メタエンジニアの戯言 : i-Learning アイ・ラーニング

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松林弘治のコラム メタエンジニアの戯言

 2022年5月11日

vol.50 ポストコロナ禍を見据えたシン・リモートワーク?

2022年春の大型連休、3年ぶりになんの行動制限もなく過ごせた貴重な日々となりましたね。テレビなど報道では、高速道路や各地の観光地はどこも久方ぶりの大混雑とのことでした。わたしはずっと都内郊外でテニス三昧の日々でしたが(笑)

さて、コロナ禍が始まってからすでに2年以上が経過、仕事のしかたもずいぶんと変わってしまった方が多いのではないでしょうか。私自身も、そして私が観測できる範囲でも、打ち合わせはほぼリモートで行われ、ソフトウェア開発でもペアプロ/モブプロ(2人〜複数人で一緒にひとつのプログラムを書く作業)もリモートで行うようになりました。職場への通勤、打ち合わせ先への移動は徐々に戻りつつありますが、リモートがデフォルトになった、という実感があります(もちろん業種や企業によって違いはあるとは思いますが)。

ソフトウェア開発者は、従来からリモートでの共同作業に慣れている場合が多く、コミュニケーションもテキストやデータ志向であり、「開発」そのものに閉じている分には、コロナ禍になっても生産性という点ではあまり問題を感じない場合が多かったかもしれません。

問題は、プロジェクトオーナを含めた、非エンジニアの方々とのコミュニケーションです。

2020年3月頃まで頻繁に行われていた対面でのミーティングも随分と減ってしまい、打ち合わせのほとんどが(以前から要所要所で使っていたとはいえ) zoom や Slack などによるオンラインコミュニケーションへと移行していきました。

エンジニア側からすると、リモートワークは移動時間が節約され、開発に最大限時間を割けますし、打ち合わせ時間もコンパクトになり、効率化がますます進みますので、いいことだらけのようにも思えます。ですが、一歩引いてプロジェクト全体として眺めてみると、徐々にではありますが、ギクシャクとした雰囲気があちこちで出始め、生産性にも影響が出かねない、そんな気がしたのです。しばらくは様子見をみていたのですが、やはりどこかおかしい、という思いが日に日に強まっていきました。

ということで、動くことにしました。プロジェクトオーナ側の上の立場の方々に直接面談させていただき、かくかくしかじか、短期的にも中長期的にも問題であると直談判し、そこから開発者側とプロジェクトオーナ側が協力して状況改善のために動き出すことになりました。

端的にいうと、プロジェクトに関わる皆が、コロナ禍を通じて効率化を進め、仕事を着実にこなし続けたことはよかったが、いうなれば「遊び」「余裕」が減ってしまっていた、ということです。結果、企業間、開発担当間、個々人の間で、意思疎通が表面的になってしまい、疑心暗鬼を抱えたり、勝手な推測で進んでしまうことも出始めていた、ということです。当該プロジェクトでは、コロナ禍前まではとてもいい雰囲気で進められていたので、よくない兆候がますます目立ったともいえます。

その後、オンラインミーティングの前後に、オンライン雑談タイムを設けたり、現在気になっている点を(開発内容に直接関係ないことであっても)実直に話し合う時間を設けたりしました。さらには、大型連休前に、皆の希望により(笑)数年ぶりの対面の飲み会も有志で実施されました。そういった中から、風通しが再びよくなり、疑心暗鬼も減り、チーム全体で前向きに開発していける、そんな雰囲気作りに向けて動き出せたように実感しています。

いままでは表情や声色、場の雰囲気などから得られていた「非言語的情報」「コミュニケーションにおける潤滑油的なもの」が大幅に欠落してしまうと、時を経るごとに意図せず意識のずれが生じる恐れもあるのでは、ということを強く実感しました。

今後コロナ禍が去ったとしても、リモートワーク、オンライン会議などはなくなることはないでしょう。そういう中で、対面にあってオンラインに欠けているのは何か、オンラインでの打ち合わせの時にどういった点に気をつけないといけないか、改めて広範囲な知見から再考し、試行し続けないと、と改めて認識した次第です。

松林 弘治 / リズマニング代表
大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期過程修了、博士後期課程中退。龍谷大学理工学部助手、レッドハット、ヴァインカーブを経て2014年12月より現職。コンサルティング、カスタムシステムの開発・構築、オープンソースに関する研究開発、書籍・原稿の執筆などを行う。Vine Linuxの開発団体Project Vine 副代表(2001年〜)。写真アプリ「インスタグラム」の日本語化に貢献。鮮文大学グローバルソフトウェア学科客員教授、株式会社アーテックの社外技術顧問を歴任。デジタルハリウッド大学院講義のゲスト講師も務める。著書に「子どもを億万長者にしたければプログラミングの基礎を教えなさい」(KADOKAWA)、「プログラミングは最強のビジネススキルである」(KADOKAWA)、「シン・デジタル教育」(かんき出版)など多数。