インストラクターの独り言 : i-Learning アイ・ラーニング

i-Learning 株式会社アイ・ラーニング

i-Learning 株式会社アイ・ラーニング



インストラクターの独り言

 2021年10月27日

教育の「場」におけるリーダーシップ

街中の書店でもWebでも、相変わらず「リーダー論」や「リーダーシップ論」は盛況の体を示しています。
特にリーダーシップ論では、社会的な背景やその時代に生きる人の価値観、あるいは仕事で求められる能力などによって、求められるリーダーシップ像が変化してきました。俯瞰的な見方をするとリーダーシップにおいては、最も優れたそして絶対的な解が存在するわけではないということです。
最近の学説においては、近年のリーダーシップには二つの大きなシフトが見られます。一つ目は「個人が導く」から「集団を活かす」へのシフトで、二つ目は「権限による支配」から「信頼による支援」へのシフトです。これは、どのようなリーダーシップが適切なのかは、個々人の置かれている状況に依存するとも言うことができるでしょう。特に、新型コロナウイルス感染症の対応において「危機(下)のリーダーシップ」として様々な観点から指摘・分析されていることからもお判りだと思います。

新型コロナウイルス感染症により在宅勤務を強いられる中にあって、改めて古典的名著である『本物のリーダーとは何か』(著者:ウォレン・ベニス、バート・ナナス)を読み返すと、40年近く前に書かれた本とは思えないくらい今の状況に当てはまることが多いと感じました。
その中から幾つかのキーワードを紹介したいと思います。

さて続けて、ビジネスの世界とは異なり、教育の「場」でどのように「リーダーシップ論/リーダーシップ教育」を展開しているのかについて紹介しましょう。

A. 青少年赤十字(日本赤十字社の指導の下、幼稚園から高等学校、特別支援学校等の中に組織化され、学校・幼稚園の先生や保育所の保育士が指導者)のリーダーシップ教育
  • リーダーシップ・トレーニング・センターは、青少年赤十字の最も特徴ある教育プログラムの一つで、集団生活を伴う学習活動の場
  • 青少年赤十字メンバーは、ここでリーダーとして必要な自主・自律の精神を身につけ、赤十字および青少年赤十字に関する知識や技術への理解を深め、生活態度全般にわたっての学びを深めていきます
  • 昨年は、コロナウイルス感染症の影響で合宿を伴うプログラムは中止となりましたが、早期の再開が望まれています

B. 大学教育の中でのリーダーシップ教育
  • ここ数年、大学教育のプログラムとしてリーダーシップ教育が新たに取り組まれています
  • 東京工業大学、早稲田大学、慶応大学、立教大学や愛媛大学等が代表的事例として取り上げられています
  • また2013年からは、学部1年から3年までの女子学生を対象として、TOMODACHI イニシアチブとメットライフ生命とのパートナーシップにより「TOMODACHI MetLife Women’s Leadership Program」が始まり、すでに300名以上が参加
C. 外国人留学生の就職活動とリーダーシップ教育
  • 就活の事前準備として、日本の企業におけるリーダーシップの捉え方と欧米との差について学ぶ
  • 特に、就活時の面接試験において「リーダーシップ」の単語での質問が多いため
  • コロナ禍での模擬面接を手掛けましたが、多い質問の一つとしてこのリーダーシップ論が問いかけられました
D. 小学校におけるリーダーシップ教育
  • 書籍『7つの習慣』(著者 : スティーブン・R・コヴィー)は、世界的なベストセラーになり、書籍を基に数多くの研修プログラムも展開されています
  • 更に、この書籍は学校向けに開発され、「The Leader In Me :リーダー・イン・ミー」というリーダーシップ教育のプログラムとして、全世界で32カ国4,000校の教育機関に採用されています。日本でも小学校をはじめ、中学校、高等学校で採用されています
このように教育の「場」でも「リーダーシップ論/リーダーシップ教育」の重要性が認知され、小学校から大学まで幅広い年齢層に対してそれぞれが十二分に考え抜かれた教育プログラムが次々と展開されています。

「リーダーシップ力」は、特定の方が持つべきスキルではなく「すべての人が後天的に保持できるスキル」であり、その獲得のためには二つのアプローチが必要です。一つは、とにかく若いうちから理論を知り実践すること、もう一つは、リーダーシップを発揮する体験から学ぶというサイクルを廻すことです。

経済・社会における大きな変化やイノベーションの波も大きく、これまで通用した羅針盤では対応できない時代になっています。企業においてもこれまでのリーダー像では乗り越えられない時代がやってきています。柔軟性をもち、素早い判断力で成果を上げるために「危機にも強い」リーダーが必要となる時代になったといえるでしょう。

鈴木信隆(株式会社アイ・ラーニング サービス企画本部 シニア・インストラクター)
グローバルIT企業にて39年勤務。金融・流通業にてお客様担当営業や営業管理職を経験。親会社アジア地域、本社営業部門等のオペレーション部門管理者や子会社役員を経験し、その経験や知見を通じて、「営業」が、一人一人輝ける人財に成長するように支援を実施。「営業としてお客様と会社のバランスは、51:49」を営業に求めている。2017年より現職。