空を見上げてドローンを数える日
「ドローン」といえば、どんなイメージが浮かびますか?
・モーター(プロペラ)が沢山ついていて、カメラもついてる空飛ぶラジコン。
・テレビのニュースで物を運ぶ実証実験が報道されていて、これからは普及してきそう。
そんなイメージでしょうか。
あるいは、もうすでにドローンを使用したソリューションに携わっている方もいるかもしれませんね。
現在ドローンは、テレビや映画などでの空撮の他、ビル・橋梁・工場の設備や太陽光パネルなどの点検、農薬散布、過疎地での物流など、さまざまな産業に利用範囲が広がりつつあります。
また、自然災害時の被災者の発見や救助、地方の病院に薬品を素早く届けるサービスなど、社会課題の解決の場でも活躍が期待されています。
ところが、日常生活でドローンが飛んでいるところを目にすることはまだまだ少ないと思います。
それはなぜでしょうか。一言でいえば車の自動運転と同じように、危険が伴い安全対策が欠かせないから、ということになるかと思います。
一般的によく見かけるのは、ヘリコプターに似た感じでプロペラが4つある、といったものでしょう。ドローンは、マルチコプターとも呼ばれるようにモーター(+プロペラ)が複数ついていて、小回りが利き、複雑な動きや機動性に優れています。
しかしその反面、非常に不安定です。モーターが故障したり、障害物に触れたりして1つでもプロペラが止まると、バランスを失い即座にひっくり返って墜落してしまいます。おもちゃのドローンを家の中で飛ばし、壁にプロペラを触れさせた私は、これまで何百回も墜落させています。
私自身ドローンに興味を持ち、操縦や安全管理の講習まで受けました。そして実際に飛ばしてみることで、難しさや危険性、またどのような対策があるのかということにも気づきました。また、普段仕事で教育に携わっていますが、講習での知識取得や実技訓練の大切さ、そして経験から学ぶことの大切さにも改めて気づくことができました。
そこで、ドローンの安全性に関して、私の気づきの一部を共有させていただきたいと思います。
①墜落したらどうするの?
物流で使うドローンを考えてみましょう。荷物の他にドローン自体の重さが数十キロもありますので、街中や住宅地で墜落したら大事故につながりかねません。
え、それじゃダメじゃん、と思われるかもしれませんが対策はあります。
モーターが6つ以上あるドローンは冗長化されているため、モーターが1つ止まったぐらいでは墜落しないようにできています。ですから物流でも使用することができるのです。
②止まったらどうするの?
車がガス欠を起こすと止まるように、ドローンがバッテリー切れを起こしてしまったら墜落します。
え、それじゃダメじゃん、と思われるかもしれませんが対策はあります。
私が海や山で写真の撮影に使用している小さなドローンは、スマートフォンのアプリで機体が管理されていて、バッテリー残量が少なくなるとアプリの画面に警告メッセージが表示されます。さらにその10秒後には、なんと機体が自動帰還を始めます。GPS信号を頼りに離陸した地点に戻ってくるのです。
なお、これをキャンセルして写真撮影を続けることもできます。ですが私は、墜落の恐怖には勝てず、早めに帰還させるようにしています。
③見失ったらどうするの?
ドローンで写真撮影を行っていると、遠くまで飛ばして沢山写真を撮りたくなります。ドローンは100メートルも離れると肉眼ではほぼ見えないため、スマートフォンの画面に送られてくるカメラの映像だけが頼りです。この時怖いのが、信号ロストです。
遠くに飛ばしすぎたり途中に障害物や電波障害があったりすると、ドローンの機体と手元のスマホや送信機の接続が切れることがあります。これが信号ロストです。そうすると操作不能になり、さらにはスマホの画面の映像が消えるため、機体がどこにあるのか、どちらの方向に向かっているのかさえも分からず、完全にお手上げの状態になります。
え、それじゃダメじゃん、と思われるかもしれませんが対策はあります。
機体側では、10秒間待って通信が回復しないと、自動帰還を開始するのです。
私が初めて信号ロストを経験したときは、突然画面は真っ黒、頭の中は真っ白になりました。この時まだこの機能の存在を知らず(研修で習ったけど忘れていたのか?)、何かに衝突して墜落するのではないかと恐れ、フリーズしていました。しばらくの間私は真っ暗な画面を絶望的な気持ちで見つめ、氷のように冷たい時間が流れるのを感じていました。
と、突然画面に映像が戻り、あの『はやぶさ』のように奇跡の帰還を始めていることを知りました(奇跡でもなんでもないのですが)。機体が送信機に近づいたことで信号ロストが解消され、操作もできるようになり「助かった、俺は生きている」と思いました(私の心と身体は機体に乗り移っていたと理解してください)。
さて、日本でのドローンの活用は官民協議会で以下の4つレベルで定義されています。
■レベル1:目視内での操縦飛行
■レベル2:目視内飛行(自動・自律飛行)
■レベル3:無人地帯(山、海水域、河川、森林等)での目視外飛行(補助者なし)
■レベル4:有人地帯(第三者上空)での目視外飛行(補助者なし)
過疎地での物流がレベル3に相当し、当記事執筆時点(2021年12月)ですでに実現されています。そして、2022年中にレベル4を実現すべく、より安全な運航のための法律の整備や技術開発がすすめられています。
これが実現すれば街中や住宅地など私たちが生活している上空でも、産業用ドローンが飛ぶところを目にすることが多くなるでしょう。
すると「今日はドローンを3つ見た」、「私は5つ見つけたよ」というような会話を聞くようになり、上を向いて歩く人がもっと増えていくことでしょう。