メタエンジニアの戯言 : i-Learning アイ・ラーニング

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松林弘治のコラム メタエンジニアの戯言

 2022年2月9日

vol.47 エンジニア的な思考法がテニスにも役立つ?

前回のコラムの最後は「今年こそは何かの『役に立つ』ことができますように」でしたが、なんとコラム公開直後、さっそく「なにがしかの役に立った感」を経験することができました(笑)ので、そのエピソードを。

学生の頃からそれなりにやっていたテニスですが、いまから17年ほど前、本格的に取り組み直したい、もっと上達したい、と思い立ちました。当時住んでいたすぐ近所に有名なテニススクールがたまたまあったので、そこに通ってみることにしました。

腕利きコーチ陣を揃えるそのスクールの中に、当時もっとも若手で、肌も真っ黒に日焼けし、いつも元気に指導してくれるコーチがいました。通常は1クラス8人程度なので、ダブルス練習が主だったのですが、たまたま生徒が少ない日はシングルス練習をしてくれたりして、へたっぴなりにシングルスが好きな私は本当に助かりました。

その後2年ほどしてスクールをやめたため、その方とはしばらく連絡をとることもなかったのですが、10年ほど前にFacebook上で久々に再会したときには、なんとそのコーチ、海外プロテニス選手やプロ志望ジュニア選手のプロコーチに転職され、世界中を忙しく飛び回っておられることを知り、びっくりしました。

そんな元スクールコーチ・現プロテニスコーチが、昨年末に突然ものすごく熱量に満ちたメッセージを私に送ってくれました。しかも、 昨年私が上梓した本を帰国直後の空港での隔離期間中に読み込んでくださり、その感想を熱く語ってくれているものでした。

なぜ、非エンジニアであるこの方が、テニスのコーチングとまるで関係なさそうな私の本に強く共感してくれたのか、最初は正直ピンときませんでした。もしかしたら、子育てという文脈なのかなぁ、と思ったり。ところが全然違ったのです。

なんと、テニスの戦略的攻撃パターンを考えさせる上で、日々の技術的なトレーニングのひとつひとつの意味と目的を考えさせる上で、そして試合中の選手のメンタルを補強する上で、エンジニア的な思考法、より一般的に言えば、科学的な方法論や論理的な思考となるのでしょうが、それがとても参考になった、というのです。さらには、拙書から得た知見を元に自分なりに新しいコーチング理論を構築したい、とまで。

テニスを含めたほとんどのスポーツは、瞬発力、持久力、効率的かつ一貫した身体動作、など、身体能力にまつわる要素が非常に大きいと認識しています。その一方、対戦相手との試合となれば、試合中の自分の調子や、相手のプレーの癖なども加味しつつ、論理的に戦術を組み立て実践し続けることが非常に重要です。そういう意味では、スポーツと科学・工学は、遠からず近からずなのかもしれません。

なにより私がとても驚いたのは、この方が、名だたるトップ選手を育て上げた世界レベルの名テニスコーチの書籍からだけではなく、エンジニアやお子さんを持つ保護者向けに書いたつもりの私の本からも、なにがしかの肯定的なインスピレーションを得てくださった、ということです。もちろん、身に余る光栄と言わざるを得ません。

すでにご自身の確固たる考えやポリシーを持っておられる。多くのことを自ら経験・体験し、謙虚に学び続ける姿勢を持っておられる。だからこそ、テニスとはまるで異なるジャンルの本からも、自らの主戦場で応用できるアイデアを読み取ることができる、ということなんだと思います。

昨年このコラムで書いた「思考のヒントは越境にあり?」をまさにそのまま実践されている、というわけです。こうやって「学び方の学び方」を身につけ、愚直に実践し続けられている方は、もちろん問答無用でサポートしたくなるものです(笑)

年明けにはお会いして直接いろんな話をする機会にも恵まれました。わたし自身のテニスは、相変わらずへなちょこアマチュアレベルのままですが、広義の「教育」「育成」「学び」というキーワードつながりで、プロテニスコーチと有意義な議論や意見交換ができたこと、本当に嬉しく思いました

1月末にアメリカ西海岸に帰っていかれたそのコーチとは、現在もオンライン上でいろんなやりとりを続けています。「アイデアや思考を整理したり共有したりするには、こんなツールも使えますよ」と紹介した、オンラインホワイトボード  Miroも、十二分に活用してくださっているようです。

この方から受けた刺激を契機に、わたしもますます専門外の知見を貪欲に吸収し続け、自らの主戦場であるエンジニアリングや教育などに応用し続けたい、と強く感じました。

Kさん、これからもますます応援し続けます。新しいコーチング理論が完成し、将来のトッププロ選手を育てあげられる日が来るのが本当に楽しみです。

松林 弘治 / リズマニング代表
大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期過程修了、博士後期課程中退。龍谷大学理工学部助手、レッドハット、ヴァインカーブを経て2014年12月より現職。コンサルティング、カスタムシステムの開発・構築、オープンソースに関する研究開発、書籍・原稿の執筆などを行う。Vine Linuxの開発団体Project Vine 副代表(2001年〜)。写真アプリ「インスタグラム」の日本語化に貢献。鮮文大学グローバルソフトウェア学科客員教授、株式会社アーテックの社外技術顧問を歴任。デジタルハリウッド大学院講義のゲスト講師も務める。著書に「子どもを億万長者にしたければプログラミングの基礎を教えなさい」(KADOKAWA)、「プログラミングは最強のビジネススキルである」(KADOKAWA)、「シン・デジタル教育」(かんき出版)など多数。