家の鍵・・・それを最初に手にしたのはいつの頃だったろうか。
たぶん小学生に入学したかその少し後の頃、夕ご飯の時だったと思う。
厳格な父親から「お前も鍵ぐらい持っていなさい!」といきなり手渡された小さな鉄の部品。子供心に無くしたら大変だという思いと、家の一部分を任されたという思いでどきどきしたのを覚えている。おかげさまであれから数十年、結婚して引越ししてまた引越しして、家を買って・・・持つ鍵は何度か変わったけれど一度も無くさずに今まで来た。気がつくと自分も数年前に自分の子供に「鍵くらい持っていなさい」とコピーを作って手渡したのを思い出した。やっぱりそれは夕ご飯の時だった。家族がそろう大切な時間・・・その時に直接彼女の小さな手に手渡したのだった。家族は皆同じ鍵を持っている。私も嫁さんも娘も、みんな同じ鍵を持っている。みんなが持っている同じもの、それが小さな部品、家の鍵だ。
今改めて考えてみると、家の鍵を共有する方法、言い換えれば配布の方法は手渡しが一番安全であることに間違いないだろう。もし手渡しが出来なかったら、どうやって家族で同じ鍵を持ち合ったらいいのだろう?
書留郵便で娘に鍵を送る?現実的じゃない。
安全に配布ができて、かつ、鍵を無くさないのが絶対条件で、私が鍵をかけて出かけて嫁さんが帰宅して鍵を開ける・・・ということが可能になるのだから。
今でも鄙びた温泉街の旅館などに宿泊すると、和室の隅、テレビの横あたりにダイヤル式の金庫が置かれていたりする。重い鉄で出来ていて、たぶん火事にも耐えられそうな金庫。(果たして使う人はいるのか??)旅館では時々見かけるけど、自宅に買おうとは正直思わない。重いし、カッコ悪いし、何よりそこに入れるべきものが思いつかない。でもセキュリティ的には完璧に近いものがあると思う。
最初に開錠の仕組みを自分で設定すれば、後は誰にも開けられる心配は無い。
開けられるのは自分だけだ・・・右に3回、左に2回、3メモリ進んで、2メモリ戻る・・・なんてね。
それに反してダイヤル式金庫は誰でも簡単にロックできる。金庫の扉を閉めてダイヤルを適当に(そう、てきとぉーに)回せばオーケーだ。誰でも施錠できて、開錠できるのは1人だけ・・・これって素晴らしい「鍵」じゃないか!
家の鍵は右に回して施錠したら、左に回して開錠する。施錠するときと開錠するときは同じ「鍵」を使う。金庫はてきとぉーに回して施錠したら、特殊な回し方をして開錠する。施錠するときの「てきとぉー」と開錠するときの「右に3回、左に2回、3メモリ進んで、2メモリ戻る」は違う「鍵」ということだ。
❶は暗号と復号に同じデータを使うもので、❷は暗号と復号に異なるデータを使うものだ。もしみなさんがこのあたりに興味をもったなら是非セキュリティの世界にお越しください。素晴らしき暗号の世界をコースの中でご説明させて頂きます。