや環境、実現方法の変化を取り入れつつ、デザイン思考を活用していくことが大切です。ペルソナに寄り添い、共感するデザイン思考のプロセスは、今の低成長・多様化・個別化と技術革新の社会の中でより活用される有効な方法です。

おわりに

今回は、デザイン思考についてご紹介しました。
デザイン思考は、問題解決のための方法を設計するための考え方です。デザイナーだけの考え方ではなく全ての人が活用できます。プロダクトを作るときはもちろん、顧客提案やユーザーフレンドリーなシステムの提供といったあらゆるビジネスや生活のシーンで役立てることができます。

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