インストラクターの独り言 : i-Learning アイ・ラーニング

i-Learning 株式会社アイ・ラーニング

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インストラクターの独り言

 2021年6月23日

「使える」スキルを身につけるためには

私が研修の世界を志したきっかけは、入社間もないころに受講した「情況対応能力セミナー」という研修である。

部門単位で参加したこの研修は、元になる理論もさることながら、巧みな講師のファシリテーションを背景に、様々な演習が盛り込まれていて、動画あり、お絵描きあり、ロールプレイあり、上司や先輩とのディスカッションありで、とても楽しく、あっという間の3日間だった。
仕事に戻ってからもたびたびこの研修の内容について部門の人たちと考え、飲みに行ってもこの話で盛り上がった。

研修とはなんと楽しく役に立つものなんだろう。そう思った。

■ 「人」には答えがない

それから20年ほどたったころ、自分の後半のキャリアを考える機会があった。そのとき迷わず考えたのが「ヒューマンスキルの講師」。そして運よく今の仕事に就いたのだ。

ヒューマンスキルの特徴は、その言葉通り「人」をテーマにしていることである。
例えば、「仕訳のスキル」、「Pythonのスキル」などは「しくみや物事」を対象にしており、「しくみや物事」は基本的に普遍的な定理や法則、理論、法律、社会的通念などに基づいていて、答えのあるものだ。なので勝手に「私は貸借対照表において、右側を借方にする」とはできないし、「私は掛け算には$という記号を使う」とはできない。

ところが「人」についてはどうだろう?
「○○さん、提案書の原案を今日中にお願いします。」
上司にこう言われてあなたはどう思うだろうか? 「いきなり急だな」と思う人もいれば、「今日中なら楽勝」と思う人もいる。「アバウトな指示だな」と思う人もいれば、「うちの上司はいちいち細かいことを言わないからいい」と思う人もいる。これが「人」というものだ。

相手が変われば反応も変わる。上司として部下に対する指示の仕方には「普遍的な正解」はない。しかし、よりよい方法はあるはずだ。その「最適解」を発見し、実行できる、これこそが「ヒューマンスキル」だろう。

■ 「人」に関するスキルとは

では、このように多様性のある相手に対して「最適解」を実行する「ヒューマンスキル」を身につけ、高めるにはどうすればよいのか?それは、一言、「体験から得たさまざまな気づきを元に自分を変容させていく」ことである。
気づきとは、日常生活の中で相手の反応に気づくことである。「○○さんはこういうと喜んでくれる」、「ああ、○○さんはこういう言い方をするとあまりいい感情は持たないのだな」。感受性と想像力を周囲に振り向けることにより、こうしたあなたの気づきは促進される。
さて、ヒューマンスキルにはもう一つの別の側面がある。それは、

『体系的に学ばなくてもすでにできる人が少なからずいる』

ということ。いわゆる、「あの人とは一緒に仕事をして心地よい」「あの人の頼み事はつい聞いてしまう」と思われるような人だ。あなたの周りにもいらっしゃるのではないだろうか?
ヒューマンスキルは、これまでの体験や経験の中で培われるものであり、日々の気づきや自己の変容の磨きによって高まっていくものといえるだろう。

■ ヒューマンスキルの高め方

しかし、経験は環境や仕事の内容によって当然個人差がでる。
人との交渉がほとんどない組織にいたならば交渉力は高まりにくいだろう。また、日々交渉を繰り返していても単に仕事としてこなすだけで「気づき」がなければ成長は望めない。そこで登場するのが「研修」である。ヒューマン研修は、「経験」「気づき」「自己変容」のサイクルを効果的・効率的に学び習得できるようにプログラムされている。もちろん、ただ漫然と聞いているだけでは当然身につくはずはない。

私たち「ファシリテーター」は、各参加者がより多くの気づきを得られるように、それぞれの方にあわせて支援する。それがファシリテーターの役割である。そこに研修の価値があり醍醐味がある。

■ これからの人財育成

ここでお話しした内容は、ヒューマンスキルに限ったものでないことにはすでにお気づきだろう。IT系での応用力・実践力を身につける場合も同様である。AIモデル作成ツールのスキルがあっても、自社の業務に当てはめてそれらを活用するためにはやはり「経験」「気づき」「自己変容」のサイクルが必要である。
これからの人財育成に求められているものは、単なる知識ではない。例えば「英語ができる人が欲しい」というのは、言うならば、英語が話せるだけの人ではなく、海外で販路を拡大するために英語(現地語)でビジネス交渉できる人が欲しい、ということになる。

実際に仕事で役に立つスキルを身につけるためには、ヒューマンスキルの育成方法が参考になる。「経験」「気づき」「自己変容」のサイクルをぜひ進めていただきたい。

川野 洋 (株式会社アイ・ラーニング デジタルトランスフォーメーション事業部 人財育成コンサルタント)
IBMで中小型システムのシステムエンジニアを担当。その後ビジネスパートナー様向けの研修に携わり、人財育成の世界に。現在はDX関連研修、ヒューマン研修、人財育成関連研修などの企画実施を担当。iCD協会認証iCDアドバイザー、JDLA Deep Learning for GENERAL。趣味はシュノーケリングとスキー。ソーシャルスタイルはドライバー。