インストラクターの独り言 : i-Learning アイ・ラーニング

i-Learning 株式会社アイ・ラーニング

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インストラクターの独り言

 2022年9月26日

お手軽プログラミングを始めよう

進むICT・デジタル教育の波

この数年、学校での情報教育が急速に進んでいます。
もともと日本の学校教育では、諸外国に比べると、ICTやデジタル技術の活用にあまり積極的ではありませんでした。たとえばOECD加盟国を中心に3年毎に実施される国際的な学習到達度調査・PISAでも、日本のインターネット利用やデジタル機器の活用の度合いが、他国に比べて極めて低いことが明らかになっています。
(参考:国立教育政策研究所  https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/index.html

ところが、これまでの遅れを挽回すべしということでしょうか。にわかにICT・デジタル教育の大波が巻き起こっています。
・学習指導要領における情報教育の重点化
・GIGAスクール構想
・2025年からの大学入学共通テストへの「情報」の新設
日々のニュースでもこうした話題が取り上げられることが珍しくありません。さまざまな場所・場面でICT教育熱が高まっていることを感じます。

次の世代のデジタル・リテラシーと旧世代のスキルギャップ

おそらく10年後の未来は、当たり前にデジタル・リテラシーを身につけた世代が社会に参加しているはずです。その未来図には期待が膨らむものの、一方で、気になるのが私たち旧世代の知識とスキルです。
スマホやタブレットはそこそこ利用していても、ICTやデジタルといったものに苦手意識をもっている方もいるのではないでしょうか。
プログラマやSEとして専門教育を受けてきた方々は別として、これまでこれといってICT・デジタル教育を受けたことがないという方も少なくないと思います。
いずれデジタル・リテラシーをしっかりと習得した世代とともに働くことになるわけですから、そのまま我が道を行くというわけにもいかないでしょう。

"いまさら"でも始めたいデジタル・スキルの学習

ICT・デジタル技術の知識やスキルを身につけるといっても、なにから始めればよいのでしょうか。
業務上必要なものは、仕事を通して否が応でも習得していると思います。しかしそれらは特定のツール・ソフトウェアの操作など、限られたスキルになりがちです。必要最低限のもので、使いこなしているとはいえない、むしろ使われているくらいに感じている方もいるかもしれません。
より本質的なデジタル・スキルを習得しておけば、この先使用するツールやトレンドが変わっても、自分を支える力になります。

では、本質的なデジタル・スキルとは何でしょうか。
独断と偏見ですが、それは、プログラミング・スキルです。

プログラミングを学ぶ

といっても、プログラミングは長期間の専門教育が必要で、未経験者がおいそれと手を出すものではないという先入観があるかもしれません。たしかに本格的な業務システムで使われているようなプログラミングのスキルは、それなりの時間やコストを投じてようやく習得するようなもので、軽々しくすぐに身につきますとはいえません。
しかしここではそうしたプログラマを育成するための話ではなく、あくまで汎用的なデジタル・スキルの基礎としてのプログラミングです。
学習に要する時間は1日か2日程度。週末に少し時間を作って取り組むことができるレベルのお話です。

micro:bit

イギリスの公共放送BBCが教育用に開発したシングルボードコンピュータmicro:bitをご紹介します。このコンピュータは、2016年にイギリスのすべての7年生(日本の中学1年生に相当)に配布されるようになりました。

手のひらに載るほどの小さなコンピュータですが、光センサーを兼ねたLED、加速度センサー、地磁気センサー、温度センサーなどを備えています。
micro:bit本体だけであれば3千円台、いろいろなアクセサリを同梱したキットであれば5千円台から7千円くらいまでで購入できます。
プログラミングはmicro:bit上ではなく、PCのWebブラウザやスマートフォン・タブレットのアプリで行う、クロス開発方式です。
プログラミングは、JavaScriptやPythonといった本格的なプログラミング言語を利用することもできますが、おすすめはビジュアルプログラミング環境のMakeCodeです。

MakeCode

MakeCodeはMicrosoftが開発したプログラミング環境です。詳しいことは、公式サイト( https://www.microsoft.com/ja-jp/makecode)にアクセスしていただくのがてっとり早いのですが、図をみていただくと雰囲気が伝わるのではないでしょうか。
左側に本物さながらに動くmicro:bitのシミュレータ、右側にプログラムを作るためのエディタ領域が表示されます。

たとえばLEDをハート形に点灯させたいときは、次のようにプログラムをセットします。

プログラミングした結果がすぐにその場で実行できるので、正しくプログラムを書けたかどうかのフィードバックが即時に得られます。
自分の書いたプログラムに対するフィードバックが速いというのがこの環境の特徴です。
このことは、プログラミング学習では非常に重要なポイントです。直観的にプログラムの構造や仕様を習得しやすく、学習コストを下げる効果があります。
実はmicro:bitがなくても、MakeCodeさえあればプログラミングは可能です。micro:bitで動かした方が楽しいとは思いますが、まずは少し試してみたいということであれば、ブラウザさえあれば始められるMakeCodeからチャレンジしても良いかもしれません。

お手軽プログラミングの効用

プログラミング・スキルを身につけると、ICT・デジタル技術に関する理解が一気に深まります。プログラミングの習得は、コンピュータがどのように動作しているのかを知る、言うなれば「コンピュータの思考」を身につけることにつながります。
micro:bitやMakeCodeのプログラミングはあくまで教育用・学習用で、これができるからといって、直ちにビジネスに役立つわけではありません。
それでもこうしたプログラミングに慣れていると、次第にコンピュータ・システムやアプリケーションの裏側に想像が及ぶようになります。そして、コンピュータにも得手不得手があることやデジタル技術の活かし方が理解しやすくなるはずです。

デジタル・トランスフォーメーション、デジタル変革が盛んに叫ばれる昨今ですが、技術を使うのは人間です。
デジタル・スキルを身につけることで、変革の大波に出逢っても、その波を乗りこなし、自分の味方につけることができるのではないでしょうか。

島岡 弾 (株式会社アイ・ラーニング 人財育成アドバイザリー本部)
システムエンジニアとして分析、設計、実装にわたる経験を重ねた後、アプリケーション開発者、インフラエンジニア等を中心に技術者育成に従事。
アイ・ラーニングでは、クラウドコンピューティング、AI分野のコース開発に携わるほか、現在はデジタルビジネス人財の育成に関する研修を企画中。
ストレングスファインダーTop5は収集心・着想・内省・慎重さ・学習欲。