講師インタビュー:「“守り”から“攻め”へ──ITSMが現場で機能するための条件とは」

2026.02.09IT , お役立ち情報
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株式会社アイ・ラーニング
ITサービスマネジメント講師 小倉 紀彦 インタビュー

 

 

 

ITサービスマネジメント(ITSM)を導入しても、現場で形骸化してしまい「結局守りのためのマニュアルで終わっている」という課題は珍しくありません。 

IPA『情報セキュリティ白書2024』 や IPA『DX動向2024』では、多くの企業が「運用設計や改善体系が整えられていない」ことをDX推進の阻害要因として認識しており、ITSMの仕組みが形式だけで終わってしまう企業が少なくないことを示しています。 

今回は、ITサービスマネジメント研修を担当する講師・小倉に、「なぜ形骸化するのか」「どうすれば本当に機能する運用設計になるのか」を伺いました。

 

――なぜITSMが形骸化してしまうのでしょう?

 

小倉:大半はITIL®を導入する、つまり「形だけ整えるから」です

形式に沿ってプロセスを立てても、「なぜこのプロセスが必要なのか」「どんな成果につながるのか」が現場に理解されなければ、運用は疲弊します。

いわば、ITILを導入しているから大丈夫、ITILのプロセスに沿って行動しているから安心、というケースですね。

 

――儀式のように形式上になってしまうのはどうしてですか?

 

小倉:IPAのDX関連レポートでは、DXへ本腰を入れている企業でも「部門間の連携や改善文化の欠如」が致命的なボトルネックになっていることが浮き彫りにされています。

これこそが、「守りだけのITSM」に陥る構造的な原因です。

 

――DX時代におけるITSMとは、どのように再定義されているのでしょうか?

 

小倉:現代のIT組織では変動性、不確実性、複雑性、曖昧性というものと向き合いながらも迅速に価値あるサービスを提供していかなくてはなりません。そのためはウォーターフォール的な開発運用をベースにしながらもアジャイルやDevOps、リーンなどにも対応した行動が必要です。

また、単なるトラブルシューティングの仕組みではなく、サービスを戦略的に設計・改善し続ける文化を持つことがITSMの本質です。IT部門が運用の受け身から脱却し、顧客部門と共に新たな価値の創出を担う「攻めの組織」へと変革する基盤になります。

 

―――“攻めるITSM”は具体的に何をするのでしょう?

 

小倉:たとえば、インシデント対応の履歴から改善ポイントを統計的に分析したものを、課題の再発防止ではなく、次のサービスをより良くするための提案に昇華させる。変更管理やキャパシティ管理も、「どうすればより迅速・柔軟に動けるか」を中心に考えるようになります。

 

――どうすれば形骸化を防ぎ、ITSMを“攻め”の武器にできるのでしょう?

 

小倉:現場が運用を理解し、責任と裁量を持てるかどうかが鍵です。

たとえば、教育後に「報告だけする」「ルールを守る」ではなく、「改善提案として自ら動く」状況を仕組むと、文化化が進みます。この「自らが動く」というのは「当事者意識を持つ」という重要なキーワードでもあります。

こうした「改善サイクルの定着」と「組織横断的な視点」をもつためには、インシデントから評価、改善提案までを現場が回せる仕組みを設け、かつ企画・開発・運用・カスタマーの視点を横断的につなげていく。これを制度・技術・文化として構築できるかが勝負です。

 

――育成や研修設計に落とし込むとしたら?

 

小倉:研修では、たとえば次のような構造を取り入れています:

単純にテキストに沿いながらITIL用語を中心に理解すりだけではなく、ケースを使いながら「どこに改善の余地があるのか」を考えていきます。

ケースは架空のものが中心になりますが、理解しやすい身近なものを多く採用しています。

  • 車を納品する
  • 注文住宅を作る
  • プリンターが使えない

などなどです。

――最後に、育成担当者に向けてメッセージをお願いします。

 

小倉:ITSMは形だけ作っても意味がありません。

重要なのは、「目的」「価値」「改善への意識」を運用に紐づけて伝える設計です。

形骸化しない“現場で機能する仕組み”をつくることで、ITSMは真の武器になります。ぜひ、運用を再設計する思考を育ててほしいと思います。

 

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