メタエンジニアの戯言 : i-Learning アイ・ラーニング

i-Learning 株式会社アイ・ラーニング



松林弘治のコラム メタエンジニアのの戯言

 2021年2月4日

vol.35「思考のヒントは越境にあり?」

あっという間に1月も終わってしまいました。新型コロナ禍のせいもあるにせよ、齢を重ねれば重ねるほど、時間があっという間に経過してしまう経験や実感は、みなさんもお持ちだと思います。「時間経過の体感的な速さは、年齢に比例する(あるいは「遅さは年齢に反比例する)」という、まことしやかな説を聞いたこともあります。

実際には「知覚する刺激の量」や「代謝」など、さまざまな要素が体感時間を左右すると考えられているそうです。なるほどですね。

「今年、時間の流れ早すぎない?」コロナ禍で変わる時間感覚。「時」の専門家に聞く
https://www.businessinsider.jp/post-218789

「さて、そんなあっという間に過ぎてしまった1月ですが、私は2月中旬に予定されている講演(この時期にしては珍しく、オンラインではなくオンサイトでの開催)の下準備をしていました。業務の効率化や自動化、およびそれに 伴うリテラシーや思考法について話をする機会をいただきました。

その準備を兼ねて、いろんな本に目を通していたのですが、その中でも1冊に目がとまりました。「そうそう、言いたいことはまさにこれなんだよ、簡潔にうまくまとめられているなぁ、この著者さん」とニコニコしながらうなずいていました。

『無駄な仕事が全部消える超効率ハック』羽田康祐 k_bird(著)ISBN 4866800984
https://amzn.to/3iUd8F7

ビジネス書や啓発書といったジャンルは、あまり積極的に読まないクチなのですが、うまく要約して論理的に書かれているなぁ、と思いました。それにしても、内容がとても既視感があるような。

考える「受動的な時間→主体的な時間」という項は、新学習指導要領の「主体的な学び」という用語を想起させます。また、「情報量→思考力」という項で挙げられている「ロジカルシンキング」「クリティカルシンキング」「概念化思考」「アナロジー思考」などは、そのまま「コンピュテーショナル・シンキング」の置き換え・翻訳と取れそうな思考法です。「1人で考える→みんなで考える」などの項も、「ペアプログラミング」「モブプログラミング」「対話的な学び」といったキーワードとの近似性がみてとれます。その他、1983年に出版され驚異的なロングセラーとして有名な、外山滋比古氏による名著『思考の整理学』のエッセンスに近いセンスも随所に感じられます。

『思考の整理学』外山滋比古(著)ISBN 4480020470
https://amzn.to/2MwNpGw

私が思ったのは、つまりこういうことです。ある特定の分野では自明であったり、すでに広く知られているものごとであっても、その分野以外ではまだ知られていないことがたくさんあります。分野の境界を超えて「越境」することで、ある分野での知見を他の異なる分野でも応用・活用・発展させられることは、本当にたくさんあるはずです。そして、あらゆる業種・業界・分野を超えて有益な、メタな知見や知恵が存在するはずです。

だからこそ、今回のように、ビジネスパーソン向け書籍の中に、情報工学、ICT教育、ソフトウェア開発手法、その他さまざまな分野で知られている知見や思考法(に近いもの)を見つけることができたのだと思います。

仕事でも、日常生活でも、学びでも、教育でも、さらに趣味においても、一見関係ないと思われる別分野から得られる知見を、自分なりに咀嚼し発展させて、ますます活用していきたい。そのような月並みな思いを改めて強くした当該コラム原稿締切日(笑)の午前でありました。

松林 弘治 / リズマニング代表
大阪大学大学院基礎工学研究科博士前期過程修了、博士後期課程中退。龍谷大学理工学部助手、レッドハット、ヴァインカーブを経て2014年12月より現職。コンサルティング、カスタムシステムの開発・構築、オープンソースに関する研究開発、書籍・原稿の執筆などを行う。Vine Linuxの開発団体Project Vine 副代表(2001年〜)。写真アプリ「インスタグラム」の日本語化に貢献。鮮文大学グローバルソフトウェア学科客員教授、株式会社アーテックの社外技術顧問を歴任。デジタルハリウッド大学院講義のゲスト講師も務める。著書に「子どもを億万長者にしたければプログラミングの基礎を教えなさい」(KADOKAWA)、「プログラミングは最強のビジネススキルである」(KADOKAWA)、「シン・デジタル教育」(かんき出版)など多数。