きっかけがあれば
人は果たして「自ら学ぶ」のだろうか
私が担当している、マイクロラーニングサイト『マイラ』(動画コンテンツサービス)のコンセプトは「自ら学ぼう!」です。なので、いつもこの問いに向き合っています。
お客様、主に人事部の方とお話しする機会があるのですが、よく聞かれるのは「『自ら学ぶカルチャー』を社内で醸成したいのですが、何か良いヒントはないでしょうか?」といったものです。私は、正直正解はないのですが...とまずはお答えしています。
学生時代の試験勉強は、自ら学んでいたと言えるかもしれません。けれどもそれは「合格」という目標に向かっていたからこそです。そうしたハードルのない環境では、人は自ら学ぶことは難しいのかもしれません。
いやいや、アルベルト・アインシュタインは次のような言葉を残しています。
“The more I learn, the more I realize I don’t know. The more I realize I don’t know, the more I want to learn.”
(学べば学ぶほど、自分がどれだけ無知であるか思い知らされる。自分の無知に気づけば気づくほど、より一層学びたくなる)
僭越ながら、私自身を例にして学習意欲について考えてみたいと思います。
私の趣味は時代小説を読むことです。主人公に感情移入して物語を読み終えた後には必ず、彼らを取り巻く時代背景が気になります。江戸時代の下級武士たちの暮らしや町人たちの生き様。どんな仕事をしてどの程度豊だったのか。さらには当時の将軍は誰でどんな政(まつりごと)をしていたのかなど、次々に知りたくなってくるのです。興味のある分野ならこんな風に、誰に言われなくても人はどんどん学ぼうとします。
一方、学生時代に勉強せざるを得なかった苦手科目はこうはいきません。社会人になってからも、そう。上司に指示されたもの、ビジネスに不可欠だからという理由で興味の持てない内容に無理をして取り組んだものは散々です。
みなさんも、そんなご経験おありではないですか?
けれども、「学びたい」「学ぶことで成長したい」という思いは、多くのビジネスパーソンが潜在意識として持っていると、私は信じています。
『マイラ』の動画コンテンツで学んでいるあるITエンジニアの方は、おそらく会社からの指示で、仕事関連の「Java入門」を受講しておられます。けれど、その方はそれ以外にも「ストレスマネジメント─基本編」や「早わかり!松下幸之助の経営哲学を学ぶ」などのコンテンツを幅広くご覧になっています。
「Java入門」を学ぶ途中に、画面の中のサムネイルに偶然目を引かれたのか、あるいはちょっとした気分転換を求めて検索されたのかはわかりませんが、いずれにしても『マイラ』の「Java入門」の学習が、別の学びへの興味のきっかけとなり、学習への動機付けとなったことは確かです。
この方はもしかしたらこの後、さらに別の動画や関連書籍にも手を伸ばしたかもしれない。それを想像するとこちらも楽しくなってきます。学べる環境とちょっとしたきっかけがあれば、人は「自ら学ぶ」。そして「新しい知的な出会い」は人に学びを与え、成長を促す。そう考えてもよいのではないでしょうか。
変化の激しい先の見えない時代だからこそ、個々人が「受け身」の学びから「自ら学ぶ」へ飛躍できるようになっていって欲しいと願っています。
再び私事ですが、最近出会ったのは「毎日食べたい野菜のレシピ」です。近所の図書館を一周するうち、ふと目に付いたので手に取ってみたものです。これまで関心の薄かった分野ですが、なかなか楽しく読んでいます。
そこには自分の知らなかった世界が広がっていて、知的な興奮を感じることができます。そしてその分野について更に深く知りたくなり、今週末には同じジャンルの別の本を探してみようと、今楽しみにしているところです。