アジャイルコラム:スクラムマスターという投資先──市場データが示す新たな価値

2025.05.27アジャイル
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スクラムマスターという投資先──市場データが示す新たな価値

昨今、私たちを取り巻くビジネス環境はますます先が読みにくくなっています。経済が右肩上がりで成長していた時代は終わり、「作れば売れる」といった環境はもはや過去の幻想です。過去を振り返るより、今を勝ち抜くことを考えるのが重要ですね。

そこで最近特に感じるのは「時は金なり」という考え方です。もう少しカッコよく論理的な表現をすると「NPV(Net Present Value:正味現在価値)」という言葉で表すこともあります。昔、製品開発を担当していた際にも使った指標で、時間をどう使うか、どこに投資するかがその後の成果を左右します。

これは、新しいスキルや職種に挑戦する際にも通じます。「その投資がどの程度の価値を将来的にもたらすのか」「自分の時間をどこに投資するか?」という視点は非常に重要です。

「消滅する職業」などの話もよく耳にしますが、わかり易いところでいうと、「炭鉱夫」「電話交換手」、これらはもはや賃金の対象となる職業ではなく、職業自体が消滅しました。今ではAIの台頭により、単純なプログラミングや議事録作成業務などは、AIに置き換えられていますね。では、DX人材ではどうでしょうか?ちょっと大きな定義なので、もう少し具体化して考えましょう。たとえば「データ・サイエンティスト」、まさに花形ですね。今や、優秀な人材が押し寄せてしのぎを削っているように思います。多くの事業会社は、こぞって採用に注力しています。ある意味「レッドオーシャン」の様相を呈してきているように感じます。

注目職種としてのスクラムマスター

ではアジャイルの人材はどうでしょうか?一番わかり易いのが、アジャイルの3つの責任(役割)のひとつである「スクラムマスター」ですが、需要の状況はどんなところなのでしょうか。スクラムマスターという名称自体、10年前はちらちら、20年前はほとんど聞かなかったものではないでしょうか。求人の職種欄にもなかったと思います。ところが、変化に適応して価値を提供することが重要になり、これまでの仕事の進め方では立ち行かなくなってきている危機感から、急速に需要が高まってきています。

スピード感やレベルはまちまちですが、「アジャイル」のマインドやフレームワークとしての「スクラム」を導入して、組織やプロセス自体の変革に取り組む動きが本格化し始めています。経済産業省や情報処理推進機構(IPA)もDXの推進を進める中で、アジャイルの活用を推進しています。

そこで、注目されている人材が「スクラムマスター」です。某求人サイトのデータですが、2021年の求人数と2025年の求人数の変化に注目してみてください。

スクラムマスターの求人数比較

インディード社の求人データによれば、

  • 2021年11月のスクラムマスター求人件数:493件
  • 2025年5月のスクラムマスター求人件数:4,513件

わずか3.5年で10倍近い数字なんです。この成長率、あまり見たことないですね。うーん、暗号資産?くらいでしょうか。

そこで思うのは、ここはまだ「ブルーオーシャン」ではないか、というポイントです。つまりレッドオーシャンになる前に人より先にやる「先んずれば人を制す」です。まだ参入者が少ないうちに入ってしまうこと。もちろん、その領域がその後成長しないかもしれないというリスクはあります。ただ、レッドオーシャンになって人の後から参入した場合は、美味しいところは残っておらず、参入障壁は高く、先住者がひしめいている、という状況です。

キャリアもビジネスも、投資対象を見極めることが鍵

どうせ自分の時間を使うなら、効率的にポジショニングを決めて、人より早くやること。同じ労力と時間を費やしても、初めのひとりと、後続の2番目、3番目ではその価値は大きく異なります。たとえば特許などもそうですよね。「スクラムマスター」を例にとりましたが、「プロダクトオーナー」も同様にアジャイルの重要な役割です。こうした人材や業界の需要を見越して、早めに動くこと、これは「変化をチャンスに!変えること」と考えられないでしょうか?

自分の時間あるいは法人として、限られた時間やリソースをどこに使って(投資して)勝ち抜くか、これは戦略的に大きな違いを生む判断になるのではないでしょうか。

今回は、アジャイル人材「スクラムマスター」の需要の高成長率の事実から考察してみました。“アジャイル”という概念を単なる開発手法にとどめず、戦略的な投資対象として、自分のキャリア、自社の成長など、考えてみませんか?


アジャイル研修
https://www.i-learning.jp/service/projectmngmnt/topics/agile.html

 



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DX時代をけん引する人材を育てるための戦略

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