メタエンジニアの戯言 : i-Learning アイ・ラーニング

i-Learning 株式会社アイ・ラーニング



松林弘治のコラム メタエンジニアのの戯言

 2021年4月8日

vol.37「裏方こそ真の立役者」

朝7時開始の早朝テニスに向かう際、6時過ぎに家を出て、近所のコンビニに立ち寄り、サンドイッチやコーヒーなどを買います。駐車場ではトラックが停まっているのによく出くわし、荷台から店舗内に、パンやおにぎりなどさまざまな食材を運び入れている姿を目撃します。また、店内では店員さんが商品陳列や掃除など、忙しそうに働いておられます。

商品配送を行なってくださる方がいるから、商品を陳列し店内を綺麗に保ってくださる方がいるから、もっといえば商品を作ってくださる方がいるから、われわれはコンビニを便利に利用することができます。これはまごうことなき事実です。そして、「そんなの当たり前でしょう」と思う一方、えてして有り難みを忘れがちなのも事実です。

私が初めて単著を出版する際、担当編集者と幾度となく議論を重ね、時には議論以上ケンカ未満状態(笑)まで行き、想定分量を大幅に超える原稿を巧みに調理してくれ、最終的に双方納得いくコンテンツにこぎつけました。私にとっては、彼を共著にしてしかるべき、という位、彼の多大なる貢献に感謝していますが、それを示すのは同じく的確な仕事をして下さった「図版」「校正」の方へのクレジットと並び、小さなフォントで印刷された「編集」の箇所だけです。

仲間著者名として特定の1名の名前が出ているとしても、その本を作り上げ世に出すにはたくさんの人の協力なしではありえません。そんな、一緒に作り上げた「仲間」のような皆さんの名前が、こんな目立たないところに小さく印刷されているだけだなんて…、と、最終校正PDFを目にした時に本当に落ち込みました。

営業、企画、経理、などなど、ビジネスの現場においてもやはりそれは同じです。特に私が最も関わることの多いソフトウェア開発においてもしかり。実際にコードを書き、デプロイし、保守管理を行う、そういった個々人やチームの貢献はあまり日の目をみることはなく、実際にはプロジェクトオーナーやプロジェクトリーダー、あるいは企業名のみがとりあげられます。

高校生の頃だったか、授業中に先生のこんな話を聞いたことを思い出します。「東大寺建立に尽力したのは聖武天皇や良弁かも知れんが、本当の立役者は、当時の名もなき多くの職人さんたちだ。」

もちろん、ビジョンの提示、意思決定、合意形成への尽力、など、上流の果たす役割と貢献は非常に大きいものです。ですが、それと同じように、実際に現場で頑張ってくれている方々がいるからこそ、そのビジョンを現実化できることもまた忘れてはなりません。

さて、私の当該コラムは月1回の掲載で、今回で37本目となりました。この3年間、毎回原稿を隅々までチェックし、限られたスケジュールの中的確に校正し続けて下さった方がいるから、こうやってコラムをお届けできているわけですが、その方が今回を最後に担当を退かれる、と連絡を受けました。高橋さん、いままで支えて下さって本当にありがとうございます。今後のご活躍を心より願っております。

松林 弘治 / リズマニング代表
大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期過程修了、博士後期課程中退。龍谷大学理工学部助手、レッドハット、ヴァインカーブを経て2014年12月より現職。コンサルティング、カスタムシステムの開発・構築、オープンソースに関する研究開発、書籍・原稿の執筆などを行う。Vine Linuxの開発団体Project Vine 副代表(2001年〜)。写真アプリ「インスタグラム」の日本語化に貢献。鮮文大学グローバルソフトウェア学科客員教授、株式会社アーテックの社外技術顧問を歴任。デジタルハリウッド大学院講義のゲスト講師も務める。著書に「子どもを億万長者にしたければプログラミングの基礎を教えなさい」(KADOKAWA)、「プログラミングは最強のビジネススキルである」(KADOKAWA)、「シン・デジタル教育」(かんき出版)など多数。